性能云々より存在がカワイくて仕方がない! 「スピンキャストリール」をツラツラと語る【後編】
さて、前回の「スピンキャストリール」について語った記事の最後で、『続編を書かせてもらえる機会があるのなら「アブ・ガルシア編」』と記したのだが、何と編集サイドからOKをもらえた!! そこで今回は、予告通り「アブ・ガルシア編」をツラツラと語らせてもらおうと思う。
2000年以降に並行輸入された次世代モデル
「アブマチック」が今回の主役!
前回はスピンキャストリールのかんたんな構造解説と、私の“スピンキャスト魂”に火を付けてくれた「ZEBCO(ゼブコ)」製リールについて語ったのだが、今回は第2章ともいうべき「アブ・ガルシア」製のスピンキャストリールについてがメインとなる。そして、このアブ・ガルシア製リールが、メラメラと燃えていたスピンキャスト魂の火をさらに勢い付けるわけだが、後に鎮火させることにもなってしまう…。
前回の記事で紹介したZEBCO(ゼブコ)リールの数々。前3台が1軍で、後ろはバックアップも兼ねた2軍だ
今から20年以上前の話。当時はすでにアブ・ガルシアの正規取扱企業が、かつてのマミヤ・オーピーから現在のピュア・フィッシング・ジャパンに移行していたはずだ。ただ、移行したあとのリールのラインナップの中には今回紹介する「アブマチック」はなく、並行輸入品をネット通販で購入したと記憶している。
ただ、ひとつお断りさせてほしいのだが、1979年にスウェーデンのABU社がアメリカのガルシア社を買収して「アブ・ガルシア」社になる前にABU社から発売されていた、いわゆるオールドタックルの範疇に入ると思われるタイプのアブマチックに関しては、私はよく知らない(勉強不足ですみません…)。つまり、私が購入したのはアブ・ガルシア社になってからの、アメリカ市場を意識した次世代(とはいえ、もう20年以上前だが)のアブマチックということになる。
ゼブコと比較して、完成度が高く洗練されたルックスがカッコイイ!
がしかし……
で、最初に買ったのが「アブマチック875」と「アブマチック475」の2台。前述の通りネット通販で買ったので、現物を見ずの購入である。モニター越しに目に飛び込んできたその姿は、前回紹介したゼブコのリールと比べてオモチャっぽさがなく、当時の私にはとても洗練されたモノに見えた。
アブ・ガルシアの「アブマチック875」。外殻はリールフットを除いて、ほぼメタルパーツで構成されている。それだけに高級感があってカッコイイのだが…
ドラグはハンドル軸の外側にベイトリールのようなスタードラグがマウントされる。ハンドルの左右付け替えも可能だ
前回紹介したゼブコのリールはラインのピックアップピンが1本だが、アブマチック875/475は2本付いているので、素早いラインのピックアップができる
「カッチョエ~!!」と言ったかどうかは忘れたが、とにかく意気揚々というか、浮かれ過ぎというか、マンガでよくある目の形が「♡」の状態で、細かい説明など何もチェックすることなく衝動買いしたと思う(笑)。そして、いざ届くと同時にビックリ…というか、膝から崩れ落ちるほどの衝撃を受けるのである。
「で、デカい…そして重い…」。
大きさとしては前回紹介したゼブコの「33クラシック」や「44クラシック」より、さらにひと回りサイズアップしたイメージ。そしてアブマチック875の方はメインボディがアルミ製ということもあり、そのズッシリ感がハンパない。もうひとつのアブマチック475の方もサイズは同じなのだが、ボディ素材はカーボン樹脂を採用しているので、いくらか軽いが大差はない。
前述したが、恐らくアメリカ市場を意識した商品なので、手がデカくてパワフルなアメリカ人に使ってもらう前提でのデザイン。そりゃ私のような小っちゃいオジサンが使おうと思えば、オーバーサイズになること必至だ!
右がゼブコの33クラシックで、左がアブマチック875。スプールカバーの部分はひと回り以上大きな印象で、そのぶん重い。「アブマチック475」に関してはストックのままのボディが残っていなかった。しかし、実際に重量があるものの、回転性能はアブマチックの方が圧倒的に上だ
ただ、メカニズムに関してはさすがアブ・ガルシアといったところか、その時点で私が知っていたどのスピンキャストリールよりも回転性能はよく、いわゆる「シルキーな巻き心地」であったことは確かだ(今のリールと比べるのはナシね)。
カーボン樹脂ボディの475を「魔改造」してアンダースピン仕様に!!
でも…やっぱりデカさと重さの方が気になって仕方がなく、両モデルともベイトロッドで使う上向きタイプなので、ベイトリールと比べると重心が高い位置にあるだけに片手で支え続けるのはツライ…。しかもキャスト時などは重さで勢いが付き過ぎて、タックルごと投げてしまいそうで怖かった。せめて普段使い慣れている、ゼブコの44クラシックのようにスピニングロッドで使うアンダースピンタイプだったらな~。
で、アブマチック475を見て「…あ!」とひらめくのである。前述した通り、アブマチック475のボディ素材はカーボン樹脂である。つまり、頑張れば素人でも加工ができるわけで、これをアンダースピン仕様に改造してしまおうと思い付いたのだ。
そこで役に立ったのが、前回の記事にも記した44クラシックの1軍モデルを作る際に生じた「外れパーツ」の数々。その中には44クラシックの“ボディ”も含まれており、このボディからリールフット&クラッチレバーを切り離し、アブマチック475へと移植するという自己満足タップリ過ぎる計画だ。
アブマチック475に移植するのは、ゼブコの44クラシックのリールフット&クラッチレバー。幸いこちらも樹脂ボディなので、プラノコ&カッターナイフを使えば切断することができる
で、実際にできたのがこの「アブマチック475 アンダースピン仕様」である。どうですか、みなさん? 素人作業にしては既製品に近いデキじゃ~ありませんか??
もちろん外観だけでなく稼働部分もスムーズに動くし、重いのはどうにもならない部分ではあるが、スピニングロッドに装着すると重心は下にぶら下がるような形になるので、使っていてバランスが崩れるようなことは一切なしだ!
リールフット&クラッチレバーの移植に成功したアブマチック475。素人ながら素晴らしい出来だと、いまだに自画自賛してほくそ笑んでいる
リールフットとボディは瞬間接着剤で固定したあと、ミニ四駆用のビスを使って内側と外側から締め付けてさらに強固に固定。本来クラッチボタンだった部分も瞬間接着剤で固定している
あまりのデキのよさ(少なくとも本人はそう思っている)に早速、実戦へと投入。軽いルアーから重いルアーまでオールマイティにキャストでき、やはりギア比はそれほど高くないので相変わらずのスローロールではあるが、滑らかな巻き心地で使っていてとても楽しかった(釣れたかどうかは別として)。
軽くてコンパクトな275シリーズの登場で“熱”が一気に冷めていく…
そんな、「アブマチック475 アンダースピン仕様」との楽しい時間が過ぎて数か月後、いや1年後だろうか。私にとっては「ちょっと待ってくれよ、ジョニー!!」(アメリカのテレビ通販の吹き替えにありそうなヤツ)な“事件”が起きる。それが、ダウンサイジングモデルの「アブマチック275」と「アブマチック275U」の登場である。
取り敢えず気になって購入してみたのだが…、両方ともとにかく軽い! これならベイトロッドで使ってもバランスが崩れることなく使えるし、275U(アンダー=UNDERの“U”)に至っては、私が改造した475アンダースピン仕様より重量はもちろん、クラッチ、巻き心地などなどすべてが軽いのだ!!
せっかく自己満足全開で475アンダースピン仕様を楽しんでいたのに…さらに軽くコンパクトな275/275Uがシレッと発売。ぅおおおい! コッチから先に出してくれよ!!
875と275との比較。一目瞭然で小さく、重量も大幅に軽い。ボディをダウンサイジングしただけで、基本的な構造はほぼ一緒だ(※275Uのスプールカバーしか残っていなかったので、しぶしぶ装着)
この瞬間「私の苦労(改造)は徒労に終わった感」というか、「最初からコレを出してくれよ」みたいなマイナスの感情が沸々と湧き上がってくると同時に、突然スピンキャスト魂は冷え切ってしまった…。こうして、私のスピンキャストリール期は終わりを迎えてしまったのである。
性能云々より“愛でる”対象としての役割が大きい!?
それがスピンキャスト!!
以上、唐突の幕切れとなるが、ツラツラと語ってきたスピンキャストリールのお話は終わりである。
熱が冷めたことで、幾つかのリールはオークションサイトやフリマサイトで売却してしまったが、それでも記事を書けるだけのネタをひねり出せるリールを残しておいたのは、決して無駄ではなかったということだろう。
この先もこれらのリールを残しておいたところで、使う機会が来ることは恐らくないだろうが…、それでも何か手放せないのである。やっぱり存在自体がカワイイから!
もう釣り道具としては機能していないが、このルックスはやっぱりカワイくて手放せない…
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レポーター
プロフィール:くどぅちゃん
バイク雑誌→釣り雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライター&編集者に。個人的な趣味としてもバイク&釣りを楽しんでいるが、完全にヘタの横好きで費用対効果がひじょうに悪いのが悩みドコロ…。