【来て、見て、能登】『能登ワイン』で感じてみよう、風土がくれた恵みを
2024年元日に北陸地方で突如発生した能登半島地震。特に被害の大きかった能登に同年9月21日、今度は観測史上最大の豪雨が襲った。これらの災害で、町もそこにある暮らしも、以前と同じではなくなった。しかし能登にはいま、地域を前へと動かし続ける人たちがいる。彼らの力で少しずつ復旧、復興が進んでいる。自分の目で、足で、能登のいまを知る旅に出かけよう。『旅の手帖』2025年3月号から、『能登ワイン』のいまをお届けします。
ワインで感じてみよう、能登の風土がくれた恵みを
ワイナリーの周りには、ヨーロッパの田舎のようなブドウ畑が広がり、ここが能登であることを忘れてしまいそうになる。
能登の気候風土が育んだブドウから造られる『能登ワイン』のワインは、香り豊かで日本人に親しみやすい味わい。土壌改良には穴水特産のカキの殻を使用し、殻から出る海のミネラル分がブドウを元気にしているのも特徴だ。
「19年前からワインを始めましたが最初の頃はまったく売れず、能登でワインを造っていると言っても信じてもらえませんでした」と、『能登ワイン』で営業を担当する丸山敦史さん。何年か経ってワインコンクールで入賞できるようになり、少しずつその名前が知られるようになった。
「ここに来て、能登のテロワールを感じてもらうのが一番」と、ワイナリー見学も試飲も無料で提供している。試飲は常時8種類前後を用意し、制限なく試すことができるという大盤振る舞いだ。
2024年の元日の地震では、建物には大きな被害はなかったものの、館内はめちゃくちゃとなり、タンクの一つからは瓶に換算すると1万5000本分ものワインが流失してしまった。幸い、社員や家族に人的な被害はなかったものの、自宅が全壊した人もいて、多くが避難所から通い、片づけを始めた。
「オンラインショップでの注文がすごい数になっていて、落ち込んだり、悩んだりしている場合ではないと、とにかくこれにこたえねばという思いで走り始めました」
2月下旬に断水していた水道が仮復旧して製造を再開し、4月30日には客の受け入れも再開できた。
「能登は復興の道半ばですけど、その過程も見ていただきたいです。私たちは観光バスが走っているのを見ると、能登に思いを寄せてくださっている人がいることにうれしくなり、気持ちも前に向きます」
『能登ワイン』には、収穫体験とワイン5本が届く「ぶどうの木オーナー」制度(一口1万円)がある。秋には、自分のブドウを収穫しに能登へ出かけてみる、というのはいかがだろうか。
『能登ワイン』
☎0768-58-1577
9:00〜17:00(12〜2月は〜16:00)、ワイナリー見学は11:00〜・14:00〜の一日2回(要予約)、無休。ワイナリー見学・試飲ともに無料
石川県穴水町旭ケ丘り5-1
https://notowine.com/
取材・文・撮影=若井 憲