水路のある町「因幡街道大原宿」まちあるき(美作市)
因幡から播磨へ。かつて宿場町として栄えた「因幡街道大原宿」は本陣・脇本陣、火返しになまこ壁、ちょっと愉快な飾り瓦など、重厚でオリジナリティーあふれる魅力がつまっていますよ。レトロさいっぱい。旅情あふれる町並みを、清流吉野川を、ゆっくりと歩いてめぐってみませんか? 芝桜うつくしい智頭急行大原駅から出発です。
芝桜かがやく大原駅(智頭急行)
大原宿の最寄り駅・大原駅には智頭急行の車両基地があります。ホームのうえから車両たちをしげしげとながめたら、高架下のトンネルのむこうに見えてきました。斜面をうめつくすシバザクラ。なにくわぬ顔で停車している保線用車両マルチプルタイタンパー(マルタイ)と相まって、のっけから秘境駅のような風景に出会えました。
【智頭急行大原駅】
所在地:岡山県美作市古町1494-7
旧因幡街道大原宿
智頭急行大原駅から歩いて10分とかからず、大原宿エリア(古町保存地区)へ着きました。CGのような山並みと町並み。昭和や大正時代のレトロさと宿場町の風情がふしぎと融合しています。「はいはい宿場町ね」なんてやすやすと言わせない。この町に漂うオリジナリティーはどこからくるのだろう。
木羽葺みごとな本陣
電柱のないきれいな石畳の道をすすむと、白く長い漆喰の壁があらわれました。参勤交代で要人が滞在した「大原本陣」です。数寄屋造りの御殿に御成門。みごとな木羽葺(こばぶき)の屋根。寺社のような厳かさを感じさせます。きらびやかでも豪奢でもない。どっしりとした格式あるたたずまいです。
脇本陣も残っています
本陣のすぐそばにはしっかりと脇本陣もありました。どちらも現存している宿場町は全国でも数少ないんだとか。遺跡のような味わい深い長屋門。内部の見学こそできませんが、通りの中ほどにある「大原宿ふれあい広場」にも立ちよってみましょう。長屋門に水琴窟。ちいさな池にはニシキゴイ。大名目線で、ひとやすみ。
めでたい瓦飾り
見ごたえある建築物の数々に、ついきょろきょろとしてしまいますが。ちょっと立ち止まって、見上げてごらん屋根の上を。宝物のつまった袋やダブル鯛。思わずくすりと笑いそうになる飾り瓦に出会えます。魔除け火除け。五穀豊穣。古の人々の遊びごごろ。込められた思い。ぐっとくるものがありますよ。
明治時代創業の「田中酒造場」
軒先に杉玉がぶらさがる建物は1885年創業の「田中酒造場」です。なまこ壁に虫籠窓(むしこまど)。まるで燻されたような薫るような柱や木戸。ひとつひとつの造作に大原の歴史や風土もつまっています。
【田中酒造場】
所在地:岡山県美作市古町1655
TEL:0868-78-2052
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休
目をうばわれる自由な意匠
左にはピンク色の擬洋風建築。右には和風建築。なんて自由で上質なつくりなんでしょう。保存状態も良く、目をうばわれるような意匠の建築群。「こんな宝物のような町がまだ岡山にはのこっているんだ」。なんだか誇らしい気分になってきました。
古民家をリノベーションした「難波邸」
「この町並みにもっとゆっくり浸りたい」。そんな気持ちがむくむくと湧いてきたところで、商家をリノベーションしたという古民家施設「難波邸」が現れました。一棟貸しの宿であり、コワーキングスペースでもあります。オレンジががった屋根瓦やくすんだ漆喰の壁。築100年の趣にしばしうっとり。
【難波邸】
所在地:岡山県美作市古町1621
TEL:0868-75-3158
三界萬霊の碑
さんぽ中の犬と、黒猫が渡る小さな橋のたもと。おじぞうさんの傍らには三界萬霊の碑がありました。「この世のものすべてに宿る、過去現在未来の三界を流転する霊」を供養するための石碑なんだとか。西の津山か、北の播磨ひらふく(平福)か。道しるべも立つ分かれ道。現世でもいぬねこにんげん、3種の命が行き交う往来の要所です。
清流 吉野川
街道のすぐうらには吉野川が。大原宿の通りに流れていた水路がきれいなはずです。清き水あるところに繁栄あり。山陽と山陰をつなぐ旧因幡街道。そして岡山、鳥取、兵庫。3つの土地の文化が時をかけて行き交って。今のこの大原宿の町並みがあるんだな。
傾斜がすぎる「三九郎稲荷神社」
吉野川に沿うようにぶらぶらと歩いていると、山裾にそそりたつ赤鳥居。狛きつねさまもびっくりの「三九郎稲荷神社」です。田畑のあぜ道。ダイコンの白い花。まあるく積まれた稲藁のまわりを飛び交うカワラヒワ。豊かな光景に、ついのんびりし過ぎてしまいました。さあ大原駅へもどりましょう。
【旧因幡街道大原宿】
所在地:岡山県美作市古町
周辺のおすすめ
智頭急行にのって大原、平福、智頭と因幡街道三宿場めぐりもよし。宮本武蔵駅で下車して武蔵ゆかりの地めぐりもよし。平福駅(兵庫県)にも、武蔵ゆかりの地・初決闘の場があります。道の駅や山城。佐用川沿いの土蔵群(写真)なども。道はつづくよどこまでも。大原宿とあわせてどうぞよい旅を。