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第2章を踏み出したヤユヨ、『真面目にぶっ跳べファンキー!』ツアーファイナルで投げかけた「私が殻を破っているところを見ていて」

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ヤユヨ 撮影=ニイミココロ

真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024 2024.6.12(Fri) 下北沢SHELTER

第2章をスタートさせたヤユヨが最新ミニアルバム『BREAK』をひっさげ、全国10か所を回った『真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024』が6月21日(金)、東京・下北沢のライブハウス、SHELTERにてツアーファイナルを迎えた。

新体制初の作品となる『BREAK』を作る時、彼女達が掲げたテーマは、自分達の殻を破って、成長することだった。当然、そのリリースツアーも同じテーマを踏襲していたに違いない。この日、新しいヤユヨを見せてやろうという彼女達の意気込みは、はな(Ba.Cho)が奏でるファンキーなリフにぺっぺ(Gt.Cho)とサポートメンバーの石川ミナ子(Dr)が音を重ね、ジャムセッション風に始まった1曲目から早くも伝わってきた。

彼女達が1曲目に選んだのは、『BREAK』の5曲目に収録されている「Cosmic beatle」。はなが初めて作詞・作曲を手掛けたオルタナ・ファンクナンバーだ。観客の体をゆらゆらと揺らすグルービーな演奏がハンドマイクで歌うリコ(Vo.Gt)のリラックスした歌声とともに、これまでとは一味違うヤユヨの魅力をいきなり見せつける。

「楽しむ準備はできてる!?」

リコが声を上げ、そこから「うるさい!」「星に願いを」「メアリーちゃん」と繋げていく。お馴染みの曲だけあって、手拍子を含め、観客の反応は序盤から上々だ。

「いいね! 東京!」とリコが破顔一笑する。

観客の気持ちを煽るようにドラムのキックでテンポを上げていったロックンロールの「星に願いを」では、<眠れない私を抱きしめてくれる>という歌詞を、<眠れない君を抱きしめに来ました!>と変えたリコのアドリブに観客が歓声を上げた。「うるさい!」でも冒頭にサビを持ってきてライブならではのアレンジで観客の手拍子を巧みに誘っていたが、ライブを重ねながら、彼女達はそんなギミックも自家薬籠中の物としてきたようだ。

そして、歌謡メロディが印象的な「メアリーちゃん」では、ぐっとテンポを落とした演奏とともにリコがさらに表現力を増したアンニュイな歌声を披露して、観客を圧倒してみせる。

「東京、最高じゃん! 大阪のバンド、ヤユヨです。やっと東京のみんなに会えてうれしいです。今までの10か所の中で一番ファンキーな1日にしたいなと思ってます。今日もいろいろなところで音楽が鳴っていると思うんですけど、このライブを選んでくれたあなたが一番カッコ良い。私達の音楽に溺れてもらおうと思ってるのでよろしくお願いします!」(リコ)

改めて、この日の意気込みを語ってから、ぺっぺがギターに加え、キーボードも演奏しながら、「POOL」「アイラブ」と2曲続けてバラードを披露する。一口にバラードと言っても、リコのラップも含め、アーバンな魅力もある前者と切なさとポップな味わいが入り混じる後者という曲調の違いも聴きどころだ。

そして、「みんなで歌いたい。大きな声で、せーの!」というリコの合図とともに観客がシンガロングの声を上げ、フロアがぐっと盛り上がった「ユー!」から繋げたのは、『BREAK』収録の「チョコミンツ」。曲の主人公になりきったリコの強がってみせるような歌声がぐっと胸に迫る、このファンキーなポップナンバーは、観客が手拍子で応えたオチサビも含め、今後、ライブのハイライトを飾る人気曲になっていきそうだ。観客を驚かせたリコのキーボード・ソロに加え、リコがキーボードを弾いている間、ステージの真ん中でギターをかき鳴らすぺっぺの姿も合わせ、ライブの見どころになるに違いない。

曲間を空けずにドラムの連打からなだれこんだ「ピンク」は、リコがトラメガで歌うショートチューン。「東京、踊ろう!」と声を上げたリコに応え、頭打ちのドラムに合わせ、飛び跳ねる観客達を見ながら、「楽しすぎます!」とリコは再び破顔一笑。

ヤユヨの第2章を始めるため、去年、大阪から移り住み、「住処としている東京でライブができることが感慨深い」と語ったリコに促され、上京してから1年、東京の暮らしを楽しんでいることを3人それぞれに語り始める。バンドを組む以前から友達だった彼女達らしい、ざっくばらんな会話も楽しませてから披露したのは、じっくりと聴かせるミッドテンポ・ナンバー「リプレイ」。リコ曰く「『BREAK』の全6曲中唯一の恋愛の曲」なのだそう。

「それもヤユヨには珍しい。一緒に過ごしている時間の幸せを噛みしめながら歌いたいと思います」(リコ)

そんなふうに始まった後半戦は、見どころの連続だった。

ディレイを掛け、音色を揺らしたギターリフが印象的だった「このままじゃ」は、切なくて、美しいバラードだが、ファルセットを交えたリコの歌もさることながら、歌の裏でぺっぺとはなが繰り広げるダイナミックな演奏も聴きどころ。そこに「まだまだ愛が足りないからこの歌を歌います!」とリコが言いながら繋げた「愛をつかまえて」は、ぺっぺが刻むキーボードの音が跳ねるポップナンバー。バラードと思わせ、実は熱度の高い「このままじゃ」の演奏に圧倒され、じっと聴きいっていた観客がまた手を振り始める。

この「愛をつかまえて」の見どころは何と言っても、ブレイクから一気に盛り上げるラスサビなのだが、この日、リコは「私の気持ち、わかるでしょ? バンドを組んで5年。出会ってから8年、9年経ってるんだから」と自分が再び歌い始めるタイミングに3人が合わせられるのか勝負を挑む。

「成功しなかったら、帰れってブーイングして。成功したら、みんな一緒に歌って!」(リコ)

果たして、歌い始めると思わせ、なかなか歌い出さないリコのフェイントに惑わされずに3人はリコの歌にしっかりと息を合わせ、ラスサビになだれこむ。

「よくできました!」

リコが快哉を叫び、観客が大きな声で歌い始める。そのまま観客のシンガロングとともに迎えたエンディングは間違いなく、この日のハイライトだったと言ってもいい。「愛をつかまえて」がいつしか、これだけ大きなシンガロングを起こせるライブ・アンセムに育っていたことに胸が熱くなった。

そして――。

「私がこの曲を歌うことで、あなたの人生が変わることはないかもしれない。でも、いま思っている、がんばろうってやる気の火を絶やさないように熱を贈ることはできるんじゃないか。消えかかっている火をもう一回復活させることはできるんじゃないか。背中を押すことぐらいはできるんじゃないか。私が殻を破っているところを見ていてほしい。一人ひとりに届くように歌います」とリコが語ってから演奏した「Anthem」は、ヤユヨ初のいわゆる応援歌。がんばれって応援できる曲を書きたいとずっと思いながら、がんばった経験がそんなにない自分が歌ったところで誰の心も動かせないと、なかなか書けずにいた応援歌を、ついに書けた理由についてもこの日、リコは語ったのだが、以下に引用するくだりが重要だ。なぜなら、『BREAK』を作る時に掲げた自分達の殻を破るというテーマが実は切実なものだったことがわかるからだ。

「もっともっと自分達の音楽を知ってもらうには、自分自身が変わらなければ、がんばらなければって思うんだけど、このままでよくない? という気持ちもあって、その狭間でうわーってなりながら、でも、いまがんばらないと、何も変わらない。踏み出さないと、掴めるものも掴めない。いま、がんばれを書く時だと思った」(リコ)

なるほど。ヤユヨの第2章は、そんなに簡単に始まったわけではなさそうだ。そう考えると、いま、目の前で演奏することを心底楽しんでいるヤユヨの姿がとても尊いものに見え始める。

ステージの4人はアップテンポのロックンロール「ここいちばんの恋」をたたみかける。ラストスパートを掛けたことは明らかだ。「一番でかい声を聞かせてもらえますか!?」というリコの言葉とぺっぺが奏でるリフに観客が声を上げる。演奏したのは、もちろんそこにいる全員が待っていた「さよなら前夜」。観客のシンガロングが再び響き渡り、はなとぺっぺがソロを応酬する。そして、フロアにマイクを向け、ラスサビを観客に歌わせたリコが最後、ハーモニカソロをキメ、観客の興奮が最高潮に達する中、4人は「YOUTH OF EDGE」で本編を締めくくったが、もちろん、そこで終わりじゃない。

アンコールでは「ツアーが終わるってことで、今日だけ限定でやる曲」(リコ)と久しぶりに演奏するという「あばよ、」を披露して、観客にうれしい悲鳴を上げさせると、毎年恒例の自主企画ライブ「ヤユヨの日」を、今年は『やゆヨ!vol.4 〜西から東へお願いしまぁぁぁあす!〜』と題して東京に加え、大阪でも開催することを発表して、もう一度、観客にうれしい悲鳴を上げさせる。

そして、「みんなの生活にも自分を変えたいという瞬間があったり、いつも通りの日常を過ごしたいという瞬間があったりすると思うんですけど、どちらの場合にも似合う曲をもっともっと作っていきたいし、あなたのそばにいたいと思っていますのでこれからもよろしくお願いします」とリコが語ってから、演奏したラストナンバーは、『BREAK』の1曲目に収録した「Stand By Me」。リコが言った「まだまだあなたのそばにいたいという気持ちを込めて」という意味では、ツアーの大団円にこれほどふさわしい曲はなかったと思うが、『BREAK』とそのリリースツアーのテーマを最後の最後にもう一度、アピールするという意味でも、胸を焦がすメロディを含め、ヤユヨなりに王道のポップスにアプローチしたこの曲はぴったりだったはずだ。もっともっと自分達の音楽を知ってもらいたいという思いが、これまでなかったスケールに結実したのだから。

ぺっペがアウトロで鳴らしたギターの轟音の中に浮かび上がったのは、一皮剥け、さらにひと回り大きくなったヤユヨの姿だった。

取材・文=山口智男 撮影=オフィシャル提供(ニイミココロ )

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