神戸市西区『洗心庵』里山で味わう本格手打ち蕎麦ともちもちおやき 神戸市
畑や田んぼが広がる、のどかな風景が続く神戸市西区・櫨谷町に『手打ちそば処 神戸 洗心庵』はあります。まるで隠れ家のような佇まいながら、開店からわずか1時間で売り切れてしまうこともある、知る人ぞ知る名店です。
そんな評判を耳にし、打ち立ての蕎麦を味わうべく、お店を訪れてみました。
店内に入ると、まず目を引くのはガラス張りの蕎麦打ち部屋。ここで蕎麦が打たれていることを実感し、料理への期待が高まっていきます。
飲食スペースは、ゆったりとしていて、落ち着いた時間が流れています。
同店で使用している蕎麦粉は、福井県越前市周辺で栽培されている「福井在来種」。この蕎麦を「挽きぐるみ」という手法で、殻をとった蕎麦の実を丸ごと挽いているそうで、香り高い蕎麦が味わえます。
注文後すぐに運ばれてきたのは、蕎麦茶と蕎麦を揚げた物。香ばしく素朴な味わいのかりんとうは、ポリポリと手が止まらなくなる美味しさ。どこか懐かしい風味に、心がほっとします。
和やかなひとときの後、「盛りそば」が登場。艶やかで均一に切られた麺は、まずは目で美味しさを感じさせてくる美しさ。最初は、対馬産の「浜御塩(はまみしお)」を少しだけつけて一口。その瞬間、蕎麦本来の上品な香りと自然な甘みが口いっぱいに広がります。
続いては、つゆと薬味(わさび・ねぎ)で。控えめな濃さのつゆは、しっかりとした出汁の旨味が感じられ、しなやかでコシのある蕎麦との相性も抜群。つるっと喉を通り、気がつけばあっという間に完食です。
なお、冬季には長野県産の「辛味大根」が薬味として選べるとのこと。ピリッとした他にはない辛みが特徴で、蕎麦との相性も抜群なのだとか。冬にはぜひ、そちらも試してみたいと思いました。
さらに「おろしそば(越前風ぶっかけ)」もいただきました。たっぷりの大根おろしと、鰹節が贅沢に盛られた一杯です。鰹の旨味、大根の甘さとほのかな辛味が蕎麦の風味と合わさり絶妙な美味しさ。こちらのつゆは、盛りそば用よりも出汁の比率が高く、よりまろやかな上品な味わい。暑い季節にぴったりの、爽やかな一杯です。
食後には、温かな「そば湯」が提供されます。冷たい蕎麦でひんやりしたお腹に、蕎麦湯のやさしい温もりが染みわたるとともに、蕎麦の香りと甘みが口に広がります。
ちなみに、盛りそば以外を注文された方にも、蕎麦湯は提供されているとのこと。「身体をあたためて帰ってほしい」という店主のあたたかな気遣いが感じられます。
満腹……ですが、関西では珍しい「おやき」をメニューに見つけ、思わず注文。「野沢菜のおやき」をいただきます。もっちりふかふかした生地に包まれた野沢菜は、塩気が控えめで野沢菜本来の味わいがしっかり感じられます。シャキシャキとした食感も楽しく、蕎麦の後でも重たくない一品です。
驚くことに、店主は以前、蕎麦や飲食とは無縁の仕事をされていたそう。以前から習っていた蕎麦打ちを活かし、退職後に蕎麦屋を開業。全国を旅して蕎麦を食べ歩き、研究を重ねてたどり着いた味には、確かなこだわりと工夫が感じられます。
田畑に囲まれ、都会の喧騒から離れた空間で静かに味わう蕎麦とおやき。まるで小旅行をしたかのような、特別な時間を過ごせました。気さくであたたかな店主ご夫婦のお人柄も、この店の魅力のひとつ。
束の間の贅沢なひとときに、お腹も心も大満足。「また訪れたくなる」そんな、とっておきの隠れ家が見つかりました。
場所
手打ちそば処 神戸 洗心庵
(神戸市西区櫨谷町谷口160-1)
営業時間
11:00〜14:00(売り切れ次第営業終了)
定休日
月曜~金曜日
駐車場
有