サッカーが上手くなりたかったら練習量・質より「戦略的リカバリー」を! トップ選手、伸びる選手たちに共通する意識とは
サッカーが上手くなりたいならたくさん練習することだと思っていませんか? 指導者が高度なトレーニングを用意しても、練習する側の選手に疲労があると良いトレーニング内容が身につくどころか、鈍った判断で行った悪い動きが身につく悪循環もありと前編でご紹介しました。
心身を100%回復させ、いいコンディションでトレーニングに臨むことこそが、サッカー上達への近道なのです。
前編に続き、Jリーガーのコンディショニングを担当され、現在ヴァンフォーレ甲府のフィットネスダイレクターである谷真一郎さんにリカバリーの重要性を伺いました。
(取材・文 木村芽久美)
前編:コンディション管理こそサッカー上達のカギ! リカバリー不足のまま高度な練習してもトレーニングの効果が十分得られない
■これからの時期、特に気をつけたいビタミン・ミネラル不足。戦略的リカバリーのために必要なものとは
超回復を起こすために必要なのが栄養と休養(睡眠)で、これらを戦略的にとることが
大切です。
食べた物からしか体は作られないので、栄養はとても重要です。バランスの良い食事と体重管理のため、カロリーを意識することも大切ですが、これから夏に向け、ビタミンやミネラルを補うことも必要です。
ビタミンやミネラルは汗や尿で失われてしまうので、サプリメントなども活用すべきだといいます。また、これらは質の良い睡眠を導くためにも必要な栄養なのだそうです。
サプリメントはプロだけでなく、最近は育成年代でも積極的に取り入れ、パフォーマンスが良くなったという事例も上がっています。実際、谷さん自身も取り入れていて、コンディションアップを実感しているそうです。
またシャワーではなく、湯船に浸かることが疲労回復には大切で、入浴時には炭酸を入れたお風呂をおすすめしています。炭酸などは市販の安価なものでよく、10〜15分は入るといいそうです。
お風呂の後にはストレッチをして睡眠に入るのがベストですが、スクールや夜間練習などで、帰宅後にストレッチをする十分な時間がない場合、ベッドの上で大きな筋肉を伸ばすだけでも効果があるそうです。ぜひお子さんにすすめてみてください。
■リカバリーとトレーニング量のコントロールが、ケガの防止につながる
トレーニング量が多すぎると、ケガの原因にもつながるので注意が必要です。
毎日サッカー漬けの多すぎる練習量や、これは質の部分にもあたりますが、サッカーの競技特性に合っていない「素走り」トレーニングなどは、かえって状態を悪くする可能性もあります。
最近はSNSなどを中心にトレーニング情報が増え、トレーニング重視の傾向にありますが、トレーニングとリカバリーはバランスを考え、セットで取り組む必要があります。
側から見ていても身体が重そう、試合やトレーニング中の判断がうまくいっていない場合などは、リカバリーがうまくいっていない可能性がありますので、保護者はケア・サポートを重視してあげてください。
「選手自身が疲労を口にするのは、なかなか難しいことなんです」と谷さんはいいます。
例えば、コンディション情報をコーチとの共有のもと「今日は疲労度が8なので、トレーニング量を減らしたい」など、数値で説明できると相談しやすくなりそうです。
本人の自覚疲労度の数値が高いようなら我慢せず、積極的に休養がとれるようになるといいでしょう。
コンディショニングチェックシートのDLは「関連記事」から
■トップ選手、伸びる選手ほどリカバリーの意識が高い
トップ選手、伸びている選手は、リカバリーの意識が高く、年間の体重変動が少ないといいます。カズこと三浦知良選手もコンディショニングが上手なのだそうで、長年サッカーを続けられる秘訣の一つだといえます。
「『この夏は1グラムも減らさない!』くらいの気持ちで、トレーニング後はリカバリーに取り組んで欲しいです。サッカーが上手くなりたいのだったら、コンディショニングへの感覚を磨いておきたい。自覚疲労度が高い時には積極的に休養してほしい」と谷さんはいっています。
心身ともにフレッシュな状態で毎回トレーニングに臨めるよう、まずは体重管理と自覚疲労度のチェックに取り組んでみてください。
谷真一郎(ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター)
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』2020年よりヴァンフォーレ甲府のフィットネスに関わる活動に携わるフィットネスダイレクターに就任、現在に至る。また一般社団法人タニラダー協会の代表として体の動かし方に特化した講習会などの活動を全国で行っている。
【取得資格】
筑波大学大学院コーチ学修士
日本サッカー協会認定A級ライセンス
AFCフィットネスコーチ レベル2
日本サッカー協会認定キッズリーダー