夏の主役たち⑥ 自転車女子 練習嫌いの負けず嫌いが表彰台を目指す斉藤萌(別府翔青3年) 【大分県】
全国高校総体(インターハイ)で自転車女子の短距離種目に出場する斉藤萌(別府翔青3年)は、自他ともに認める「練習嫌い」だが、「負けず嫌い」でもある。勝負ごとになるとスイッチが入る。集中力が増し、持ち味の瞬発力が爆発力を生み出すと、一気に加速する。3月の全国高校選抜大会では女子スプリントで3位となり、5月の県高校総体では女子スプリントで23年ぶりに県記録を塗り替えた。「やるからには勝ちたい。できれば楽に」と悪気なく笑うところに大物感が漂う。
自転車との出合いは中学3年の頃。中学まで柔道をしており、腰を痛めて通っていた整骨院の整体師が元競輪選手だった。「自転車が向いていると言われ、悪い気はしなかった。柔道以外のスポーツを何かしてみたいと思っていた」。高校入学を機に自転車部に入部。才能の片りんはあったが、練習についていけず退部を考えたのは一度や二度ではない。ただ、将来の職業と決めた競輪選手(ガールズケイリン)の動画を見て、踏みとどまる。
何度もそんなことを繰り返し、2度目の冬を越したときに、「なぜか練習が楽しくなった」。理由なんてない。踏み込んだときの感触、加速スピードが心地良かった。明るく、前向きな性格は調子が上がると、全ての歯車が回り始めた。気持ちを高めるために見ていたガールズケイリンの動画が勉強教材となり、自転車操作や駆け引きなどを覚えるようになった。
春先から結果が出るようになり、表彰台から見る景色の気持ちよさを覚えた。全国高校総体では表彰台を目指すが、次への通過点でもある。「インターハイで結果を残し、競輪選手になる」。敬愛する児玉碧衣選手のように、「可愛くて」瞬発力に特化した選手になるのが目標だ。
(柚野真也)