お金を使うなら老後ではなく50代がいい? 「仕事」と「お金」の問題を考える
「老後が心配だから貯金をしておかないと……」と貯金に励んで我慢の多い生活をしていませんか? 50代のうちに節約ばかりしていた高齢者が、高額なサプリメントや健康食品を購入する例が多いと精神科医の和田秀樹氏は言います。
和田秀樹氏の『50歳の分岐点』(大和書房刊)は、50歳になったときの「仕事」と「お金」の問題について「なにをすればいいのか」を、著者自身の高齢期専門医、心の専門医としての経験より解説しています。50代のお金の使いどころとは?
お金を使うなら50代のうちから
「老後も若くありたい」とは誰もが考えることです。しかし若さを保ちたいと考えるなら、60~70代になってからではなく、50代のうちにお金をかけたほうが老後の心配を減らせます。50代のうちにひたすら節約してがまんをしていると早く老け込んでしまう、と和田氏は言います。
「老化を遠ざける生活を今から送っていれば、いきなり体や脳にガタがくることもない。そうやって年を重ねていくほうが、結局は老人になってからもお金がかからないのだ」
実際に、美容医療の世界では60~70代の高齢者がほくろやシミ取りの施術を行っています。高齢者になってから高額な医療費をかけるより、50代のうちに外見のメンテナンスを行う方が、費用もかからなくなるのではないでしょうか。
また、美容の問題だけではありません。高齢になってから旅行をしたいとせっせと貯金をしても、脳や体力が衰えてしまったら、使う気力すらなくなってしまうでしょう。
充実した人生を送るためには、使うべきときにお金を使うことが重要です。お金の心配よりも心身の健康と若さを心配しましょう。
老後のお金について神経質にならない
とはいうものの、「老後の貯蓄を考えると心配で貯金をしたい……」という人もいるかもしれません。しかし和田氏は月に20数万円の年金があって持ち家があるなら、老後も生活できる範囲だと言います。
寝たきりになった場合でも、民間の老人ホームを探せば入居費用が500万円(夫婦の場合:1,000万円)のところもあります。つまり老後に必要な金額は、「年金の不足分(生活費に足りない部分)+500万円(夫婦の場合:1,000万円)+趣味に使う分」がすべてです。それ以外のお金については老化予防として使っても問題はありません。
趣味に使うお金は今から確保しておきましょう。前頭葉が老化しない50代のうちに、やりたい趣味を見つけることが老化防止のためには重要だと和田氏は言います。
とくに注意が必要なのは仕事一辺倒で来た人です。定年後にやりたいことがなければ、毎日がつまらなくなってしまいます。結果、老人性うつ病を発し、自殺する人も少なくありません。
前頭葉が衰える前に趣味やボランティア、NPO活動など、自分が打ち込めるものを見つけておきましょう。もし現在時間がなくても、計画を立てるだけでも定年後の人生が違ってくるはずです。
50代のうちにやりたいことにチャレンジする
老後を心配なく過ごすためには、定年後も働くのがおすすめです。生活費を稼げるだけではなく、老化予防としても効果的です。将来的に日本に何かあったとしても、仕事に困らなければ何とかなるでしょう。そのためには今からヘルパーの資格を取ったり、起業の準備をしたりと、定年後に備えておきます。
起業が難しい場合、株や投資信託を運用するのもひとつの方法です。変動するチャートを見ながら売買の決断を下すことは脳にとってもよい刺激になるでしょう。
また50代は新しいことにチャレンジできる最後の大転換期。例えば以下の著名人は、年齢を気にせず一念発起し、全く新しいことにチャレンジしています。
・50歳で小説家デビューをした百田尚樹氏
・39歳で脚本家になり、55歳で東北大学大学院に入学した内館牧子氏
・42歳で映画監督になった北野武氏
・40代で東京藝大の脚本家コースに入学し、脚本家になった大石三知子氏
和田氏自身も47歳で初めて映画監督としてデビュー。初監督作品『受験のシンデレラ』で、第5回モナコ国際グランプリにおいてグランプリを受賞しました。
このように50代のうちにやりたいことを見つけチャレンジすれば、老後もライフワークとして楽しめます。もし人生を振り返ってみて、「こんなことがやりたかった……」と後悔するなら、今からでもチャレンジすべきです。頭も体も元気な50代のうちにこそ、やりたいことを見つけ、人生の軌道修正をしましょう。
この記事では、和田秀樹氏の『50歳の分岐点~差がつく「思秋期」の過ごし方』から、50代の仕事とお金について要約・抜粋してご紹介しました。