【横浜市中区・南区】山手署・南署署員 剣道・柔道で日本一に 全国警察大会で初
日本武道館で9月2日に行われた「令和7年度全国警察柔道・剣道選手権大会」で山手警察署の松本智香巡査(29)が剣道女子、南警察署の久野ふくみ巡査(26)が柔道女子70kg級でそれぞれ優勝を果たした。皇宮警察本部と各都道府県警察が推薦する選手が出場し、警察官の個人戦日本一を決める同大会。両選手ともに、初の優勝となった。
「ホッとした」
剣道女子は93人によるトーナメント戦、時間無制限の1本勝負で行われた。松本選手の出場は4回目。昨年の世界剣道選手権大会で団体に出場し、優勝した実力を持つが、未だ同大会での優勝はなかった。「3本勝負とは戦い方が違う。1本取られたら終わってしまうので、意識的に立ち上がりには気を付けた」と振り返る。
準決勝の相手は松本選手の姉の松本弥月巡査部長(伊勢佐木警察署)。準決勝で当たると分かり、絶対ここまで勝ち上がりたいと意識して試合に臨んでいた。「情を出すと勝負の神様に見放される」と強い気持ちで挑んだ試合は、開始約3分で妹・智香選手の小手で勝負がついた。
全国大会で姉と対戦するのは初。その背中を追い、剣道を続けてきた松本選手は「姉妹対決ができて誇らしかった」と頬をゆるませた。
決勝も神奈川同士の戦いに。対戦した高橋萌子巡査部長(保土ケ谷警察署)も、松本選手が警察に入る前からの憧れの存在で、共に練習をしてきた仲。試合は松本選手が飛び込み面を決め、初優勝を果たした。神奈川県勢が上位4人のうち、3人を占めた。
松本選手は「優勝できてホッとした。応援してくれている人が喜んでくれているのが何より嬉しい」と話す。喜びもつかの間、次の目標である10月の団体戦と11月の全日本女子剣道選手権大会の優勝に向けて、練習に励んでいる。
緊張を乗り越えて
柔道女子70kg級は、全国から19人が出場。昨年は2回戦で敗れている久野選手は「試合になるとすごく緊張してしまい、持っている力が発揮できないことが課題だった」と前回の試合を振り返る。今大会に向けては、本番で緊張しないように、試合形式の練習を積み重ねた。
準々決勝は、4分間で決着がつかず時間無制限の延長戦となるゴールデンスコアで勝利。その影響で、5分後すぐに準決勝が開始されるというハードな展開に。開始すぐに有効を取られてしまい、不利な状況となったが、残り1分で得意の「釣腰」で一本勝ちを収めた。「学生のときから得意技としていたので、土壇場で決められて嬉しかった」と笑顔。
準決勝の勢いのままに決勝に臨んだ。両者譲らず、ゴールデンスコアに。最後は、相手の反則により優勝を手にした。負けたくないと考えると緊張してしまう。今大会は「負けてもいい、でも思いっきりやろう」と気持ちを切り替えることができたのが、自分らしい柔道をする大きな転機となった。「優勝できたのは、普段から多くの人の支えがあったからこそ。日々感謝を忘れず、これからも頑張りたい」と喜びを話す。
警察官になり、柔道から離れていた。南区の浦舟町交番で2年間勤務。「地域の安全、安心について地域住民の皆さんと話し合ったり、自宅に訪問する活動にやりがいを感じました」。その間、何度も署員から柔道復帰を誘われたが、ブランクもあるため、なかなか決心がつかずにいた。背中を押したのが「もう一度やってみたら」という夫の言葉だった。
11月に行われる警察に限らず体重別柔道の日本一を決める講道館杯への出場に向け、神奈川武道館=保土ケ谷区=を拠点に汗を流す。ウェイトトレーニングで体を強くし、男性選手と混ざりながら練習する日々を過ごす。「強い選手ばかりの講道館杯でどこまで通用するのか、今から楽しみです」と前を見据えた。