【10/20(日)開催】素隠居体験 ~ 倉敷で300年以上続く伝統行事!素隠居になって人々に幸せを振りまく特別な1日
美観地区をはじめ、倉敷中心地を見守り続けている阿智神社は、季節ごとにさまざまな祭典を開催しています。
そのなかでも、毎年10月におこなわれる「秋季例大祭」では、大規模なお神輿(みこし)の行列を見られるそうです。
さらに秋季例大祭に欠かせない存在なのが素隠居(すいんきょ)。
素隠居は、おじいさん・おばあさんに扮したお面をかぶっており、赤いうちわで街ゆく人々の頭を叩いてくるひときわ目立つ存在です。素隠居に頭を叩かれると、賢くなったり、良いことが起きたり、幸せになるような出来事が訪れるといわれています。
2024年の秋季例大祭では、素隠居になれる体験イベントが開催されるそうです。
この機会にしか楽しめない、貴重な素隠居体験について紹介します。
「素隠居体験」とは
素隠居体験は、2024年10月20日(日)におこなわれる阿智神社の秋季例大祭に合わせて開催されます。
素隠居は、「じじ」と「ばば」のお面を身につけており、お祭り当日になると赤いうちわを持って街中を歩いています。すれ違う人々の頭を赤いうちわで優しく叩き、幸せを振りまいてくれる存在です。
今回の「素隠居体験」では、まず倉敷素隠居保存会のかたから、素隠居が生まれた歴史や文化を学びます。その後、素隠居の動作を習い、衣装とお面を身につけて素隠居に変身したら美観地区へ。
幸せを願い、街ゆく人々をうちわで叩く体験は、この機会にしか味わえない貴重なものです。
参加費は3,500円(税込)で、海外のかたはオプションで通訳同行も可能です。当日のスケジュールなどの詳細は、高梁川トラベルの予約ページをチェックしてください。定員は6名となっているので、気になるかたは早めの予約をおすすめします。
素隠居について
素隠居の歴史は古く、江戸時代前期までさかのぼります。
その昔、とある老夫婦が高齢のため地域のお祭りに参加できず、柳平楽(やなぎ へいらく)という人形師に頼んで、自分たちの代わりになるような「じじ」と「ばば」のお面を作ってもらいました。そのお面をかぶった若者が老夫婦の代理でお祭りに参加したことが、素隠居の始まりといわれています。
時が経つにつれて、素隠居の役割もしだいに変わっていきました。
明治時代の素隠居は、お神輿に近づく子どもを交通指導する存在でした。事故やケガなどが起きないようにお神輿から人を遠ざけ、時には子どもたちをうちわで叩いて指導することもあったそうです。
叩かれた子どもは「すいんきょ、すいんきょ、くそらっきょう」という煽(あお)り文句とともに逃げ、時には仕返しをしてくることもありました。
素隠居と子どもの掛け合いは、お祭りのひとつの風物詩だったのかもしれません。
いつしか素隠居は身近なキャラクターとして住民に愛されるようになり、幸せを与える存在となりました。現在では、阿智神社の春季例大祭と秋季例大祭に姿をあらわしています。
素隠居体験を主催するのは、倉敷市内の観光ツアーを企画するTAKAHASHIGAWA TRAVEL(たかはしがわ とらべる)。倉敷のディープな魅力を伝えるツアーを数多く取りそろえている、地域に根差した観光会社です。
TAKAHASHIGAWA TRAVELの安田有美(やすだ ゆみ)さんに、今回企画した経緯について話を聞きました。
担当者インタビュー
──素隠居体験はどのような経緯で企画されましたか?
安田(敬称略)──
TAKAHASHIGAWA TRAVELは地元・倉敷にある旅行会社なので、「倉敷でしかできない体験」を楽しんでいただけるようなツアーを企画しています。
素隠居体験は、弊社代表の原から「素隠居は倉敷にしかないよ」とアイデアをもらったのがきっかけです。倉敷素隠居保存会にもご協力をいただいて、今回の体験イベントが完成しました。
実は、2024年5月の春季例大祭では、素隠居体験をお試しで開催したんです。その時も参加者のかたがとても楽しんでくださって、より多くのかたに体験していただきたいなと思いました。
お祭りに参加するとなると、お神輿を担ぐイメージが思い浮かぶと思いますが、素隠居は倉敷独自の文化なので、まさに「倉敷でしかできない体験」だったと思います。
また、以前から弊社と倉敷素隠居保存会はつながりがあって、毎年祭典の際、素隠居の休憩場所を弊社が提供していたんです。倉敷素隠居保存会のみなさまが、伝承や広報活動を頑張っていらっしゃることは知っていたので、今回のイベントが少しでも素隠居のPRにつながれば良いなと思いました。
──素隠居と出会った人々はどのような反応をしますか?
安田──
地元のかたはわりと素隠居を知っているので、「叩いてください」と自分から頭を差し出してくる人が多かったです。観光客のかたも最初は驚いていましたが、周りが叩かれているのを見て頭を差し出してくれましたね。
ご家族だと、お父さん・お母さんが「この子も叩いてあげてください」と子どもを連れてくる場面がありました。無理やり連れてこられて泣いている子どもの頭を叩く……なんだか獅子舞みたいですよね。
子どもたちのリアクションはさまざまで、「素隠居だ!」と走り寄ってくる子もいれば、見た目に怖がって近づくだけで泣いてしまう子もいました。素隠居は、泣いている子には叩かず、優しく撫でるようにうちわを使っていましたよ。
──安田さんも春の素隠居体験に参加されたそうですが、感想はいかがでしたか?
安田──
素隠居は本当に非日常の体験だと思いました。
素隠居の衣装を着て、じじばばのお面をかぶると、自分ではない何かになったような気がしたんです。いろいろな人をうちわで叩いて、ご利益を与えていくのはすごく楽しかったですし、自分自身もポジティブな気持ちになりましたね。日常では決して味わえない非日常感があります。
あと印象に残っているのは、海外観光客のかたの反応です。宗教上の都合で頭を叩かれるのがNGな人もいるので、そこは相手の反応を見ながら慎重に対応するのが大事だなと思いました。
──素隠居体験を通して、倉敷をどのように楽しんでもらいたいですか?
安田──
「素隠居になって街を歩く」という体験を楽しめるのはもちろん、倉敷の文化や歴史を知る学びも楽しんでいただけるのではと思います。
今回のイベントでは、倉敷素隠居保存会のかたから素隠居について教えていただく時間があります。
素隠居がどのように生まれて、時代のなかでどう変化していったのか。そして伝統がどのように受け継がれていったのか。詳しく説明してくださるので、「倉敷ってこういうところなんだ」と新たな発見があるのではないかと思います。
倉敷でしか体験できない素隠居という文化を、ぜひ丸ごと楽しんでいただきたいです。
──どのようなかたに参加してもらいたいですか。
安田──
観光客のかたはもちろん、倉敷在住のかたにもおすすめしたいと思います。
また、海外のかたにもぜひ体験していただきたいです。海外と日本で文化交流ができたらそれも楽しいと思うので、一緒に素隠居体験をして感想を言い合いたいですね。
子どもの頃に素隠居に叩かれたり、追いかけ回された経験があるかたは、今度は自分が素隠居になってみるのも面白いかもしれませんよ。
ちなみに、倉敷素隠居保存会の現事務局長さんも、子どもの頃に素隠居に追いかけ回されたトラウマがあるそうです!
──最後に、読者へメッセージをお願いします。
安田──
昔から倉敷に住まれていて、子どもの頃に素隠居に追いかけられたことのあるかた、ぜひ今度は素隠居になって、子どもの記憶に残るような思い出を作ってほしいと思います。
あとは、同じ倉敷市内でも、素隠居をご存じない人もいると思うので、ぜひこの機会に阿智神社のお祭りを体験してみてください。
一緒にお祭りを盛り上げましょう!ご応募、お待ちしております。
おわりに
実は筆者も2024年5月におこなわれた素隠居体験に参加しました。
素隠居として街を歩いてみると、すれ違う人々が警戒せずに接してくれて、素隠居が地域に根付いている存在だと実感しました。多くの人たちと交流できて楽しかったのはもちろん、他人の幸せを願う時間が気持ち良かったです。
倉敷素隠居保存会のかたたちは、市内各地のお祭りにも出没しているようです。筆者も、2024年の真備・船穂総おどりの会場で素隠居と出会ったことがあります。会えただけでもご利益があるように感じられる存在でした。
倉敷で長年愛され続けている素隠居。1日限定の伝統的な体験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。