10年後は通用しなくなる? 自動化・AI化の社会で求められる3つのスキル【専門家が解説】
皆さんは、今の仕事あるいは自身の能力があとどのくらい通用するんだろう、と不安になることはありませんか? ロボットや自動ツール、生成AIなどのテクノロジーが発達し、便利になっていると感じる一方で、新しいツールや手法を学んで使いこなせるようになっていかなければ時代に置いていかれてしまう、そんな不安を感じている人も少なくないのではないでしょうか。
今回は「変化に対応していく」と言う観点から、これからの未来にどのようにキャリアを築いていくべきかを、専門家のアドバイスをもとに解説していきます。変化を恐れるのではなく、変化をチャンスと捉えモノにするキャリアデザインのヒントを見つけましょう。
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キャリア・コンサルタント
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。
企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生・保育園児の2児の母。
•これからの時代は3つのポータブルスキルを高めることが重要
•これからの時代に活躍するために未来の自分をイメージしよう
•ポータブルスキルを生かした「人にしかできない」3つの仕事
•「ITリテラシー」を高めてAIを束ね、育成する
•「ヒューマンスキル」を高めて人と向き合い、心に触れる
•「論理的思考力」を高めて新たなアイデアを生み出す
•まとめ:変化を恐れず未来のキャリアを切り拓こう
これからの時代は3つのポータブルスキルを高めることが重要
マイナビ転職『2023年新入社員の意識調査』(※)によると、「今の仕事は何年後まであると思う?」という問いに「20年以上」と答えた人は約4割にとどまりました。つまり、半数以上の方が、今の仕事がいずれなくなるかもしれないという危機感を抱いているということです。
そのような現状を踏まえて、長く通用する人材であるために、どうすればいいのか。今回もキャリアコンサルタントの林碧先生にお話を伺いました。
林さん:今回は変化の大きい現代において、どんな変化があっても活躍できる人材でいるためにはどうしたらいいのか?という相談です。AIツールの一般化も進むなかで「この仕事が自動化されたら…」と不安になっている人は増えているように感じます。先に結論をお伝えすると、この先の時代での活躍には「ITリテラシー」「ヒューマンスキル」「論理的思考力」の3つが重要な鍵となっていきます。これらはすべてポータブルスキル、つまり、汎用的なスキルの一種です。
各業界で必要となる専門的知識やその職種ならではの技能は、これらのポータブルスキルをベースに発揮されます。変化の大きい時代では、それぞれの仕事に特化したスキルだけではなく、その土台にあるポータブルスキルをどれだけ高められるかも意識しておきたいところ。
ポータブルスキルのレベルが高まると、専門的スキルの活用幅も広がり、業界内でも評価されやすくなりますし、もしまったく異なる仕事を担うことになった場合でも土台として機能し続けるため、今後の活躍の礎になります。
これからの時代に活躍するために未来の自分をイメージしよう
林さん:それでは、実際にどんな仕事が無くなっていくのでしょうか?
今後は、コンピュータが得意とする単純化しやすい作業、あるいは人が処理するのが難しい膨大な情報を扱うような仕事から機械に置き換えられていくと想定されています。これは別に嘆かわしいことではなく、むしろ人材不足が叫ばれる現代では、組織にとってはありがたいことです。作業の一部をコンピュータに託すことができるということは、その分「人は人のやるべきこと、人にしかできないことに、集中できるようになる」ということなのです。
では「人にしかできない仕事」とは、どんな仕事でしょう。いくつか種類はありますが、そのなかで「自分はどういう仕事をしたいのか」「何を担うことになりそうか」を考えるのが、今後活躍していく人になるためには重要です。
目指す姿のイメージがあれば、自分が何を大切に行動選択していくべきなのか、どんな力を高める努力をすると良いのかが明確になります。
ポータブルスキルを生かした「人にしかできない」3つの仕事
林さん:それでは、今回は人にしかできない仕事として3つの可能性を提示します。
「ITリテラシー」を高めてAIを束ね、育成する
林さん:1つめは、AIに仕事を指示する、AIの仕事の質を最大化する仕事です。イメージとしては、AIという部下を束ね、育成する上司としての役割を担う働き方です。
AIは万能ではなく、使用者の指示や活用方法によって成果が大きく変わるツールです。現在の段階でのAIは、言うなれば「期待の新人」。上手に指揮命令し、育成し、マネジメントする上司がいる環境とそうでない環境とでは、パフォーマンスが大きく変わります。そして機械化が進むなかでAIを束ねる上司役は、今後かなりの人数が必要となることでしょう。
これらを踏まえたとき、AIについて理解が深く、的確な指揮命令を出してマネジメントできる存在は、今後、引く手あまたになることが予見できます。そして、AIの上司としての経験年数が長い存在は現在の市場に存在せず、多くの人が今から学ぶという段階であるため、誰にでもチャンスがあります。
「今までやっていた仕事が機械に置き換わる可能性を感じる」という人こそ、「ITリテラシー」を高めながら動くべきだと思います。その行動が、今の仕事で重宝される未来を生み出すかもしれません。
「ヒューマンスキル」を高めて人と向き合い、心に触れる
林さん:2つめはAIが苦手とする分野の仕事をする、という方法。
AIは機械であるがゆえ、複雑でパターン化が難しい「人の感情の機微を拾う」ことは苦手です。また、「機械と人との心理的な距離」という課題も存在します。そのため当面は、人の感情のケアが重視されるような仕事は、機械に奪われることはないといわれています(例えば、医師よりも看護師の方が機械に変わられないと言われたりしています)。
感情労働という心の機微を扱うような仕事、人と向き合い、感情の機微を拾うことが重要な意味を持つ仕事は、「人にしかできない仕事」の1つかもしれません。とはいえ、ある程度はAIでも分析できることを踏まえると、より深く人の心に触れられることが、人である強みといえるでしょう。
その強みを生かすには、相当の「ヒューマンスキル」を持つことが不可欠です。これらの仕事で生き残ろうと思うのであれば、より一層のスキルアップ意識が重要になります。
「論理的思考力」を高めて新たなアイデアを生み出す
林さん:3つめはビッグデータ解析やAIの成果物を踏まえ、次の方向性を考えたり決定したりする仕事。これまでは手元作業に追われ着手できなかった部分について、より丁寧に思考し、試すことが可能な時代になっています。
この期待値は社会的にも高いですし、高いレイヤーでこの役割を担える人の市場価値も、非常に高いです。また、これまで思考作業があまり求められなかった人たちにも、今後は思考を要する仕事が割り振られるようになっていきます。この点から、「論理的思考力」について高めていくことは、現代人には必要不可欠かもしれません。
まとめ:変化を恐れず未来のキャリアを切り拓こう
さて、ここまで読んでみていかがでしょう。皆さんの仕事の周辺にある「人にしかできない仕事」はどんな仕事だと思いますか?あるいは今後活躍していくことを見据えたとき、どんなことができる人材になりたいですか?変化というのはチャンスの表れでもあります。
現時点の状況を不安に感じられている方は、変化を捉える力が高い方です。その不安を活力に変え、他の人より早くスキルアップ等の行動に移ることが、今後の人生の成功に繋がることでしょう。
文・ミーツキャリア編集部
【出典】
※ マイナビ転職『2023年新入社員の意識調査』( https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/15/ )