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「氷下魚(コマイ)」が氷の下でも凍らない理由 実は冬以外にも釣ることが可能

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氷下魚はなんと読む?(提供:川辺真理子)

初見で読める人は少ないであろう魚「氷下魚」。皆さんは読めましたか?氷下魚は小ぶりで食べやすく、お酒のつまみに最適。北海道では釣り人にも人気の魚です。そんな氷下魚には、その名前からも納得の興味深い特徴があるのです。

(アイキャッチ画像提供:川辺真理子)

氷下魚はどんな魚?

氷下魚(コマイ)はタラ目タラ科の魚で、マダラなどに比べて小さな魚という意味から付けられたとも言われています。体長は25cmくらいまでをコマイと呼びますが、それ以上の大きさになると「オオマイ」と呼ばれます。

コマイ(撮影:川辺真理子)

北海道は東部に多く生息し、地元のスーパーではコマイもオオマイも鮮魚として販売しています。1尾100~200円程度で安価です。

氷の下でも生きられる理由

氷下魚はその名の通り、氷点下でも生きられるのが特徴です。

通常わたしたちが冷凍庫で氷を作るとき、0℃以下で水は氷になります。しかし海水は塩分を含むため、凝固点は-1.8℃となります。つまり、-1.8℃より冷たくなると凍ってしまいます。

人間が凍傷・凍死を起こすように、魚も氷点下のもとでは凍結による細胞破壊が起こり、生存できません。

しかしながら、氷下魚はそんな環境でも生きることができます。それは、血液中に凍結を防ぐ「不凍物質」を持っているためです。氷下魚に限らず、恒常的に氷点下の環境となる北極・南極域に生息する魚類も同様にこの不凍物質を持っています。

この不凍物質は、鮮度維持や遺伝子工学技術の面でも注目されています。今後この性質を活用した新たな取り組みや成果が出てくるかもしれません。

冬以外でも釣れる

名前に「氷」の字が入っていることもあり、冬にしか出会えない魚かと思いきや、実は氷下魚は春先でもお目にかかることができるのです。

5月~6月に岸壁から釣ることができます。エサはイソメなどのゴカイ類や疑似餌を用います。仕掛けを投げ込んでから、少しずつ巻き取るようにリールを動かして釣るのが最適です。

コマイはワームでも釣れる(撮影:川辺真理子)

群れで行動するためか、釣りと氷下魚の遊泳の時間帯とスポットが合えば、入れ食い状態になることも多いのが嬉しいポイントです。

初心者向きのターゲット

「釣りが初めて」という人と行くと、条件が合えばたくさん釣れるので喜んでもらえます。針にかかってからも逃しにくい魚なので、釣り初心者の練習としても最適でしょう。

コマイは釣りの対象としても好適(撮影:川辺真理子)

釣れた氷下魚の処理方法

釣れて持ち帰った氷下魚は、体を包丁で逆さになでるようにして鱗をとり(鱗はほとんどありませんが)、頭と内臓を落とし、特に血合いの部分を念入りに全体を洗います。

水をふき取り塩を全体にまぶしたら、ネットに入れて1~2日外で干します。概ね乾いたら、あとは焼くだけ。しっかり焼けば骨まで食べられ、栄養満点です。

コマイの切り身(撮影:川辺真理子)

カチカチに干して作られた珍味も絶品。1匹が手のひらサイズで食べやすい大きさなので、つい手が伸びてしまいます。鮮魚としても安価でしたが、珍味としても6本ほど入った袋でも300円程度と安価です。

どんな魚も釣りたては新鮮で美味しいです。春先に北海道東部で釣りをする機会があれば、是非海に糸を垂らしてみてはいかがでしょうか。

参考文献

上田 吉幸、前田 圭司、 嶋田 宏、 鷹見 達也(2003)、新 北のさかなたち、北海道新聞社
山本保彦、(1997)、現代おさかな事典 漁場から食卓まで、株式会社エヌ・ティー・エス
一般社団法人 日本魚類学会(2018)、魚類額の百科事典、丸善出版株式会社

<川辺真理子/サカナトライター>

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