火山島ってどんどん大きくなるの? #もやもや解決ゼミ
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今回の疑問は「火山島ってどんどん大きくなるの?」です。
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例えば、東京の南約1,000キロメートルにある「西之島」は、2013年11月に新たな噴火口が出現、マグマが噴出して(旧西之島と)一体となり、面積が拡大しました。
↑西之島が約10倍になったと報道するYouTube『日テレNEWS』チャンネル。
大手メディアでも「10年たって今では面積が約10倍に!」といった報道がされました。SNS上では「日本の領土が広くなった」という無邪気な投稿が散見されます。
では、この火山島というのはどんどん大きくなるものなのでしょうか。
『国立研究開発法人海洋研究開発機構』(JAMSTEC)の田村芳彦博士に回答いただきました。田村先生は海底火山の研究者でいらっしゃいます。
火山島は地下からマグマが噴出し、マグマが溶岩として固まって、大きくなっていきます。マグマは地下のマントルという岩石が溶けてできます。
地下には無限にマグマがあるわけではなく、火山の下のマントルが何らかの理由で溶けてマグマができるわけです。
この部分をマグマの源となるマントルと呼びます。マグマの源となるマントルは数十万年くらいでマグマを出し切ると考えられています。
マグマの源が尽きると火山の活動が終わるわけです。また、ハワイのようにプレートが移動してしまうと、火山島の位置がずれていくので、ある程度以上の大きさにはなりません。
【図解】海面下に沈んでしまったウエストロタ火山島(田村芳彦博士提供)火山島が大きくなるメカニズムとは?
火山島が大きくなるのは、地下のマグマの源から次々とマグマが上昇してくるからです。
一方、マグマは大きな熱を持っていますから、その熱で火山の地下の岩石(地殻)を溶かすことがあります。
この場合、火山は大爆発を起こして、カルデラという陥没地形を形成して、火山島は消滅します。
↑海面下に沈んでしまったウエストロタ火山島。現在では島ではありません。/田村芳彦博士より提供いただきました。
海底カルデラの断面に関しては拙著『大陸の誕生』に幾つか例があります。ウエストロタという火山はかつては西之島のような火山島でしたが、カルデラを造って消滅しました。
水面下には巨大な山体がある!
断面図で見ると島は海底火山の山頂の一部で、海面下には巨大な山体が存在します。 模式図などでは、ずいぶん頼りなく見えるかもしれませんが、火山島が海面下でぽきりと折れるようなことはありません。
↑西之島と伊豆大島の断面図の比較/田村芳彦博士より提供いただきました。
火山島は世界中でできている!
日本と同様に、プレートの沈み込み帯では、世界のあちこちで、日本と同様に火山島ができています。ニュージーランドの北にあるトンガ・ケルマディックの火山島などは代表的なものです。
◇けつろん!
火山島は世界のあちこちでできていますが、ある程度以上の大きさにはならないのだそうです。ですから、どんどん大きくなる一方ということはありません。
また、せっかくできても海面下に沈んでしまうものもあり、ずっと島であり続けるというわけでもないのです。西之島についても「領土が増えたー」と喜んでばかりもいられません。島ではなくなっちゃうかもしれませんから、よく観察しておかないといけませんね。
一方、火山島の地下では大陸の材料(安山岩)を造っています。長い時間をかけてプレートの移動により安山岩が集まって大陸になっていきます。このあたりの説明は田村先生の著書『大陸の誕生』を参照してください。
◇おしえてくれたせんせい
田村芳彦 Profile
『国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTEC』海域地震火山部門 上席研究員シニア。博士(理学)。
1961年 石川県生まれ。1986年 東京大学理学部地学科卒業。1991年 東京大学大学院理学系研究科地質学専攻博士課程修了。1995年~1997年 中核的研究機関研究員(岡山大学固体地球研究センター)。1997年~2000年 金沢大学理学部 助手。2001年よりJAMSTECに勤務。2023年日本地質学会Island Arc Awardを受賞。著書に『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』がある。
https://www.jamstec.go.jp/rimg/j/members/tamura/
取材協力:『国立研究開発法人海洋研究開発機構』
https://www.jamstec.go.jp/j/
文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部
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