「こまめどり」と「持ち帰り」でフードロス削減へ
忘年会シーズンですが、ついつい料理をたくさん注文してしまい、食べきれないこともあります。実際、フードロスは深刻で、事業系の食品ロスは、年間236万トン。そのうち4分の1が外食での食べ残し、作りすぎということで、何とかしなくちゃいけない問題です。
残さず食べるとクーポンがもらえる!食べ放題店の「こまめどりプロジェクト」
そうした中、食べ残しを減らすための仕組みを導入している飲食店があります。株式会社すかいらーくホールディングスの岡田 智子さんにお話を伺いました。
株式会社すかいらーくホールディングス・岡田 智子さん
しゃぶしゃぶ食べ放題の「しゃぶ葉」で、「こまめどりプロジェクト」というものをやっております。「こまめどり」というのはですね、「こまめに取っていただく」ということを指してまして、食べ放題なので、いくらでも好きに取って構わないんですけれども、どうしても目の前にたくさんの食材が並んでると、つい興奮してしまって、たくさん取ってしまうっていう。
そのあたりを食べきれる量を調整しながら、お腹にも地球にも優しい食べ方を推奨しますというようなプロジェクトになっております。
具体的には、ご来店されたお客様に、綺麗に食べたテーブルの写真を撮っていただいて、それをスタッフに見せていただくと「綺麗に食べていただいてありがとうございます」ということで、次回から使えるクーポン券をお渡しするというような形になっております。
しゃぶしゃぶ食べ放題のチェーン「しゃぶ葉」では、ことし4月から全店で、「こまめどりプロジェクト」をスタート。食べ放題だと注文しすぎてしまうことも多いですが、少しずつ、こまめに取ってもらうことで、食べ残しをなくそうという取り組みです。
きれいに食べ終わったテーブルの写真を撮影して、お会計の際に店員さんに見せると、次回使える割引券がもらえます(ドリンクバーが299円→110円になる割引券)。
「残すと罰金」というよなペナルティを設けている飲食店もありますが、しゃぶ葉では「褒めて伸ばす」スタイル。一部の店舗では、平均「10%」の食べ残しが削減できたという成果も出ているようです。
ホテル業界初!ビュッフェ料理の「お持ち帰り」
そうした中で、余った食材の「持ち帰り」を推奨する動きも広がりつつあります。やはりこの時期、宴会が多い「ホテルメトロポリタンエドモント」の総支配人、松田 秀明さんに伺いました。
「ホテルメトロポリタンエドモント」総支配人 松田 秀明さん
ビュッフェでありますと、20~30種類ぐらいお料理が出る場合があります。ほとんどですね、お料理を召し上がらないでですね、お開きになってしまうというケースがかなり見受けられますので、そういう場合に、一部の商品をお料理をお持ち帰りいただくという仕組みをとっております。
対象商品は、例えば唐揚げとかポテトとかですね、クッキーとか、十分に加熱したものであるとかですね、お持ち帰りいただいて食中毒等のリスクがないようなお料理を選んでご提供しているということになります。
おそらくホテル業界では初めての取り組みということで、保健所等とも相談をして、ご了解いただいた上で、踏み切ったということになります。
こちらのホテルでは、2年ほど前から、「持ち帰り」の専用ボックスを無料で配布し、持ち帰りOKにしています。ただし、基本は「自己責任」とした上で、例えば、
1.75度で、1分以上加熱したものを、持ち帰りメニューの対象に選んでいること
2.夏場は原則、持ち帰り禁止
など、独自のルールを設けて慎重に運用しています。(ちなみにこの取り組みは「mottECO(モッテコ)という名前で、環境省の食品ロス削減対策導入モデル事業」に採択された事業で、産・官・学連携の21団体で展開されているそうです)
「持ち帰り」ガイドラインを国が作成中
この2年で、グループ全体で合計「960回」の持ち帰りがあって、およそ240キロの食品ロスを減らせたとのことで、松田さんも「ある程度の成果がでている」と話していました。
ただ、持ち帰りには衛生面でのリスクも伴うということで、ホテル側も注意喚起を徹底しているようです。再び、ホテルメトロポリタンエドモントの松田さんに聞きました。
「ホテルメトロポリタンエドモント」総支配人 松田 秀明さん
ここが実は非常に大事な点なんですけれども、ただ容器だけをお渡ししてるわけじゃなくて、お持ち帰りの際の注意点というチラシをですね、必ずセットでお渡ししております。
そのチラシの中には、「お客様の責任でお持ち帰りください」とか「できるだけ早くお召し上がりください」というような注意点が記載をされております。
ただ、この取り組みがですね、まだなかなか普及してないのは、やはり「食中毒」の懸念がありますので、国が、「これをクリアした商品がOK、これをクリアしないとお持ち帰りいただけません」というガイドラインの作成検討会を立ち上げて、大きなスケジュール感としては次年度からですね運用開始というふうには聞いております。
<お客さんに配布しているチラシ「お持ち帰りの際の注意点」>
<チラシには、様々な注意事項が記載されています>
ホテルメトロポリタンエドモントでは、持ち帰りを推奨してから食中毒などは発生していないそうです。
現在、国では「持ち帰り」のガイドラインを作成中。具体的には、「容器はお店が提供して、移し替えはお客さん自身で行うこと」、「十分に加熱されたもの」、「常温で保存が可能なもの」、「水分量が少ないもの」といった、細かい条件が検討されています。
「持ち帰り」自体に二の足を踏む飲食店やホテルはまだまだ多いものの、来年度以降にガイドラインが整ったあとは、「持ち帰り」の取り組みが広がる可能性があります。
たしかにフードロスは大きな課題ですが、衛生面でトラブルが起きてからでは手遅れになります。宴会が増える季節、まずは食べきれる量を注文することを心掛けたいものです。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)