SNSを活用!東京湾における<スナメリ>の生態が明らかに 市民科学でアプローチ?
「研究」というと専門家たちが集まって行うイメージがありますが、一般市民が研究に参加する「市民科学」と呼ばれる活動により発展する研究も珍しくありません。
特に近年はSNSを活用した研究も見られ、SNSの投稿をきっかけに新種が発見された事例もあります。
2025年5月19日に『Fishes』に掲載された論文『Citizen Science Illuminates a City-Dwelling Whale: A Report on the Large Aggregation of Narrow-Ridged Finless Porpoises in Tokyo Bay, Japan』は、まさにSNSと市民科学の力を活用したスナメリ研究といえるでしょう。
日本沿岸に生息する小型のイルカ<スナメリ>
スナメリNeophocaena asiaeorientalis は日本沿岸の浅海に生息する小型のハクジラ類です。
本種は人間社会の影響を受けやすく、国際自然保護連合のレッドリストでは絶滅危惧種に指定。小型で目立たないことや吹気が不明瞭であることから、目視での調査が難しい種ともされています。
東京湾には空域制限があるため、空撮など従来の手法では調査が難しく、東京海洋大学では練習船などを用いた独自の目視調査を3年以上継続。しかし、スナメリに関する発見はほとんどなかったといいます。
市民科学で新たなアプローチ
そのような中、東京海洋大学の中村玄准教授らは市民から提供されたスナメリの目撃情報をもとに、東京湾におけるスナメリの調査を実施。SNSを活用することにより、都市湾におけるスナメリの分布・生態を明らかにしました。
この研究で市民から提供された目撃情報は2024年7月から2025年2月までに41件にも上り、うち27件をスナメリと確認。さらに約85%が2頭以上の群れで行動しており、東京湾でスナメリが複数暮らしている可能性が示されています。
さらには、目撃情報が浦安市から市原市沖に集中していることから、東京湾のスナメリが湾奥部を好むことが明らかになりました。
また、通常単独で行動することが多いスナメリですが、2024年9月には千葉県の富津岬沖で30頭以上のスナメリの大群が確認されています。これは東京湾内で史上最多となるほか、日本国内においても3番目に多い記録だそうです。
市民科学の力
今回の研究では、SNSの活用により都市に暮らすスナメリの分布・生態の一端が明らかになりました。
これは国内でも先駆的な事例であり、市民参加による科学調査の有用性が示されたものでもあります。今後も様々な分野で市民科学の力が重宝されていくかもしれませんね。
(サカナト編集部)