「情け容赦ない怪物、でも愛されたかった」トランプ大統領の“師匠”とは?『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
“返り咲き”トランプ大統領に集まる熱視線
「世界中で最もヤバい大統領」と呼ばれたトランプの若き日を描いた映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が、2025年1月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開となる。
「まさに悪夢版『グッド・ウィル・ハンティング』だ」
ことし11月の米大統領選挙で、アメリカ史上「132年ぶり、2人目」となる大統領への返り咲きを果たしたドナルド・トランプ。この衝撃的なニュースを機に、本作の緊急先行上映が都内2館、1週間限定(11月22日~28日)で敢行された。
一足先に”トランプの禁断の過去”を目撃した観客からは、「これが実話ってのが怖いし、それが次期大統領ってのがさらに怖い…」「暗殺未遂直後に拳を突き上げる強さに納得できる半生」などと感嘆の声が上がるほか、「まさに悪夢版『グッド・ウィル・ハンティング』だ」という言い得て妙な声もあり、トランプ誕生のカギを握る“師匠”ロイ・コーンとの歪んだ師弟関係に注目が集まっている。
そこで今回は、ロイ・コーンとは一体どんな人物だったのか? いつトランプと出会ったのか? をざっくり振り返りつつ、本作でコーンを演じた俳優ジェレミー・ストロングのコメントを紹介。そこから見えてくる<最凶弁護士>の素顔に迫ってみたい。
トランプを創った男、最凶弁護士ロイ・コーンとは?
そもそもロイ・コーンとは60年代から80年代にかけて、政治家、著名人からマフィアのボスに至るまでの法廷闘争を相手構わずに引き受け、勝つためなら手段を選ばず容赦や慈悲の欠片もないやり口で恐れられていた最凶弁護士だ。
そんなコーンが初めてトランプと出会ったのは、1973年。トランプは当時27歳のナイーブなお坊ちゃんで、不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ破産寸前という人生最大の危機に瀕していた。そんな中、政財界の実力者が集まる高級クラブで、トランプを気に入ったコーンは<勝つための3つのルール>を伝授し、服装から立ち居振る舞いまで洗練された人物へと仕立てあげる。
やがてトランプはいくつもの大事業を成功させていくのだが、コーンでさえ思いもよらないほどの怪物へと変貌していき……。
「ロイは複雑で歪んだ人間だが、愛されたかった」
これまでもロイ・コーンというキャラクターはアメリカの大きな影の象徴として、トニー賞とピューリツァー賞を受賞した舞台劇「エンジェルス・イン・アメリカ」では物語の中心人物として描かれ、TVドラマ化された際にはアル・パチーノがコーン役を務めエミー賞に輝いた。
そして今回、『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』でコーン役を熱演したのが、ドラマ『メディア王~華麗なる一族~』の苦悶し続ける男ケンドール・ロイ役で賞レースを席巻し、本作でもアカデミー賞助演男優賞の有力候補として期待がかかるジェレミー・ストロングだ。
ロイは情け容赦ない怪物と思われているし、確かにそうではあったけれど、その怪物を生み出したのは心に空虚を抱えて生きてきた彼の人生。結婚生活も不毛で、心はいつも満たされない。権力の掌握に邁進したのも自己嫌悪と、同性愛者であることに抱いていた感情への裏返しで、自己防衛だった。
そう語るストロングはオファーを受けた当初から「挑戦し甲斐があった」と振り返っていたが、コーンを演じるために徹底的なリサーチを行ったことで、彼の哲学と“最凶”と呼ばれるがゆえの哀しみを、より深く理解することができたようだ。
そんなストロングは、「ロイはドナルドのことを、好んで“親友”と言っていたらしい。ロイは複雑で歪んだ人間だが、誰しもそうであるように、愛されたかった。そしてやっと――最後には失ってしまうが――愛の対象をドナルド・トランプとの関係に見つけたんだ」と、本作で描かれるトランプとの師弟関係にも言及。イケメンを封印しトランプを演じたセバスチャン・スタンと共に、残酷なまでに破綻していく師弟のドラマをエモーショナルに体現している。
「世界中で最もヤバい大統領」と呼ばれたドナルド・トランプは、如何にして作り上げられたのか――? ハリウッド随一の実力派俳優、ジェレミー・ストロングの迫真の演技を是非スクリーンで体感してほしい。創造主ロイ・コーンとトランプとの関係には、彼らへの好悪は別として、きっと胸を抉られることだろう。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は2025年1月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー