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首里城復興へ 樹齢300年以上の尾州ヒノキに命を吹き込み、沖縄と山口の絆をつなげる

OKITIVE

2026年秋の完成に向け着々と再建工事が進む首里城正殿。その中央に飾られる木彫刻は、沖縄出身の職人が山口県で制作されている。 実は沖縄と山口には530年の時を超えた不思議な縁があった。

沖縄テレビ 大城良太キャスター 「九州から関門橋を渡って山口県にやってきました。ここ山口では首里城正殿の中央にあり、今回の再建で大きく様変わりする木彫刻の制作が行われています」 木々が真っ赤に染まる山口県の山口大学。

樹齢300年以上の尾州ヒノキに命を吹き込むのが、豊見城(とみぐすく)市出身で山口大学の教授を務める上原一明さんである。

彫刻家 上原一明さん 「いきいきとした活力のある獅子の姿が出てくるので、彫れば彫るほど達成感は得られます」 この道およそ40年の上原さんが手掛けるのは、首里城正殿の正面に飾られる「向拝奥(こうはいおく)」の彫刻物だ。 平成の復元では中央の牡丹と唐草の文様だったが、今回はフランス海軍の古写真から得られた知見をもとに、左右に牡丹と獅子が新たに加えられたデザインに変更された。

彫刻家 上原一明さん 「よりオリジナルに近く比較的重厚感も出てきたので、今回の令和の復元は一段とよくなると思います」 さらに牡丹の葉裏は、上原さんならではの感性と技術で工夫を凝らした。

彫刻家 上原一明さん 「反ることで葉っぱの薄さを表現しています。それにプラスアルファ、私としてはちょっとらせん状に浮かび上がらせている工夫をしています」 わずかな失敗も許されない木彫刻、責任とプレッシャーがのしかかる中、上原さんの癒しになっているのがHYのアルバム「Route(ルート)29」の中の「二人で行こう」という曲だ。 彫刻家 上原一明さん 「私はこれ一番好きなんですよ。このアルバムを聞きながら制作しています。この中の『二人で行こう』という曲、これが最高なんですよ」

沖縄県出身のバンド・HYの大ファンである上原さんは、毎朝HYの曲を聞きながら作業に没頭している。 彫刻家 上原一明さん 「いーずー(仲宗根泉さん)の歌唱力、すごいですよ。気持ちよく制作できる」 山口に来て19年、上原さんは今回の再建で沖縄と山口の深い結びつきを感じている。 彫刻家 上原一明さん 「私が山口に来た理由がそこにあるのかなと感じます」

山口に来て19年、上原さんは今回の再建で沖縄と山口の深い結びつきを感じている。 彫刻家 上原一明さん 「私が山口にきた理由がそこにあるのかなと感じる」

これは歴代の琉球国王をまつる王家の菩提寺(ぼだいじ)、円覚寺である。

吊るされている「梵鐘(ぼんしょう)」は1495年、山口の防府で作られ円覚寺に贈られた。 この鐘を作ったのは「大和相秀(やまと そうしゅう)」という鋳物師で、今もその名がしっかりと刻まれている。

沖縄県立博物館・美術館学芸員 大城直也さん 「当時の山口には室町幕府の守護大名という形で、大内氏というのがいて、そのなかでも大内教弘(のりひろ)が積極的に琉球と通交をはかっていたので、梵鐘を作る文化も琉球にやってきたという形になります 」

興降寺には、大和相秀が山口市にある興隆寺の梵鐘も制作したという記録がある。 実はその興隆寺、2001年に仏像と台座が盗まれたが、その後、仏像は返ってきたものの台座は長年行方不明だった。

興隆寺 市原修俊 住職 「ここだけが返ってこなくて、木で台座を作っていたんですけど、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)様がかわいそうだということで、私が復元しましょうかというお話しをしました」

上原さんは2021年からおよそ2年半かけて台座を復元。

その間に首里城の彫刻の話が舞い込んだ。 彫刻家 上原一明さん 「山口に来てこうした形で首里城の造形物に携わることができたという、何か500年の時を経た不思議な縁を感じます」

530年の時を経て再び山口で作られたものが沖縄に届けられる。 彫刻家 上原一明さん 「当時作った彫刻師の気持ちになって彫るんですが、それと同時に未来、100年後・200年後に首里城にきて実際に見て頂ける未来の人たちにも楽しんでもらえればと思っている」

沖縄と山口の絆を未来に繋げる向拝奥の彫刻物は2025年1月、首里城に納品される。

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