不登校の長女が教えてくれたこと 精神科医さわさん 反響の著書「子どもが本当に思っていること」の背景
三重県四日市市出身の「精神科医さわ」(本名・河合佐和)さん(41)の著書「子どもが本当に思っていること」(日本実業出版社)が反響を呼んでいる。執筆の背景には、2児のシングルマザーとして、発達障害があり不登校の長女と向き合う中で得た気づきがあったという。経験に基づく生きた言葉が、診察室の外にいる子育てに悩む人々にも届いている。
生い立ち・育児経験を赤裸々に語る
「生きづらさを抱える人を救いたい」と、発信を続けてきたYouTubeチャンネル「精神科医さわの幸せの処方箋」が、6月5日に登録者数10万人を超えた。ほかにもインスタグラムやX(旧ツイッター)、音声プラットフォームのVoicyなど各種SNSを使い分け、多くの人に人生や子育てを楽しむヒントを届けようと奮闘する。昨春出版し、5万部超のベストセラーになった著書では、診察室で聞き取った子どもの声のほか、自身の生い立ち、育児経験までを包み隠さずに語っている。
開業医の父と教育熱心な薬剤師の母のもとで将来を期待されて育ったさわさん。「がっかりされたくない」一心で、母の顔色をうかがう半生だったという。「今思えば親子の共依存でした。自分の人生を生きていなかった」。医師になった後も、何かにつけて親の評価を気にしていた。
【暁小学校出身のさわさん、6年間毎日書いた生活日記は執筆活動の糧に=さわさん提供】
発達障害の診断を受けた長女は、小学1年から登校しぶりが始まり、3年からは完全に不登校に。両親の「母親なら仕事を休んででも学校に連れていくべき」という言葉に追い詰められたが、「娘が笑って生きていてくれるだけでいい」と気付いたとき、生まれてきてくれた時の喜びが蘇った。長女に真正面から向き合った結果、心から「親に気を遣わず、自分らしくいてほしい」と願い、「不登校=問題」という常識を手放すこともできた。
誰もが自分の人生を生きられるように
4年前、長女の不登校を機に両親の反対を押し切って名古屋で開業。経営も安定し、自分で人生のかじ取りができている実感がある。著書の読者からは「救われた」「お守りとして繰り返し読みたい」という声が届いている。博報堂が主催した昨年度の「読書推せん文コンクール」で島根県の中学1年生が「喧嘩することが増えた母に勧めたい」と書いて入選するなど、「子どもの心の声がわかる本」として、若い世代にも読まれている。
このほど、四日市市内の幼稚園・保育園と同市立小中学校及び教育委員会、三重県立高校や特別支援学校、図書館など全226か所に寄贈することが決まった。さわさんは、「一層たくさんの親子をサポートしていきたい」と熱心に語る。今後も診療や講演の合間に執筆を続けていくつもりだ。
【診察室のさわさん=さわさん提供】
元々、愛情深いさわさんの両親は今、孫の面倒をよく見てくれる。出版直前、内容を知って涙を流した母だが、今は「これ、私が毒親っていう本なの」と朗らかに友人たちに配っているという。さわさんは母の愛情に感謝しながら、専門家として、「親なら誰しも毒親の要素を持っていると思う。でも親の夢や期待ではなく、子ども自身が主体的に生きられるよう、見守り支えてあげて」と話している。
精神科医さわさんのSNSや最新情報はこちら(https://linktr.ee/shiogamakokoro)。