【検証】何が正解?タイラバの移動速度 潮流と巻き速度から見る最適解!
タイラバ釣りの成功を左右する重要な要素として「巻き速度」があります。しかし、この巻き速度は潮流や状況によって常に変化するため、経験を積まないとなかなか理解し難いところです…。
今回は、タイラバの巻き速度について「タイラバの移動速度」という考え方を基準として分析し、それぞれの状況における最適な巻き速度について検証してみました。「タイラバの最適な巻き速度って、漠然としていてよく分からないな…」と悩んでいる方に向けて、少しでも頭の中を整理するお助けになればと思います。
タイラバにおける「巻き速度」の一般的な認識
タイラバでは必ずリールを巻く必要があります
従来の曖昧な指標
タイラバ釣りにおける「巻き速度」について、これまで以下のような表現で説明されることが一般的でした。
・タイラバの重さがちょうどいい感じ
・潮に合わせて巻く
・タイの活性に応じて変える
・ベイトの種類によって調整する
明確な基準の必要性
これらの感覚的な表現は経験者には理解できても、初心者には具体的な行動に結び付けることが困難です。とくに以下の点が課題となっています。
・速度の定量的な基準がない
・状況に応じた調整方法が不明確
・正しい巻き速度かどうかの判断基準がない
今回の検証における前提条件
今回の検証を実施するにあたり、以下の前提条件を設定してみました。
釣り場:瀬戸内海
出典:Google Earth
・安定した潮流パターン
・タイの生息環境が明確
・著者のメインエリア
対象とするエサ:ベントス(底生生物)
釣り上げたタイが吐いたベイト
・エビ、カニなどの甲殻類
・比較的ゆっくりとした移動特性
・潮流に影響される動き方
・タイの主要なエサ(ベイト)
季節:初夏から秋
・底生生物をメインで捕食している時期
・タイの活性が高い時期で、水温変化などによる魚のコンディションへの影響が少ない
・春や冬は中層浮遊系ベイトを捕食しており傾向が異なる
(タイラバの)検証に際して前提条件(場所・エサ・季節)を設定する理由は、釣果に影響を与える変数を限定することで、より明確な法則性を見出すためです。
場所によって潮流パターンは大きく異なり、太平洋や日本海では瀬戸内海とは全く異なる条件となります。また、ベイトの種類によってタイの捕食行動が変化し、イワシなどの遊泳魚を追う場合は、底生生物を捕食する場合とは異なる行動を見せます。そして季節についても、春や冬にはベントス以外の中層に浮くベイトを捕食するタイミングが多くなるため、巻き速度についての考え方が変わるからです。
今回の検証結果は、あくまでこの3項目の前提条件があることに留意してください。
タイラバの移動速度から考える「巻き速度」とは?
タイラバの移動速度を正確に理解するためには、以下の2つの要素を考慮する必要があります。
(1)潮流による横移動
・潮流によって自然に発生する移動
・潮の強さによって大きく変化
・アングラーが制御できない要素
(2)巻き上げによる縦移動
・リールの巻き上げによって生じる上昇移動
・アングラーが直接制御できる要素
これら2つの要素が絡み合い、タイラバの実際の移動速度が決まります。「タイラバの移動速度と巻き速度の関係」といった理解に基づくと、以下の重要な関係性が見えてきます。
【潮流が強い場合】
・横移動が大きい
・巻き速度を遅くしても十分な移動速度が得られる
【潮流が弱い場合】
・横移動が小さい
・巻き速度を上げて移動速度を確保する必要がある
このようにタイラバの移動速度を基軸とすると、潮流によって巻くべきスピードが変わるということが分かってきます。
タイ目線から考える
「最適な」タイラバ移動速度とは?
ここからは、私の経験をもとにした考えをお伝えしたいと思います。人によって考え方が異なると思いますので、みなさんそれぞれ「最適なタイラバ移動速度」とはどういうものなのか考えてみてください。
私は「最適なタイラバ移動速度」とは、以下の2つを満たす速度と考えています。
●ベントスの逃げる速度
●タイラバを偽物と見切られない速度
これは、前提条件においてエサとなるものがベントスであり、これを捕食するタイを釣り上げる場合の話です。タイラバがエサではない偽物である限り、エサのように動く最低限の速度が必要だと考えました。
では、この2つを満たす具体的な速度がどのくらいなのか? 「ズルラバ」という巻かないタイラバを以前紹介しましたが、このときの経験から以下のように考えました。
参考:着底後すぐ巻かない!?常識を覆す「ずるラバ」とは?
ズルラバでタイがバイトしてくる可能性が高まるのが、潮の速さが1.5ノット以上になったときです。ズルラバはリールを巻かないので、「潮の流れる速さ(正確には船が移動する速さ)=タイラバの移動速度」となります。つまり、最低限1.5ノットの動きがあれば、タイはタイラバに対して捕食行動をするものと考えることができるということです。
ただし、ズルラバは巻き上げるタイラバと違って底を引きずるため、中層を泳がせる通常の巻くタイラバとは動きが異なります。中層ではタイラバを強制的にアクションさせる「底(=障害物や抵抗)」がないため、巻くことによる水の抵抗で渦流の発生が必要です。ですから、最低限の1.5ノットよりもう少し早く移動する必要があるのではと考えられます。
(やや仮定条件が多いですが…)以上を総合的に判断し経験とも照らし合わせると、最適と考えられるタイラバの移動速度は以下と考えました。
最適なタイラバ移動速度: 1.8~3.0ノット(秒速0.8~1.5m/秒)
最適なタイラバの移動速度は「1秒間1回転」
その真理とは?
●理想的なタイラバの移動速度
・潮流1ノット時の縦横の移動速度が適正範囲内
・ローギアリール:約0.8m/秒
・ハイギアリール:約1.2m/秒
・1秒間1回転で、最適なタイラバ移動速度になる
1ノットの潮、つまり条件のよいタイミングにおいてタイラバの移動速度を最適にするためには、1秒間に1回転(リール1巻き)ぐらいが基準になるようです。ただしこれは、潮が1ノット程度のときであり、ここまでお伝えしてきたように、タイラバの移動速度は潮の流れる速さとリールを巻く速度との合成となるため、潮の流れる速度によって巻きスピードを変化させなければいけません。
潮の速さごとの「最適な巻き速度」
これまでの話を踏まえると、潮流を考慮したそれぞれに最適な巻き速度は以下の通りとなります。
【潮流1.5ノット以上の場合】
●推奨する巻き方
・デッドスローリトリーブ
・ズルラバ
・極めてゆっくりとした巻き上げ
●理由
・潮流による水平移動が十分ある
・自然なエサの動きを演出しやすい
・タイの捕食レンジ内での移動が容易
【潮流1.0~1.8ノットの場合】
●推奨する巻き方
・スローリトリーブ
・1秒1回転をベース、またはやや遅め
●理由
・最も一般的な潮流強度
・理想的な速度を得やすい
【潮流0.8~1.2ノットの場合】
●推奨する巻き方
・ノーマルリトリーブ
・1秒1回転
・安定した巻き上げ
●理由
・基本的な潮流強度
・標準的な巻き速度で対応可能
・初心者でも扱いやすい条件
【潮流0.8ノット以下の場合】
●推奨する巻き方
・やや早めの巻き上げ
・ファストリトリーブ
●注意点
・急激な上昇は避ける
・タイの捕食レンジを意識
潮流に合わせた最適な巻き速度でマダイは確実に食ってくる!?
最適な移動速度か?レンジの保持か?
そのバランスが大事
ここまでで潮流と巻き速度の関係が見えてきました。タイがタイラバにバイトする理由として、「最適なタイラバ移動速度」があるというコト。しかし、さらに重要なこととしてもう一つ考えなければならないのは、「タイラバの移動方向」あるいは「レンジ」を考える必要があるということです。
最適なタイラバの移動速度(秒速0.8~1.5m/秒)を意識し、タイラバを一定の速度で巻いた場合、潮の速さによってはタイラバの移動方向が変わってしまいます。とくに、底にいるベントスを捕食しているタイは底付近にいますので、図の例のように潮が緩いタイミングでは急角度でタイラバが上昇することとなり、タイの捕食レンジから外れてしまう可能性が高まってしまうのです。
したがって、「タイラバの移動速度を最適にすることを第一とするのか? レンジの保持を優先するのか?」そのバランスを考えながらタイラバの巻き速度を調整する必要が求められます。
以下に、潮の状態ごとにおけるメリット、デメリット、留意事項などをまとめましたので、実際の釣りの際に参考にしてみてください。
【適度な潮流(約1ノット)の場合】
●移動角度:約45度
●メリット
・タイの捕食レンジ内での理想的な動き
・広い範囲を効率的に探索可能
・ベントスの自然な動きに近い
●特徴
・1秒1回転の基本的な巻き方で実現可能
・安定した誘い方が可能
・タイの反応が得やすい
【強い潮流(1.5ノット以上)の場合】
●移動角度:水平に近い(20~30度)
●メリット
・底生生物の自然な動きを再現
・タイの捕食本能を刺激しやすい
・ズルラバでの対応も可能
●注意点
・タイラバが浮き上がりすぎないよう注意
【弱い潮流(0.8ノット以下)の場合】
●移動角度:急角度(60度以上)
●デメリット
・不自然な上昇角度になりやすい
・探索範囲が狭くなる
・タイの捕食レンジから外れやすい
●対策
・できるだけ巻き速度を抑える
・ポイントを絞った釣りが必要
今回の検証で分かった「潮流1ノットでの1秒1回転」という基準は、タイラバ釣りにおける重要な指標となります。そしてこの基準を軸として、潮流が強まれば巻きスピードを緩め、弱まれば速めるという基本的な法則性も確認できました。
しかし、これはあくまでも「基準」であって「絶対的なルール」ではありません。実際の釣りにおいては、その日の潮流や水温、タイの活性、ベイトの状況など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。そのため、この基準を知識として押さえておきながらも、実際のフィールドでは異なる巻きスピードを積極的に試してみることが重要です。
そして最も大切なのは、自身の経験を通じて「釣れる巻きスピード」を見つけ出すことです。今回お伝えした内容は、そのための「物差し」として活用してもらえればと思います。タイラバ釣りの醍醐味は理論と経験を組み合わせながら、その日、その場所での最適解を見つけ出していく過程でもあるのです。あなただけの「釣れる巻きスピード」を見つけてみてください。
最後に、今回の検証内容はYouTubeにもアップしています。動画でなければ分からない実際の釣りの様子や巻きスピードの比較などもありますので、ぜひチェックしてみてください。
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レポーター
プロフィール:つりばか3号
瀬戸内海タイラバYouTuberの「つりばか3号」です。名前のとおり瀬戸内海にてマイボートのタイラバをしており、その様子を動画にしてYouTube配信しています。魚探を利用した釣りが得意で、魚探データから海図を作ったりしています。タイラバのノウハウや、魚探の使い方、海底地形と釣れるポイントの関係などについて発信したいと思います。
YouTube:【高松沖タイラバ】つりばか3号のフィッシングドキュメンタリー