佐賀酒の魅力を全国へ!「佐賀を味わう」SAGA BARの挑戦
辛党のみならず、これまで日本酒に親しみがなかった人や若い世代からも多くの反響を残した佐賀県主催のプロモーション企画「佐賀酒"体感"空間SAGA BAR in 福岡」。前編では、佐賀の銘酒を老若男女がいろいろな楽しみ方で味わうイベントの魅力を取り上げましたが、「そもそもSAGA BARとは?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。後編では「SAGA BAR」の実態やプロジェクトの軌跡、多方面から注目を集める革新的な取り組みに迫ります。
酒どころ佐賀県が仕掛ける革新的プロジェクト「SAGA BAR」
「佐賀を味わう」をコンセプトに、佐賀の酒を中心とした県産品の魅力を全国に発信するブランド「SAGA BAR」。自主イベントの開催や飲食店とのコラボレーションなど、様々なアプローチで佐賀酒(さがさけ)の認知度を高める取り組みを行っています。九州をはじめ、東京などでも注目を集めるこのプロジェクトは、一体どのような背景から生まれたのでしょうか。佐賀県産業労働部流通・貿易課でSAGA BARの企画を担当する梶原千紗都さんに話を伺いました。
梶原さん:「佐賀県は24軒の酒蔵が酒造りをする日本酒の銘醸地。九州と言えば『焼酎』というイメージが強い中、佐賀は日本酒どころであることを多くの人に知ってもらおう、そして他県の方々にもっと佐賀のお酒を親しんでいただこうという思いから佐賀県庁内で県産酒に特化したプロジェクトが発足しました」
佐賀は江戸時代から酒造りが盛んな日本屈指の酒どころ。肥沃な佐賀平野で育まれた良質な米と清らかな水、そして蔵元たちが守り継ぐ伝統の技によって、まろやかな口当たりと甘くてコクのある佐賀酒が生まれています。深い歴史を持つ老舗の蔵元が多数あり、近年は新しい酒造りにチャレンジする蔵元もいて、佐賀酒は佐賀県の魅力を表す大きな要素なのです。
より多くの人に佐賀酒の魅力を知ってもらい、「佐賀=日本酒」というイメージを定着させるための第一歩が、県の玄関口である佐賀駅にできた、”九州随一の酒どころの佐賀を体感できるバー『SAGA BAR』”です。
2019年に様々な佐賀酒を味わえる『SAGA BAR』が佐賀駅にオープン(※現在は閉店し、民間事業者が別店舗として運営)
“佐賀酒の魅力を届けに行く”。各地で広がるSAGA BARの活動
佐賀駅での実店舗オープン後、環境やニーズに合わせて柔軟に形を変えながら成長を遂げているSAGA BAR。その取り組みは、大きく3つのフェーズに分けることができます。
まず、店舗型のプロジェクトが第1のフェーズ。立ち飲みスタイルで気軽に楽しめる雰囲気を演出しつつ、有田焼や唐津焼の酒器を用い、佐賀ならではの贅沢な空間で多彩な佐賀酒を堪能できる場を提供しました。
しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、SAGA BARは大きな転換期を迎えました。「外出自粛などでお客様が来店できないなら、私たちがお客様のもとへ出向こう」。そんな発想から、SAGA BARがいろいろな場所に出張して佐賀酒を振る舞う「出張SAGA BAR」を積極的に行い、イベント出店型の形態という第2のフェーズに移行したのです。福岡、沖縄、東京、さらにはニューヨークにまで活動の場を広げ、利き酒フェスなどの自主企画イベントも開催し、飛躍的なPR活動が世間の注目の的に。
「出張SAGA BAR」がニューヨークに出店したときの様子。撮影:Hachikin Creative
こだわりのお酒を取りそろえる「住吉酒販」とコラボし、福岡で開催したPOP UPイベントの様子。撮影:菅 祐介
そして、2022年頃から佐賀酒の裾野をさらに広げる取り組みにチャレンジしています。YouTuberや料理人、地元のプロスポーツチーム、人気飲食店とのコラボレーションを次々と行い、新たな層への訴求を図る、現在の第3のフェーズへと突入したのです。
「私たちの目標は、『佐賀県といえば日本酒』と自然に思っていただけるようになること。単なるイメージづくりではなく、佐賀酒の存在を多くの方に知っていただき、実際の消費につなげ、蔵元の皆さんが安定して酒造りを続けられる環境をつくっていきたいです」と、SAGA BARにかける思いを熱く語る梶原さん。
店舗やイベントの枠を超え、佐賀酒と県産品の魅力を発信するブランドとして地位を確立しつつあります。
全国でも珍しい、県主導のお酒に特化したプロモーション企画
県が主体となって地域の特産品をPRするのは、全国各地でもよく行われている取り組み。しかしSAGA BARのように、県主導のもと県産酒のプロモーション企画を展開しながら、お酒に特化したブランドとして育てているケースは全国的にも珍しく、佐賀県ならではのユニークな動きなのだとか。
佐賀の地で育まれてきた酒造りの伝統、蔵元たちの情熱、そして豊かな食文化。そうした佐賀の誇りともいえる魅力を、より多くの人々に伝えるプラットフォーム的な役割を担うのがSAGA BARの特徴なのです。
また、佐賀県はプロジェクトを推進する中でSAGA BARの概念やイメージを確立し、今後も継続して活用できるよう商標登録を行いました。近年、この取り組みにも新たな動きが見られます。これまで県が主体となって進めてきたSAGA BARですが、民間でも佐賀のお酒をPRする手段としてSAGA BARの商標を使用するケースが増えてきているのだとか。2022年に一度閉店した『SAGA BAR』が2023年、民間が運営する『SAGA BAR』としてリニューアルオープンしたのは、その代表的な例です。県が育んできたSAGA BARの理念が地域全体で共有され、佐賀の価値として根付き始めています。
民間事業者が「SAGA BAR」の商標を使用し、JR佐賀駅西側高架下施設に飲食店『SAGA BAR』を開業
東京では人気者とのコラボも! 大きく広がる佐賀酒の魅力
SAGA BARの知名度を高めるきっかけになった取り組みの一つに、東京で行った数々のコラボレーション企画があります。例えば、2022年に実現した『Made in ピエール・エルメ 丸の内』でのPOP UPイベント。世界的パティシエのブランドで佐賀酒とスイーツのペアリングを提案し、翌年は東京・ミッドタウン八重洲の飲食店でのコラボ企画を実施。2024年には、東京・町田の由緒ある邸宅『武相荘』でコラボディナーイベントが開催されました。
そして新たな層への訴求を目指した展開も積極的に行い、キャンプ系動画クリエーター・伊豆のぬし釣りさんや、約129万人(※イベント時点)の登録者を持つ人気料理系YouTuber・だれウマさんとのコラボレーションも多方面で話題に。
『武相荘』で行ったコラボディナーイベント。撮影:林紘輝(扶桑社)
「コラボレーションの目的は、佐賀酒の認知度や魅力発信の”裾野を広げる”こと。佐賀を飛び出し、九州、そして東京を舞台に、錚々たる方々とのコラボレーションが実現したことで、本来なら佐賀のお酒と出会う機会が少なかった層にも、佐賀酒の魅力に触れていただけたと手応えを感じています」と梶原さんは語ります。
「これが日本酒?」若者を魅了する佐賀酒の新しい楽しみ方が話題
SAGA BARの革新的な取り組みは、これまで日本酒との接点があまりなかった若い世代の心もガッチリと掴んでいます。2022年と2024年に開催された「DEAN & DELUCA」福岡店とのコラボレーションイベントでは、センスあふれる空間で味わう佐賀酒と旬の食材のマリアージュに、20〜30代を中心に大きな反響を呼びました。
2024年に開催された「SAGA COCKTAIL BAR~佐賀酒カクテルで乾杯~キャンペーン」も、新しい風を吹き起こしたキャンペーンです。佐賀市内10店舗で佐賀酒をベースにした新感覚の創作カクテルを提供し、アルコール度数を抑えた見た目も華やかなカクテルが日本酒になじみの薄い若者たちの好奇心を刺激したのです。
「普段日本酒を飲まない方には日本酒を飲むきっかけとして、日本酒好きな方には日本酒の新しい飲み方を楽しむ場として、佐賀酒の可能性を広げるキャンペーンになりました」と梶原さん。
第3フェーズでの波及効果は着実に広がり、佐賀酒の魅力に惹かれた飲食店からコラボレーションのラブコールが寄せられるなど、SAGA BARの取り組みは全国に確かな足跡を残しているようです。
さらなる高みを目指すSAGA BARの取り組み。次なる舞台は鹿児島!
佐賀酒の豊かな魅力をより多くの人々に知ってもらうためのSAGA BARの挑戦は、これからも続きます。現在は、熊本県、福岡県での開催に続く第3弾イベント「佐賀酒”体感”空間SAGA BAR in 鹿児島」が開催中です。
もともと本イベントは2024年の『佐賀・鹿児島エールプロジェクト』の一環として実施した、鹿児島県内の飲食店とのコラボ企画がきっかけで生まれたイベント。今回は装いを新たに、規模と内容をさらにバージョンアップさせての開催です。
2月14日(金)から28日(金)までの2週間、鹿児島県内の4店舗がSAGA BAR仕様になり、各店舗が厳選した佐賀酒と佐賀県産食材を使用した特別メニューを提供します。期間中に鹿児島を訪れた際は、ぜひ各店舗へ足を運んで、このとき限りのSAGA BARを堪能してください。そしてこれからも、SAGA BARの革新的な取り組みに注目し続けましょう!
イベント情報
佐賀酒“体感”空間SAGA BAR in 鹿児島
鹿児島県内の4店舗がSAGA BAR仕様になり、各店舗がセレクトした佐賀酒及び佐賀県産食材を使った特別メニューを提供します。
期間:2月14日(金)から2月28日(金)まで
※各店舗の営業時間での開催
実施店舗:
カドニアル(鹿児島県鹿児島市荒田2-42-18)
ニューサカバペンギン(鹿児島県鹿児島市荒田2-75-7 内田ビル2F)
はるちき(鹿児島県鹿児島市千日町9-14 多喜ビル2F)
ペンギン酒店(鹿児島県鹿児島市荒田2-76-8 さくら咲ビル1F)
お問い合わせ:佐賀酒 “体感” 空間 SAGA BAR 事務局
〈(株)ダイスプロジェクト 担当:松井|営業時間:10:00-18:00〉
e-mail:matsui@diceproject.com
TEL:092-403-0086
主催:佐賀県産業労働部 流通・貿易課
HP:https://www.saga-bar.com/frmDefault.aspx
Instagram:@sagabar_official
https://www.instagram.com/sagabar_official/