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6月23日『国際女性エンジニアの日』

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6月23日『国際女性エンジニアの日』

6月23日は国際女性エンジニアの日です。

世界中で女性エンジニアの活躍を祝うイベントや活動が行われています。

国際女性エンジニアの日とは?

国際女性エンジニアの日(International Women in Engineering Day)は、2014年にイギリスの女性工学協会(Women's Engineering Society)によって創設されました。

この記念日は、女性が工学分野で活躍することを奨励し、ロールモデルとなる女性エンジニアを称えることを目的としています。

そのルーツは、第一世界大戦終結後の1919年。

大戦中のエンジニアリングを担った女性たちが、キャリアの継続を決意し、女性工学協会を設立しました。イギリスで女性がエンジニアとして初めて公式に登録されたのが1919年の6月23日でした。女性工学協会の95周年を記念し、この日を国際女性エンジニアの日としたのです。

工学部への進学、なぜ日本は女性が少ない!?

日本で、理工系学部に進む女子学生が少ないことが課題となっているのをご存知ですか?

OECD(経済協力開発機構)の中でも、「自然科学・数学・統計」「機械・工学・建築」など、STEM分野といわれる理工系学部に進学する女性の割合が極端に低いことが分かっています。特に、工学部の女子学生比率は約16%と、理学部(約28%)や農学部(約46%)などの理系分野と比較しても低い水準です。

『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬舎)の中で、著者の東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授の横山広美氏は「就職イメージ」と「数学ステレオタイプ」が大きく影響していることを指摘しています。

数学は男性に向いているといったイメージや、数学や物理学の分野で女性が活躍するイメージが薄いことなどにより、男性的イメージがついてしまい、理系の女性が少ない原因となっているのではないか。つまり、女性ロールモデルとの出会いの機会が限られていることから、進路選択の段階で工学の具体的な魅力や将来の活躍イメージを持ちにくい、というのです。

STEM分野の能力や適性がある女性はたくさんいるのに「それを生かした進路選択ができていない女性が多い」という現状は、日本の抱える「ジェンダー」の課題とも結びついています。

これらのイメージやステレオタイプを払拭することは簡単ではないですが、工学分野における女性比率の向上を図り、企業や大学のイノベーションの推進、日本の産業競争力を高めていくことが必要だと、世界との比較からも考えさせられます。

海外ではどんな施策をしているか?

海外でも、かつては理工学分野では男性人口が多かった中で、どのように優秀な女性エンジニアを育て増やしていったのか?

EUでは1997年の論文で女性研究者への差別が指摘されたことがきっかけとなり、女性研究者への支援政策を打ち出しました。

■男女平等な研究環境の整備

・研究機関における賃金や昇進の性差による格差を是正する取り組み

・性差による差別を排除するための法整備や、差別を受けた場合の救済制度

■女性研究者のキャリアパス支援

・メンターシッププログラムの導入や女性研究者のリーダー育成プログラムの実施

・ロールモデルとなる女性研究者の紹介

・研究分野における女性の割合を増やすための戦略的採用

■ワークライフバランスの推進

・育児介護休業制度の拡充や、柔軟な働き方を可能にする制度の導入

・研究機関における託児施設の整備

・男女間の家事・育児の負担を均等にするための啓発活動

上記以外にも、女性研究者のエンパワーメントを目的としたイベントを開催したり、女性研究者のネットワークの構築を支援するなど、様々な施策を行いました。

その結果、ラトビアやリトアニアでは、今では研究者に占める女性の割合は50%を超え、OECD諸国の中でトップレベルとなっています。

ラトビアやリトアニアを含む北欧バルトは、8カ国合計で3300万人と、日本の首都圏と同程度の人口しか持たない小国でありながら、Spotify社やSkype社ほか、多数の有名テクノロジー・スタートアップを輩出するイノベーションの最先端地域であり、デジタル先進国です。

そして、注目したいのは、エンジニア分野だけでなく、政治や経済の分野でもトップ層にいる女性の比率も高いこと。女性が活躍しやすい社会である、ということです。イノベーションを起こし、世界での次世代競争力を高めるためには、あらゆる分野でのジェンダーバランスを見直すことは重要なポイントであると言えると思います。

その他の国でも、STEM分野の女性人口を増やすため、政策を打ち出し支援している事例もあります。

例えば、オーストラリアでは「女性のSTEM10カ年計画」を発表し、政府と非営利団体が連携して、女子学生にプログラミングやドローンなどのデジタル技術を教える授業を取り入れ、全国の学校で実施しています。

ドイツでは、女性比率が40%未満の職業を対象に、10~15歳の女子学生が職場体験に参加できるプログラムを政府の資金提供により実施するなど、ジェンダーバランスに着目した政策を行っています。

北海道大学「We are Engine.」プロジェクト

日本でも工学分野の女性比率向上のための取り組みが全国で行われています。

大学入試で「女子枠」を設けて、女性の理工系学部への進学を増やそうという取り組みなども、その一つです。

北海道では、この度、工学を目指す女性人口を増やすための産学連携プロジェクトが立ち上がりました。

このプロジェクトは「We are Engine.」と名付けられ、北海道大学や道内外の企業が連携し、取り組むものです。今月13日、北海道大学で記者発表が行われました。

北海道大学大学院工学研究院副研究院長の林重成教授は、プロジェクト名にも込めた想いを次のように話しました。

「『エンジン』というキーワードは『工学の象徴』であり、重要な『動力』である。工学の分野を女性エンジニアがリードすることで、ジェンダーバランスの整った産業界を目指したい。」

プロジェクトでは各企業で活躍する女性エンジニアや研究者ら6人が「ロールモデル」となり、工学の魅力を発信。新聞広告の掲載や道内の中学・高校へのポスター配布、インタビュー記事のオンライン公開を通して、工学の中で活躍する女性の人材を全面的に押し出し、これまでの男性的イメージやステレオタイプを払拭したいとしています。また、年に2回の「We are Engine.会議」で、北大を含む実行委員会とパートナー企業とでプロジェクト施策を議論していく予定だといいます。

ロールモデルの一人DMG MORI Digital株式会社の菊池沙知さんは「大学では情報工学を学び通信の仕組みなどを研究しました。現在、入社13年目。時短勤務制度を活用し3人の子育てをしながらコンピューターシステムの開発支援をしています。プロジェクトを通して工学を選択した女性にも様々な選択肢があることを見せていきたい」と語りました。

工学は基礎サイエンスからアルゴリズム開発など幅広い分野があること、そして様々な活躍の場や選択肢があるのだということを、多様なロールモデルの発信を通して、中高生など次世代や、進路選択に影響力のある親や大人にも伝えていくとしています。

今後開催される「We are Engine.会議」で、どのような施策アイデアが生まれるのか?

期待を込めて注目していきたいと思います。

日本は世界118位 今年のジェンダーギャップ指数

先日、6月12日には、世界経済フォーラムが「ジェンダーギャップ指数(2025年度版)」を発表しました。今年の日本の順位は148カ国中118位(前年と同順位)でした。

これは、主要7か国(G7)のうち最下位で、アジアでもタイ、ベトナム、韓国、中国などを下回り、依然としてジェンダー格差が大きく、後れをとっています。

「政治・行政・経済・教育」と4分野でそれぞれの指標に基づき指数が出されていますが、教育の分野では、大学進学率の男女比なども指標となっています。

日本では、男性の進学率の方が高くなっていますが、実はこうした国が数か国しかないことは、あまり知られていないのではないでしょうか?

世界の多くの国では、女性の方が男性よりも大学進学率が高いのです。

また、世界で高水準の国と比較して気づくことは、政治・行政・経済・教育、これらの分野でのジェンダーバランスは全てどこかでリンクしていて、どこか一つを改善する点としての取り組みではなかなか改善は見られなく、総合的に社会構造を見直し、ジェンダー格差をなくすための取り組みを各分野で一斉に行い面で進めることがポイントなのだと思います。

大学など「教育」分野のジェンダーバランスを整えるためには、「経済」のジェンダー課題にも、私たちの生活という点では「政治」「行政」にも焦点をあて構造を見直す必要があると思います。これまで日常の中で当たり前のようになっていた性別役割分担や暗黙のルール、男性主体でつくられた社会構造を、アップデートしていくことが求められています。

国際女性エンジニアの日に思うコト

日本ではまだ広く知られていない記念日「国際女性エンジニアの日」ですが、女性が工学の分野でも活躍することの重要性を、社会に広く伝える機会にしていきたいですね。

そして、若い世代の女性たちが、エンジニアというキャリアを身近に感じ、将来の選択肢として考えるきっかけとなることを期待したいと思います。

海外ではバーで科学者が一般の人にレクチャーを行う「サイエンス・イン・ザ・バー」などが盛んな国もあります。大人がサイエンスを楽しんでいるのを子どもが見て育つ文化が育っているのです。サイエンスにエンターテイメント性をもたせるということも、キーになるのではないでしょうか。

また、北欧諸国の例などから学ぶことは、女性のテクノロジーや技術教育だけでなく「自分にもできる」というマインドセットを育てることも重要だということ。

これは、女性エンジニアや理系に限ったことではなく、私たち全ての女性に当てはまることだと思うのです。

「たとえ少数派でも一歩踏み出す自信と勇気」を。

そう、私自身にも言い聞かせて、今日この文章を書いています。

私たちが、国の、社会の、地域の「動力」になるのだと。

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