【静岡県知事選挙】理解力不足?揚げ足取り? 上川外相の“失言”にライバル陣営は同情
■上川陽子外務大臣 自民党推薦候補の応援演説
静岡県の政治家による発言が、またも注目を集めている。上川陽子外務大臣が静岡県知事選の応援演説で誤解を招く発言があったとして謝罪した。上川外相が応援する候補とライバル関係にある別の陣営からは「マスコミの理解力が低すぎる」と同情する声も上がっている。
静岡県知事選は5月9日に告示され、17日間の選挙戦に入っている。届け出順に以下の6人が立候補している。
・諸派・横山正文さん(56)
・共産党・森大介さん(55)
・無所属・鈴木康友さん(66)立憲・国民推薦
・無所属・大村慎一さん(60)自民推薦
・無所属・村上猛さん(73)
・無所属・濱中都己さん(62)
上川外相は18日、自民党が推薦する大村慎一さんの応援演説で静岡市に入った。多数の女性支持者らが参加した集会で、次のように発言した。
「県知事は大きな大きな命を預かる仕事であります。その意味で今、一歩を踏み出していただいた、この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」
「私も初陣の時、皆さんに『生みの苦しみはあるけれども、ぜひうんでください』と演説で申し上げました。この候補者のことを思うと、その場面が頭によぎります。きょうは男性もいらっしゃいますが、うみの苦しみは本当にすごい。でも、うまれてくるのは未来の静岡県、今の静岡県を考えると、私たちは手を緩めてはいけません。力を結集すれば、この戦いを勝ち抜くことができます」
■参加者からは拍手 自民党内からは「不適切」の指摘
参加者からは拍手も起きたが、「女性がうまずして何が女性でしょうか」という言葉を強調した報道によって、子どもを産めない女性に対する差別といった批判の声が上がった。自民党内からも「不適切な発言」と指摘が出た。
上川外相は翌日、「誤解を招く表現だった」と釈明して発言を撤回した。そして、以下のように真意を説明している。
「きのうの発言は支援いただいている女性支援者が中心の演説会での発言で、2000年の激戦で初当選した際に女性のパワーで私という衆院議員を誕生させていただきました。今一度、女性パワーを発揮して新たな知事を誕生させるという意味で申し上げましたが、女性パワーで未来を変えるという真意と違う形で受け止めをされる可能性がある発言だったという指摘を真摯に受け止め、発言を撤回させていただきます。24年間女性が新しい変化を生み出すパワーになることを実感しています。その思いは全く変わっていません」
今回の知事選は、不適切発言で批判された川勝平太知事の辞職に伴って実施される。静岡県の有権者は政治家の発言に敏感になっているだけに、上川外相の言葉は自民党や自民党が推薦する大村さんにとってマイナス要素になりかねない。
■「マスコミの質が低い」、「ニュースがワイドショー化」
知事選に立候補している他の陣営には“追い風”となるが、一部では上川外相に同情する声もある。選挙で争うライバルに対し、「発言の前後を聞けば、差別的な意味があると思えない。記者の理解力が足りないのか、政治家の揚げ足を取ろうとしているのか、いずれにしてもマスコミの質が低い」と話す選対関係者もいる。そして、こう続ける。
「最近は新聞もニュース番組もワイドショーのようになっている。政策を掘り下げる報道は乏しく、記者の知識が不足していると言わざるを得ない。批判しやすい言葉だけを切り取って問題視し、世論を煽ったり、情報の一部しか知らないコメンテーターが無責任な発言をしたりする内容が目立つ」
政治家は発言に責任を持ち、誤解を生まないように気を付けるのは言うまでもない。だが、選挙でライバル関係にある陣営が同情するほど、発言の真意とは違った内容を報道しても、有権者にメリットはない。県知事選挙は26日が投票日となっている。
(SHIZUOKA Life編集部)