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馬鹿にされて泣いていたコンビニ店員が“アイドル”になれた理由

スタジオパーソル

スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。今回は、コンビニのアルバイトを続けるうちにアイドルになれた記事をご紹介します。

大学生のとき、3年半ほどコンビニでアルバイトをしていた鈴蘭 さきさん。最初な不慣れなことも多く、お客さまに怒鳴られて「コンビニ店員の仕事はだれにでもできると小馬鹿にされる」と感じていました。ところが、日々お客さまを観察してはたらくうちに“アイドル”になれたのです。そんなエピソードをnoteに投稿しました。

※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」から抜粋したものです。

「やっぱり私には無理かも」と涙したコンビニバイト

「コンビニのアルバイト」と聞いて、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか?

日本全国にたくさんの店舗を構えるコンビニは、あらゆる人とって身近な存在でしょう。当然、アルバイトの中でもコンビニのアルバイトはかなりメジャーです。

大学生のとき、3年半ほどコンビニでアルバイトをしていた鈴蘭 さきさんは「コンビニ店員って馬鹿にされがち」だと語ります。

コンビニ店員って、なぜかとても見下される傾向があります。「所詮コンビニでしか働けない奴」と思われているのだと思います。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

しかし、当時18歳でほとんど接客経験がない鈴蘭さんにとって、コンビニのアルバイトは簡単ではありませんでした。最初は「やっぱり私には無理かも」と泣きそうになることもあったそうです。特に苦労したのが、マルチタスクとたばこの販売でした。

レジ打ちの他にも検品、品出し、公共料金の支払い、宅急便の受付、メルカリの受付など、コンビニはマルチにやるべきことを覚えなければなりません。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

鈴蘭さんはもともとマルチタスクが苦手とのこと。マルチタスクに加えて、種類が多いたばこの銘柄も覚えなければなりません。

煙草の銘柄が分からなくて、男性のお客様に酷い言葉を投げかけられた時もありました。外国人のお客様の言葉が聞き取れなくて何度も聞き返していたら、「耳おかしい!」と馬鹿にして怒鳴られたこともありました。その時は涙が溢れてくるのを他の従業員にバレないように、必死に顔を背けて隠していたのを覚えています。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

こうした「苦手」を乗り越えるために、複数の業務を覚えるようと必死にメモを取ったり、お客さまごとに買うたばこを覚えたりして、少しずつ対応力を上げていったそうです。

さらに

「この人はレシート要らない人」「この人はお弁当を温める人」

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

というふうに、お客さまに合わせた接客ができるように努力した結果、鈴蘭さんは思わぬポジションになりました。

常連のおじいちゃんのアイドルに

そのポジションとは「おじいちゃんたちのアイドル」です。鈴蘭さんがはたらいていたコンビニは地元密着型で、常連のお客さまが決まった時間に決まったものを買っていくケースが多く、高齢の方もよく訪れました。

印象に残っているおじいちゃんは2人いるそうで、1人は「中京のおじいちゃん」です。土曜の午後にやってきて、中京とホットコーヒーを買っていきます。

そして、鈴蘭さんにたくさん話しかけてきました。

「アンタ好きな番号なんや」「2番が好きです」と答えると、「2番かぁ〜、2番は当たらんぞ〜」と言いながら、競馬に賭ける番号を決めたりします。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

中京のおじいちゃんは鈴蘭さんと話すのが楽しかったのでしょう。

そして、もう1人は「車椅子のおじいちゃん」です。車椅子のおじいちゃんが買うのは、揚げ物コーナーのコロッケとメンチカツ、そしてコーラでした。そのコンビニではコーラが棚の高い部分にあり、車椅子に乗った状態では手が届きません。鈴蘭さんは、毎回おじいちゃんのコーラを取りに行きました。

車椅子のおじいちゃんは会計が終わってもすぐに帰らず、おしゃべりをしたがって「こんな風に歩けんくなってまって、もう生きていたくない」と繰り返したそうです。

鈴蘭さんはその言葉を聞いて「なんとかしてこのおじいちゃんの気持ちを変えてあげられないかな」と感じたとのこと。

というのも、高校生で鬱になり「もうこれ以上生きていたくない」と感じた経験があったからです。

昔の自分と重ね合わせて共感した鈴蘭さんは、「私、土曜日のこの時間はいつもいるので!またコロッケ買いに来てくださいよ!いつでも待ってます」と微笑みました。

家に帰ってからも、車椅子のおじいちゃんのことを思い返しながら

そんな言葉をかけたって、私はおじいちゃんの足を治してあげることはできません。おじいちゃんの絶望を全て取り払ってあげることもできません。自分ってなんて無力なんだろうと、寂しくなりました。私はただの女の子で、私はただのコンビニ店員で…。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

と自分の無力さを痛感していたそうです。

その1週間後、鈴蘭さんが喜びを感じる出来事が起こりました。

どんな仕事にもスポットライトは当たる

1週間後に、また車椅子のおじいちゃんがやってきたのです。鈴蘭さんが「この時間はいつもいる」と伝えた土曜日の昼に訪れました。

また高い場所にあるコーラを取ってあげ、コロッケとメンチカツを入れた袋を車椅子の持ち手にかけました。

「まぁ自分で何もできんくなってまったでなぁ。情けないわ」と零すおじいちゃん。

「でも、またここまで来てくれたじゃないですか!ここまで来るの、大変だったでしょうに!」

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

それから10分ほど会話をして、車椅子のおじいちゃんは「じゃ、ありがとう。また来るわ」と言い残して帰っていったそうです。鈴蘭さんはその言葉がとてもうれしく、初めてコンビニでアルバイトしていることを誇りに感じた、と語ります。

私は所詮ただの女子大生で、ただのコンビニ店員で、ただのアルバイトで。そんな私が声をかけたことで、車椅子のおじいちゃんの明日への意味をほんの少しだけ作ってあげられたのではないかな、と思いました。

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

鈴蘭さんがおじいちゃんに「いつでも待ってます」と語りかけなければ、おじいちゃんの行動は生まれなかったでしょう。

鈴蘭さんはコンビニ店員としてはたらいた3年半を

いろんなお客様に愛されて、私にもお客様への愛が生まれて、自分も社会の歯車の一部として誰かを支えられているような気分

「コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃」より

になれた時間だった、と言います。

鈴蘭さんが「地味だ」と思われやすいコンビニ店員でありながら、おじいちゃんたちのアイドルになれたように、どんな仕事もはたらき方次第でスポットライトが当たります。そんな意識を持ってはたらけば、どんな仕事であっても社会や人を支えている実感が得やすくなって、誇りが生まれるかもしれません。

【ご紹介した記事】コンビニバイトで地元のおじいちゃんのアイドルをしていたあの頃【プロフィール】鈴蘭 さきヒリヒリ痛く生きる少女。 本の感想、映画の感想、美術館のレポ。親とのこと、高校時代のこと、かわいいのこと、女の子のこと。こんなにヒリヒリしながら生きている女の子、私だけだよ?マガジンに『躁鬱ニート日記』シリーズと『少女の感情置き場』あります。Twitterが本現場。

(文:秋カヲリ)

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