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ピアニスト伊藤 恵が恒例の『春をはこぶコンサート』を開催 公演への思いを語ったコメントも公開

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伊藤恵

2025年4月29日(火・祝)日本製鉄紀尾井ホールにて、ピアニストの伊藤 恵が毎年恒例となった、『春をはこぶコンサート』を開催する。公演タイトルは『春をはこぶコンサート ふたたび「ベートーヴェンの作品を中心に」Vol.6』。

本公演で現在のベートーヴェンを中心にしたシリーズを開始してからは6回目となり、今回はこの作曲家のピアノ・ソナタ第1番や「幻想曲」を弾くとともに、ベルクやシューベルトのソナタを取り上げる。

今回のコンサートの中心を貫くのは「ファンタジー」。そのことについて思索をめぐらす伊藤よりメッセージが届いたので紹介する。どんなコンサートになるのか、期待しよう。

伊藤 恵(ピアニスト) コメント

伊藤恵

私はベートーヴェンのことを言う時、どうしても「先生」と呼びたくなります。
そのベートーヴェン先生の第1番のソナタを演奏する時、その後の偉大な業績——9曲の交響曲(特に「第九」!)、素晴らしい16曲の弦楽四重奏曲、そして32曲ものピアノ・ソナタを書いた彼を知っているからこそ、そして、苦難が待ち受けている人生を知っているからこそ、余計に感慨深くその原点となるソナタが愛おしく、心から尊敬の気持ちを込めて演奏したいと願うのです。

今回弾く「幻想曲(ファンタジー)」という作品のことのみならず、演奏には常に“ファンタジー”が必要です。では、どこから「ファンタズィーレン(ドイツ語で想像の意)」するのか。これが難しい。そのインスピレーションをどこから得るのか、常に試行錯誤です。最近ベートーヴェンに関する本を3冊手に取りました。ハインリヒ・シェンカーの「第九」研究、ロマン・ロランのベートーヴェン研究、そしてヨアヒム・カイザーのベートーヴェンのピアノ・ソナタと演奏家についての著作です。面白いことですが、この3作にはともに、なんらかのシェイクスピア作品が出てくるのです。言葉、台詞の使い方とフレーズの使い方、亡霊を登場させる手法と作曲手法の類似点など、ベートーヴェンとシェイクスピアに共通点を見出そうとする。もちろんベートーヴェン先生はシェイクスピアを読んでいます。熟知していらっしゃいます。こうなると私もシェイクスピアの、まずは『ハムレット』から読み直さなければと思い至るのです。映画化された『ハムレット』は好きで、音楽はウォルトン、主演はローレンス・オリヴィエのものをよく観ていましたが、ソ連映画の『ハムレット』は音楽がショスタコーヴィチ。この音楽が凄まじく、暗澹たる地獄に引き摺り込まれます。
こうして本や映画を見、音楽を聴き、桜の下を散歩して、音楽とはなんぞやと考える。何か遠い手の届かない美しい世界のことを考える。そして、なぜ彼はこの音を書いたのかと想いを寄せる。憧れつつ夢見る。いつかそこに自己のファンタジーと作曲家のファンタジーが奇跡的に繋がることがあれば、夢のよう。これこそ叶わないファンタジーかもしれません。

ところで先日、久しぶりにアンドラーシュ・シフさんが、J.S.バッハのピアノ協奏曲6曲を弾き振りする演奏会を拝聴しました。それは無私無欲の悟りの境地、天上に響く音楽でした。
シューベルトの音楽も、諦念から生まれた天上の音楽。彼自身、どんなに孤独や死というものから逃れられない人生を送っていても、美しい花を見る時、その瞬間に全ての苦悩を忘れ、美しい花への共感のみがあるような無私無欲となる。「瞬間」イコール「永遠」こそが果てしなく広がる「ファンタジー」だと感じます。

ベルクのソナタについて言えば、苦悩や悲しみが起きるかもしれないと、恐れ慄く予言のファンタジーかもしれません。

このプログラムは、どの曲から始めてどの曲で終わっても成り立つ、少し実験的な側面もあります。いずれにせよ、真心を込めて、感動と尊敬と感謝を込めて演奏させて頂きます。

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