『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年!その歴史を振り返る!庵野秀明監督による新作の製作も発表
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『宇宙戦艦ヤマト』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
ヤマトの新作発表を受けて、歴史をおさらい!
10月6日、東京で『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年の記念イベントが開かれ、庵野秀明監督によって『宇宙戦艦ヤマト』の新作が作られるということが発表されました。『宇宙戦艦ヤマト』の放送開始は1974年の10月6日。そこから1977年の総集編映画、複数の続編を経て83年の『完結編』で一旦シリーズは終了。その後、2009年に『復活編』という形でその後が描かれた作品が登場します。ここまではいわば“旧シリーズ”です。そして2013年からは『宇宙戦艦ヤマト2199』からリメイクのシリーズが始まり、現在も『宇宙戦艦ヤマト3199』というシリーズが展開中です。
最初の『宇宙戦艦ヤマト』のストーリーを全く知らない人のためにおさらいをしましょう。地球はガミラスという異星人に攻められ、人が住めない状態になっています。遊星爆弾という放射能を帯びた大型の爆弾をどんどん落とされて海もなくなり、地球全体が赤い焼け野原で、人類は地下で暮らさざるを得なくなっています。宇宙で戦争をするわけですが、科学力が全然違うので、地球の艦船はガミラスの艦船には全然勝てないんです。この圧倒的ビハインド感は、ある種の悲壮美も感じさせてインパクトがありました。
そんな絶体絶命の地球に、遥か彼方の星イスカンダルから救いの手が差し伸べられます。光の速度を超える「ワープ」が可能なエンジンの設計図を渡すからこれを作って、イスカンダルまで来なさい、そうしたら放射能除去装置「コスモクリーナーD」をあげますよというメッセージが届けられるんです。
こうしてヤマトに搭乗した選抜メンバーは、人類滅亡までの1年間のうちに、往復29万6000光年あるイスカンダルまで行って帰ってくる旅に出ることになります。それは前人未到の冒険航海です。
『ヤマト』はメカニックを中心にしたリアリティがある世界観に初めて本格的に踏み込んだ作品だったんですよね。60年代からはいろんなSFアニメが作られていましたけれど、どちらかというと一話ごとの話の面白さが中心で、そのおもしろさとしてSF的なアイデアが使われている感じでした。
それが『ヤマト』の場合は、SF的アイデアもあるんですが、むしろ「画面に映ってないところにも世界があること」を感じさせるだけの美術設定があり、そういう設定の厚みが「『ヤマト』の世界」というものにリアリティを与えていたんです。
また映っているメカもちゃんと中身に仕組みがあって動いていることが表されています。この辺りはアニメ・特撮研究家の氷川竜介さんがだいぶ前から説明していますが、『ヤマト』は軍艦が撃たれて爆発するまでに少し間があるんですよね。60年代のアニメは、そういうとき、ビームなりミサイルが当たったら、その瞬間「ボカン」と爆発して終わりでした。でも『ヤマト』はちょっと間がある。それは当たった後に何か小さな爆発が起きて、エンジンかなにかに火がついてそれから爆発する……。間をとることで、そういうプロセスや内部構造を実感させる描写になっていて、そこにも実在感がありました。
また、これは庵野監督がイベントでも言っていましたが、『ヤマト』の必殺兵器・波動砲は打つ段取りに2分10秒かかるそうです。エネルギーを充填してから照準を合わせて、波動砲の光から目を守るために皆で遮光グラスを装着する。この段取りに2分10秒もかかるのわけですが、巨大な力を持つ兵器を作動させるにはそれぐらいプロセスがいるわけです。そういうもっともらしさを積み重ねていって、もしかしたらありうるかもしれない世界を作ったのが『ヤマト』で、それが画期的だったんですよね。こういう段取りそのもののおもしろさについては、エヴァンゲリオンのいろんな段取りのシーンにも反映されています。
もう一つ、最初のシリーズにしかなかった魅力というのがあります。それは未知の世界を進む冒険航海という要素です。『ヤマト』シリーズにはどうしても戦争物というイメージがありますが、最初のシリーズはそれだけではなく、はるか遠くの宇宙へただ一隻だけで行って、見たこともないような風景の中でいろんなピンチをくぐり抜けながら進んでいくというところにもおもしさがあり、それがロマンでした。
ちなみにドラマで印象的なのは第10話の「さらば太陽系!! 銀河より愛をこめて!!」。ヤマトがついに太陽系の外に出ることになり、通信が不可能になる前に、クルーが家族と最後のお別れをするというエピソードです。ところが家族を亡くしている主人公の古代進と艦長の沖田十三は、地球に通信をする相手がいない。そんなふたりが初めて心の触れ合いをする、ぐっと来るエピソードでした。
50年前のアニメなので古いは古いのですが、原石のようなきらめきがある作品ですので、ぜひご覧いただければと思います。