厳寒期の落とし込み釣りでチヌ35cmをキャッチ!【和歌山・水軒一文字】
寒波で雪がちらつく厳寒の2月23日、和歌山県の水軒一文字にチヌ(クロダイ)狙いで落とし込み釣りに挑み、幸いにもチヌ35cmを手中にした。今回はその模様をお伝えしよう。
水軒一文字で厳寒のチヌ落とし込み釣り
チヌ(クロダイ)狙いの落とし込み釣りは、一般的にはチヌが防波堤や岸壁の着生物を捕食するために壁際に寄り付いている4月から11月ぐらいまでが釣期と言われ、冬はオフシーズンとされている。
しかし、和歌山県の水軒一文字では、厳寒期の2月でも岩カニをエサにした落とし込み釣りで釣果があがっていた。水軒一文字の主力の釣り物は、現地では平鯵(ひらあじ)と呼ばれているマアジ30cm級のデカアジだが、落とし込み釣りの常連もいて、吉報を届けてくれている。
釣り物が少ない時期だからこそ、釣れている時に釣れている魚を手にしようと、2月23日の釣行を決めた。
なお、筆者(私)は、盛期にも釣行しており、過去に38cmを仕留めた釣行記がTSURINEWSに掲載されているので、関心のある方は参考にご覧いただきたい。
カニエサを確保し受付
冬季はオフシーズンとあって、多くの釣りエサ店がオールナイト営業をしておらず、エサの岩カニも基本的には店内在庫を細々と販売している状況。私が好む大き目のサイズの岩カニを確保するのは容易ではない。
そうした中、深夜に車を走らせて3店のエサ店をはしごし、店員さんにも無理を言って、満足できる岩カニを何とか確保できた。水軒一文字に渡す水軒渡船の駐車場には深夜2時に到着。
車中でわずかな仮眠をとった後、現場を仕切るおかみさんの「お早うございまーす。今日もよろしくお願いしまーす。」の明るい声を機に、乗船受付がスタート。厳寒期とは思えない30人近くの釣り人が集う。
雪がちらつく中釣行開始
大半の釣り人は新波止で好調な平鯵狙いで、私が選んだ旧波止に渡ったのは5人だけ。おかみさんが海神様への祈りを捧げる中で、始発便は冬季定刻の5:00に順調に出船した。
しかし、順調だったのは出船まで。7番の船着き場で降りて旧波止に渡った途端、波止上に雪がちらつき始めた。
天気予報で寒波の到来は報じられていたものの、ここは和歌山県の海上で、降雪は想定外。波止上と釣り具に大粒の雪が降り注ぐ悪夢のスタートとなった。
岩カニに保温対策を講じる
落とし込み釣りは岩カニの活きの良さが生命線で、私は岩カニを海水バケツに入れて活かしておき、使う分だけエサ箱に小分けするスタイルをとっている。
しかし雪がちらつき外気温も著しく低下している当日の状況で、海水バケツを無策で野ざらしにしておくと、岩カニは海水温の低下で死んでしまう。
気休めにしかならないとしても、岩カニを寒波から守れ!とばかりに、海水バケツの底に使い捨てカイロを敷き、表面をタオルで覆って保温対策を講じた。結果的にこれらの策は功を奏して、納竿まで岩カニの活きは保てた。
釣り場と落とし込み釣りのタックル
水軒一文字は略図のとおり、新波止と旧波止があり、今回の私の釣り場は内側(陸向き)が一段低くなっていて、海面とは垂直立下の形状になっている旧波止。その壁面ギリギリにエサを落としていく。
旧波止の内側新波止と違って海面との高低差がさほどなく釣りやすいので、タックルはオーソドックスな組み合わせで3.9m竿の落とし込み釣りの専用竿を使用し、ストライプカラーの落とし込み・ヘチ専用の3号ラインを巻いた落とし込み専用リールをセットする。
ラインの先には市販の目印仕掛けを接続し、ハリスは硬めの1.7号を直結する。チヌ針は大物に備えて口元にしっかり掛かるよう針は軸がやや太めの3号を選択し、チモトにはガン玉2Bをかませる。
内側の壁に岩カニを落とし込み
朝6:30前に夜が明けた頃には雪が止み、陽射しを感じる釣りやすい状況に転じた。海水は澄み、風も波気もないに等しいという点では好材料だが、当日は若潮で潮の干満の差は昼12時まで殆どないのが不安材料だ。
指先だけ出した手袋を着けて岩カニを針に刺し、落とし込み釣りをスタートする。旧波止は2,000m以上長大で全域を探り歩くのは現実的ではないので、今回は5番の船着き場から200mほど南方向に下がった所をスタート地点として、7番の船着き場に向けて歩を進め、内側の壁を探り歩くことにした。
35cmのチヌがヒット
冬場で海水温の低い時期は、チヌは盛期のように海面近くに浮いてヒラを打つ状況は考えにくく、タナは壁際の海底と決まっている。旧波止内側の海底は約6m。目印仕掛けが見える範囲ではヒットして来ないので、竿先のわずかな感覚で海底を着実に捉えてチヌのいる所に岩カニを送り込むことが必要だ。
最初のアタリは小さく、上がってきたのはエサ取りのフグ。しかしフグでも魚の活性はあると前向きに理解して歩を進める。
7:20頃、5番の船着き場近くで、海底に着底した岩カニを竿先の小さな操作で剥がしてサソイをかけたことがドンピシャで功を奏し、ストライプラインがスッと引き込まれ、向こう合わせのような形で魚が針掛かりした。
強い引きでチヌかカンダイかの二択を確信した。壁際から引き離し、無理せず海面まで魚を浮かせる慎重なロッドワークを心掛けると、海面に銀色の綺麗な魚体が姿を覗かせた。空気を吸わせて動きを止め、タモ入れに成功。周りに誰もいない波止上で「嬉しい!」と声をあげた。
7番の船着き場付近の荷物置き場に戻って検寸すると35cm。魚が弱らないうちにとストリンガーに吊るした。
旧波止のの穴釣りは今一つ
旧波止に渡った他の釣り人は、消波ブロックの穴釣りで底物を狙っていた。良型メバル、ガシラに加え、上手くいけばアコウにも出会えるとあって、冬季の知る人ぞ知る釣り方になっているが、様子を聞くと「アタリはあるんですけどね」と、今一つの状況。
チヌを釣った喜びを露にするのは控えめにして、岩カニの保温のケアと、落とし込み釣り再開の準備にとりかかった。
追釣ならず納竿
新たに活きの良い岩カニを小分けして、落とし込み釣りを再開した。先ほど釣った海底でのサソイを組み入れて、2匹目の獲物を狙ったが、確証のあるアタリはなく、7番より少し手前の場所にたどり着いた時点でタイムアウト。
潮が殆ど動かない日なので、納竿を遅らせても釣果は伸ばせないだろうと判断して釣りを終え、10:30の迎え便で波止を後にした。最終釣果は追釣なく35cmのチヌ1匹に終わった。
新波止の釣り人は絶好調の模様
迎え便の同船者は平鯵狙いで新波止に渡っていた常連のようで、船着き場に戻ってからのおかみさんへの報告では、二桁釣果と良型のバラシがあったとのこと。
夕方に水軒渡船のホームページの釣果情報を見ると、30cmオーバーのサイズも混じる平鰺の二桁釣果が多数掲載されており、新波止の釣り人は絶好調の模様だった。また、チヌ落とし込み釣りの常連も当日は新波止に渡っていて、5匹のチヌを仕留めていた。
私は貴重な1匹のチヌを持ち帰り、夕食で塩焼きにして賞味したが、その味は釣り人あるあるの思い出補正もあって、平鯵に負けない絶品の味に思えた。
<伴野慶幸/TSURINEWSライター>