「やさしい子にしたい」子育てしても変わらない子どもの性格。もしかしたら遺伝の影響かも?【眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話】
親の育て方は子どもの性格に影響しない!?
格は遺伝と非共有環境の影響大
知能と同じように、性格にも遺伝は影響しているのでしょうか? じつはこれも、一卵性双生児と二卵性双生児を比べる双生児法によって、かなり相関があることがわかっています。
そもそも性格をどのように計測するかというと、1980年代にルイス・ゴールドバーグらが提唱した「ビッグファイブ理論」を用いるのが現在では主流です。これは、性格を神経質、外向性、開拓性、同調性、勤勉性の5つに分け、それぞれの評価によって表わそうというものです。詳しくは次のページをご参照ください。この5つの項目に関して、双生児法で遺伝の影響を調べたところ、どの項目でも30〜50%ほどの相関が見られました。性格に及ぼす遺伝の影響はけっこう大きいといっていいでしょう。
一方、環境面について見てみると、共有環境の影響はいずれもゼロで、残りは非共有環境が影響しているという結果でした。同じ家庭環境で育った子でも、その環境は性格には影響せず、個人差はそれ以外の非共有環境によって生まれているわけです。つまり、親の育て方は子どもの性格に影響していないことになります。「やさしい子にしたい」と親ががんばって育てても、子どもがそうなるわけではないというのは、ちょっと驚くべき点かもしれません。
性格への遺伝の影響
「ビッグファイブ理論」
980年代に心理学者ルイス・ゴールドバーグが提唱した理論。性格を以下の5つの項目に分け、それぞれ高いか低いかによって性格を数値化した。
【神経質】
高いほど不安や緊張を感じやすい。低いほど情緒が安定していてストレスを感じにくい
【外向性】
高いほど他人との交流を好む。低いほどひとりの時間を好む
【開拓性】
高いほど知的好奇心が強い。低いほど手堅く安全性を好む
【同調性】
高いほど他者への共感や配慮ができる。低いほど他者と距離を置く
【勤勉性】
高いほど真面目で責任感が強い。低いほど直感的で感情的に行動する
一卵性・二卵性双生児に見る性格の共通性
●性格と遺伝の相関(一卵性・二卵性双生児の比較)
・一卵性双生児は性格が似ていることが多い
・二卵性双生児は一卵性双生児と比べて半分以下しか性格が似ていない
性格は遺伝の影響を受けている
一卵性双生児は性格が50%近く似ているのに対し、二卵性双生児はその半分以下しか似ていません。このことから、遺伝が影響しているのが読み取れます。
性格に遺伝はどれくらい影響する?
●性格への遺伝と環境の影響度
一卵性双生児と二卵性双生児の差から、性格への遺伝の影響を調べたのが上のグラフ。性格5項目とも、遺伝の影響が3 〜 5割ほど表われています。また、共有環境の影響はいずれもゼロで、性格は遺伝と非共有環境のみで説明できることがわかります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康