AED20周年 使用率拡大へ「AED GO」や幼児雑誌の付録にも
今日はAEDの話題です。救命処置ができる器械「AED」、街中でもよく見かけますね。
AEDを私たち一般の市民が使えるようになって、今年で20周年を迎えました。それまでAEDの使用は医療従事者にしか許されていませんでしたが、AED解禁からの20年で、少なくても8000人の命が、その場に居合わせた一般の人によるAEDで救われました。ただ、まだAED使用率が低いのが課題と言われています。
市民がいち早く現場に届ける「AED GO」
そんな中、スマートフォンのアプリを使って、AEDを一般市民が現場にいち早く届けるシステムがあります。「AED GO」という、このシステムを導入している千葉県柏市消防局救急課 高田大瑚さんに伺いました。
千葉県柏市消防局救急課 高田大瑚さん
「AED GO」とは、路上・公園・公共施設で、AEDを必要と思われる人に、一般市民がAEDを持って駆けつけるシステムです。スマートフォンに無料の専用アプリ「AED GO」をダウンロードしていただいたボランティアの方に、救命手当が必要な人の場所と、AEDの設置場所、経路をお知らせします。平成30年(2018年)12月1日から導入を開始しました。平成30年当時、市内のコンビニエンスストアや公共施設など、合計397カ所にAEDを設置していましたが、設置したAEDがほとんど使用されておらず、AEDの使用率を上げることは課題でした。そんなときに、京都大学が、スマートフォンアプリを活用したAED運搬システムの実証実験について、人口30万人以上の中核市との連携協力を希望していることを確認し、共同研究として開始しました。
119番通報があって、消防司令センターに電話が繋がります。そしてその消防司令センターから、アプリを通して、現場近くの登録ボランティアに駆けつけの要請連絡が入る仕組みです。
全国では、柏市のほか、愛知県尾張旭市、奈良県奈良市で導入されていて、取材した柏市では、現在およそ2300人がボランティアとして登録しています。柏市在住の人のほか、柏市に仕事で通っているなど、誰でも登録可能で、消防団員、医療従事者のほか、多くの一般市民の方が登録しているそうです。
「AED GO」課題は
実際にどれくらいこのAED GOが使われているかや、今後の課題について再び柏市消防局救急課 高田大瑚さんのお話です。
千葉県柏市消防局救急課 高田大瑚さん
これまでAED GOが発動した件数は、およそ350件で、そのうち反応してくださった方が150名、AEDを持って現場に行っていただいた方が5名となっています。「AED GOを通じて救命講習に参加した」という方も多くいらっしゃいます。また「日頃からAEDのある場所を意識するようになった」とお声をいただいています。1つ目の課題はアプリの登録者数を増加させることです。柏市では3000人のボランティア登録を目指しています。2つ目は、AEDの運搬数を増加させるために、AED GOを発令する場所の拡大です。現在は屋外のみ発令するため、多くの人が集まる駅や大型のショッピングセンターなど、屋内でも発令ができればと考えています。
施設内に不特定多数の人が入るとなると、セキュリティ面などからルール作りが必要なため、今はAED GOを使えるのは屋外に限られています。屋内でAEDが必要になる場面も多いので、範囲を広げられるよう動いていきたいということです。
また、高田さんのお話で、実際にこれまでにAEDを持って現場に行った方が「5名」ということでしたが、これは救急車が先に着いたり、少しAEDの場所や現場が離れていて、すぐには駆けつけられなかったなどの背景でこの数字になっているそう。この数字を増やすためにも、もっとAED GOを知ってもらって、多くの方に登録してもらうことが重要だと話していました。
この「AED GO」について、全国の消防から問い合わせが増えているそうです。
幼児雑誌の付録にAED
そんな中、4歳から6歳のお子さん向けの学習雑誌「幼稚園」の10・11月号では、「AED」が付録になりました。小学館「幼稚園」の付録担当 今村祐太さんに伺いました。
小学館「幼稚園」の付録担当 今村祐太さん
日本光電さんというAEDのメーカーとのコラボで、AEDを模した付録になっていて、本物の音声が入っています。AEDは緊急時しか開けられないので見る機会、触れる機会は少ないかなと思って、子どものうちからAEDというものがあると、まず認識してもらう。そして「おやこで!AEDたいけんセット」にしているので親も復習の意味も込めて、お子さんと一緒に学んでいただくみたいなところができるかなと進めました。大きさは約24センチから25センチ、本物のAEDに近づけた大きさにしています。本来だと蓋がパカっと開くと音声が鳴り出すんですけれども、そこは再現はさすがにできなかったので、開いたところ、スピーカーのボタンを押すと、音声が30秒流れます。AEDのマークは色んなところにあるので、マークがあったと意識してもらえるだけでもいいことかなと思います。
紙でできていて色はオレンジ、中のデザインも忠実に再現しています。ボタンを押すとAEDを使うときの手順の本物の音声が流れます。付録には人の身体が描かれたポスターも入っていて、実際にパッドをポスターの左脇腹と右胸に貼るなど、本物さながらに置いて学ぶことができます。
いざというときのために、誰でも普段から触れておくことは大事ですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)