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全国巡回展が再び東京へ、光に満ちた睡蓮の間は東京富士美術館だけ(読者レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

第1回印象派展から150年、印象派はフランスから海を越えアメリカへと伝わりました。アメリカのウスター美術館が所蔵する作品を通して印象派の広がりや受容、拡張を追う展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が、全国4会場で巡回しています。


東京富士美術館入口


3会場目は東京富士美術館、こちらの会場ならではの展示方法や照明、おすすめ作品を伺いました。

入口のゆらめく光に満ちた睡蓮の間は東京富士美術館だけの展示です。床、壁面、天井の中心部に身を置くとモネが見ていた光の世界を体験しているようです。


会場入口 フォトスポット 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


章ごとにテーマカラー

5章構成の壁はテーマカラーでまとめられています。 1章:伝統への挑戦 印象派以前のバルビゾン派中心の展示。バルビゾンの自然からイメージされる深い緑が背景です。


会場風景 1章:伝統への挑戦 2章:パリと印象派の画家たち 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


2章:パリと印象派の画家たち 印象派の明るさをイメージさせるピンクが選ばれました。隣り合う章はメリハリがでる色でコントラストをつけています。

3章:国際的な広がり 日本やアメリカへと海を渡った様子をブルーで表現。遥か遠くへ広がる距離感も感じます。


会場風景 3章:国際的な広がり 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


4章:アメリカの印象派 アメリカの大地を想起させる色です。


会場風景 4章:アメリカの印象派 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


5章:まだ見ぬ景色を求めて 印象派の新たな展開に白を選びました。


会場風景 5章:まだ見ぬ景色を求めて 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


注目作品に背景パネル

各章の壁面カラーに加え、作品の背景に設置されたカラーパネルは「注目!」のサイン。

《コロンバス大通り、雨の日》は担当学芸員のお気に入り作品。雨水のたまった路面を反射する光は暗い画面に明るさを加えています。カイユボットの《パリの通り、雨》を想起させると言います。


チャイルド・ハッサム《コロンバス大通り、雨の日》1885年 ウスター美術館


シニャックは点を網膜上で混合する新技法を試みました。5章は印象派が切り開いた新たな世界を意図して白の壁にし、象徴的な作品に白の背景パネルを準備していました。届いた作品の額装も白。イメージの合致を感じたそうです。


(手前)ポール・シニャック《ゴルフ・ジュアン》1896年 ウスター美術館 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


今回ポスターの2作品には特設ステージを設けました。2作品を並べて鑑賞できるのはこの会場ならではです。


(左)チャイルド・ハッサム《花摘み、フランス式庭園にて》1888年 ウスター美術館(右)クロード・モネ《睡蓮》1908年 ウスター美術館 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


チャイルド・ハッサムは、パリで学び印象派の影響を直接受け技法を応用し独自の様式を形成。アメリカに印象派をもたらし発展させた画家。印象派を生んだモネの代表作《睡蓮》と同じポジションで比較ができるベストスポットです。離れて鑑賞できるよう距離もとられています。


照明の違い

前半の1・2章の照明は暖色系、3章からは寒色系が使われています。この作品は近づくと屋根や木々、草に透明な水滴のようなものが確認できます。寒色系の照明が、クリアでメリハリを感じさせシャープな印象を引き出しています。

また、ウスター美術館初来日の《睡蓮》 照明は暖色系と寒色系の光で演出されています。モネが表現しようとした幻想的な色彩を間近にまた遠く離れて感じてみましょう。


クロード・モネ《睡蓮》1908年 ウスター美術館


赤茶けた岩肌のグランドキャニオン。アメリカ独自に展開した印象派の光で浮かび上ります。展示場所は外光が反対側からも注いでいました。アメリカ開拓の地は、日本でまた新たな光を浴び輝きます。印象派の絵画は今も世界を旅しながら変容しています。


(左)デウィット・パーシャル《ハーミット・クリーク・キャニオン》1910-16年 ウスター美術館 「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京富士美術館、2024年


[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2024年7月5日 ]


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