「okome stand HACHI HACHI+」で、お米をもっと好きになる。
近年、日本人の米離れが進んでいるんだそう。そんな中、お米の価値を改めて伝えようと取り組むお米屋さんがあります。今年6月、新潟市西蒲区の国道460号沿いにオープンした「okome stand HACHI HACHI+(お米スタンド はちはちプラス)」。70年以上続く「おかじま米店」がはじめた新店舗で、おにぎりをメインに、その場でお米が味わえるカフェ併設のお米屋さんです。カフェを併設した経緯やお米に対する思いについて、取締役兼店長の岡島さんにお話を聞いてきました。
株式会社おかじま
岡島 瑞恵 Mizue Okajima
新潟市西蒲区生まれ。高校卒業後、県外の大学に進学。卒業後は新潟へ戻り就職。25歳のときに家業である「株式会社おかじま」に入社。今年6月、お米の販売店舗を移転し、「okome stand HACHI HACHI +」をオープン。取締役兼店長を務める。
とにかく「ごはん」を食べてほしい。お米屋さんがはじめた新店舗。
――開放感があっておしゃれな店内ですね〜! こちらはお米屋さんなんですよね。どうしてこちらでお店をはじめることに?
岡島さん:今までも個人のお客様向けに販売するための店舗はあったんですけど、古くなってきたから移転して新しくすることにしたんです。この敷地内にうちの精米工場があって、車を停めるスペースもあったので、この場所ではじめることにしました。
――それまでの店舗ではお米の販売しかしていなかったわけですよね。カフェを併設することにされたのはどうしてですか?
岡島さん:昔、米は米屋でしか売っていませんでしたけど、今はスーパーとかドラッグストアとか、どこでも買えるようなりましたよね。それでお店を新しくするときに、ただお米を買えるだけじゃよくないということになりまして。せっかくならお米を食べていただける場所を作って「美味しいな」って思っていただければ、お米を買って帰ってもらえるかなって思いました。
――お米の美味しさを知ってもらうには、その場で食べてもらうのがいちばん早いですもんね。
岡島さん:それに立地的にインターのそばっていうこともあって、お米の販売兼飲食ができるスペースがあれば、県外のお客様からも立ち寄っていただけるのかなと思って、こういうかたちになりました。
――おにぎりをメインにされたのは、お米を味わうのにいちばん手軽だから?
岡島さん:おにぎりだったらテイクアウトすることも、店内で食べていただくこともできると思って。ただ「おにぎり屋さん」って言われることもあって、それも間違いではないんですけど、なんかちょっと違うんですよね。
――といいますと?
岡島さん:ベースにある思いとしては、とにかく「ごはん」を食べてほしいんです。「ごはんを使った食事」のとっかかりとして、おにぎりからスタートしていて。それでごはんのお供とかお米を炊く道具とか、ごはんにまつわるものをいろいろ販売しているんです。今後はおにぎりだけじゃなくて、他のごはんもののメニューも提供していこうと思っています。
お米の資格を持つプロが選ぶ、こだわりのお米を味わう。
――お店で販売しているものは、やっぱり基本的に県内のお米なんでしょうか。
岡島さん:そうですね。昔からたくさんの農家さんとお付き合いをしている中で、直接仕入れて販売させていただいています。
――お米屋さんだからこそ買える美味しいお米が揃っているわけですね。
岡島さん:コシヒカリでいうと岩船産とか魚沼産とかは、スーパーに置いていないことが多いんですよ。だからお米にこだわりのある方はうちまで来て買ってくださいますし、そういう方たちがいるから簡単にお店を辞められないですよね。
――お店で提供しているメニューのことも教えてください。おにぎりにはどんなお米を使っているんですか?
岡島さん:使うお米は定期的に変えていて、今日は「つきあかり」の新米です。これから徐々にいろんな品種の新米が出てくるので、出てきたものからおにぎりに使おうかなと思っています。あと父は「米・食味鑑定士」、主人は「5つ星お米マイスター」「ごはんマイスター」っていう資格を持っているので、ふたりが選んだおにぎり用のブレンド米を使うこともあります。
――お米屋さんだからお米のプロがいらっしゃるわけですね。いろいろな具材の種類がある中で、どのおにぎりがいちばん人気なんでしょう。
岡島さん:いちばん人気は「鮭トロ」。店内で焼いて味付けした鮭を使っています。具材はシンプルで定番なんだけど、とにかく「美味しい」と思っていただけるものを選んでいますね。塩や海苔にもこだわりがあって、塩は佐渡の天然塩、海苔は有明産の最高級のものなんです。
――気になっていたんですけど、プレートメニューに付いている汁物がお味噌汁ではないようですが……。
岡島さん:これは「けんチャー汁」です。おにぎり屋さんのお汁ってだいたい豚汁なんですよね。それなら違うのがいいよねってことになって、けんちん汁を出すことにしたんですよ。
――なるほど。けんちん汁の「けん」でしたか。
岡島さん:でもただのけんちん汁だと、ちょっとお家感が強くって(笑)。それで、おにぎりにも使っている「辣チャー」っていう、2種類のチャーシューを辣油で味付けした具材をトッピングしたんです。そしたら好評で、美味しいっていう声をいただいています。
「ずっと新潟にいたい」そう思う人が少しでも増えると嬉しい。
――岡島さんは「おかじま米店」の何代目になるんでしょう?
岡島さん:3代目です。私はひとりっ子なので、12歳のときに父から「継ぐのか、継がないのか」って決断させられたのをすごく覚えています。
――12歳で家業を継ぐか決めるって、かなり早いですね。
岡島さん:「え〜!」って感じでしたけど、そうせざるを得ないんだろうなって思って。私、高校まで書道をやっていて、本当は県外の書道を学べる大学に行きたかったんです。でも進学しても家を継がなきゃいけないわけだから、そのときはすごく恨んだというか。
――やりたいことがあっても、その道に進めないと。
岡島さん:親からは「自分のやりたいことをやりに県外に行っていい」と言われたんですよ。でも「のちのち家は継いでほしい」と。今思えば、親の言うことも分かるんです。でもその頃の自分は、将来を決められている感じがしてすごく嫌だったんですよね。
――結局のところ、岡島さんはどうされたんですか?
岡島さん:結局、県外の大学に行って経営を学んだんです。それから地元の企業に勤めた後、25歳ぐらいから家の仕事を手伝うようになって、結婚して、子育てをしながら米屋の仕事をしてきました。大変なこともあるんですけど、楽しいというか、自分の好きなことを生かせている部分もあるんです。
――それは例えばどんなところで?
岡島さん:「んめぇ米」という商品のロゴは私が書いたんですよ。あとはデザインとかも好きなので、店のロゴはデザイナーさんに作っていただいたんですけど、パッケージは自分で作ったんです。そういうところで、これまでやってきたことをちょっと生かせているのかなと思います。
――お店として、今後の目標はありますか?
岡島さん:イベントでもおにぎりの販売ができればいいなと思っています。あとはごはんを提供するだけじゃなくて、ごはんの炊き方教室とか、精米工場の見学とか、よりお米に関心を持っていただけるようなイベントを考えていきたいですね。
――そういうふうに改めてお米の魅力を知る機会ができると、新潟の価値を再認識するきっかけにもなりそうですよね。
岡島さん:私も県外とか都会に出たいと思っていたことがあったけど、やっぱり新潟っていいところだなって思うし、それは新潟にいたからこそ思えることであって。今になって、私はここにいて良かったんだなって思います。新潟から出た人も「地元もいいところだよな」って、また戻ってきてくれたらいいなと思うし、「ずっとここにいたいな」って思う人がもうちょっと増えたらいいですね。
okome stand HACHI HACHI+
新潟市西蒲区漆山8743-6
TEL:0256-72-1313