“チームの心臓”がジュビロ磐田の強みに。4人が繰り広げるボランチのスタメン争いのゆくえ
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田はここまでリーグ戦9試合を戦い、5勝2分2敗の勝ち点17で、J2の3位に付けている。一方でルヴァン杯は1回戦でFC大阪、2回戦は静岡ダービーで清水エスパルスを破って3回戦に勝ち進んでおり、5月21日にはJ1のガンバ大阪をヤマハスタジアムで迎え撃つ予定だ。
ジョン・ハッチンソン監督が掲げる“アタッキングフットボール”は道半ばながら、ここにきて磐田の強みになってきているのが各ポジションにおける競争力の高さだ。厳しいアウェーゲームやルヴァン杯との過密日程を乗り越える中で、公式戦1ゴール3アシストと存在感を高める川﨑一輝や“静岡ダービー”で奮闘した川合徳孟など、開幕時より明らかに重要性を高めている選手たちが出てきている。
ハッチンソン監督はそうした状況に目を細めながら「お互いに競争しているのが伝わってきている。誰がスタメンで出ようと、このメンバーの組み合わせで勝ち点が取れると思っている。もっと僕を悩ませてほしい」と語る。
数日前に複数の体調不良者が出て、ロアッソ熊本戦の翌日に予定された練習試合がキャンセルに。しかし、全公開された4月16日の練習ではコンディションが心配された選手たちも元気な姿を見せて、フルメニューをこなしていた。
先週は別メニュー調整だったFW渡邉りょうも全体練習に復帰しており、ミニゲームなどで精力的にアピールしていた。第3節の長崎戦で負傷した右サイドバックの川口尚紀も静岡ダービーで45分間プレー。週末の熊本戦はベンチ外だったが、水曜日のトレーニングはフルにこなしており、植村洋斗、さらに左右のポリヴァレントである為田大貴、センターバックやウイングもこなす西久保駿介とのポジション争いは熾烈になってきている。
ボランチの競争激化
とりわけ競争が激化しているのがボランチだ。開幕戦から中村駿と上原力也が固定的にスタメン起用されてきたが、金子大毅やレオ・ゴメスがハッチンソン監督の評価と信頼を高めている。中村が戦術リーダー的な存在ではあるが、4人の誰がスタメンで出ても、高いスタンダードで攻守を支えることが可能だ。熊本戦では体調不良の上原に代わり、金子が中村とボランチのコンビを組んだが、同点となる加入初ゴールを決めるなど、獅子奮迅の働きを見せた。
「熊本戦が初めてのリーグ戦のスタメンになりましたけど、これまでも途中から出て素晴らしい働きをしてますし、この前も良いパフォーマンスをしていました。今週も出るかはまた判断するところですけど、そういった姿勢、取り組む姿勢を変えずにチームの基準を引き上げて行ってほしい」
ハッチンソン監督がそう語るように、フィジカル的に厳しい戦いが予想されるブラウブリッツ秋田とのアウェーゲームで、引き続きスタメン起用される可能性は十分にあるだろう。
金子は「自分のゴールよりも、やっぱり勝つ方が評価としては得られると思うし、そういった意味で、引き分けというのは残念です」と悔しがるが、これまでルヴァン杯のFC大阪戦、清水戦で組んだレオ・ゴメスとタイプの違う中村とのコンビでは、もっとアグレッシブに攻撃参加してゴールに関わるイメージを高めたようだ。
一方で体調不良から回復した上原も、全体のメニューに加えて、居残り練習で入念に体を動かすなど、金子の活躍に刺激を受けている様子だ。
ハッチンソン監督のアタッキングフットボールをビルドアップから循環させる基準で言えば、中村と上原のセットが最適だろう。しかし、金子やレオ・ゴメスも戦術的な理解が上がってきており、金子のボールを奪う能力や運動量、レオ・ゴメスのスピードやパワーを指揮官が重視すれば、スタメンの入れ替わりもありうる。どちらにしても、この4人に関してはどのセットがスタメンになっても、ベンチに残る2人が控えているというのは心強い。
そのほか、ボランチの候補としては現在、右サイドバックで主力を張る植村洋斗、チームでただ一人、別メニューとなっている相田勇樹がいる。“チームの心臓”と形容されることもあるボランチは磐田にとっても重要なポジションであることは間違いない。「全員が競争しながら勝っていくことが一番J2優勝に近づく」と金子が語るように、良い意味でハッチンソン監督を悩ませる競争を継続していくことが望まれる。