若手研究者が安芸太田町で学ぶ「保全生態学 夏の学校」朝から晩まで自然を体験!|地球派宣言
安芸太田町で、保全生態学を研究する若者たちが朝から山に入り、夜の川でも調査を行う珍しい研究会が開かれました。
9月14日と15日の2日間行われた「保全生態学 夏の学校」には、動物や植物の生態学を研究する大学院生や研究員など29人が参加しました。
参加者たちに、普段行っている研究や調査について聞きました。
安積 大輔さん(25歳) 岡山大学大学院 環境生命自然科学研究科 博士後期課程1年
岡山大学大学院の安積さんは、岡山県で絶滅危惧種に指定されている「ナゴヤダルマガエル」の生態について研究しています。
鎌田 真壽さん(23歳) 東京大学大学院 農学生命科学研究科 課程前期2年生
東京大学大学院の鎌田さんは、サンゴ礁に生息してサンゴを食べる「オニヒトデ」について研究しています。
大﨑 壮巳さん (27歳) 早稲田大学 教育・総合科学学術院 次席研究員
日本学術振興会 特別研究員PD
早稲田大学の大﨑さんは、温暖化の影響を受けやすい北極の植物や外来植物について調べています。
今回行われた夏の学校では、研究の発表だけでなく安芸太田町の自然の中で学ぶプログラムもありました。
三段峡や深入山で、生き物や植物にふれる調査体験です。
夏の学校を主催する「保全生態学若手の会」を代表して夫婦石さんに、今回のプログラムの中で重要視していることを聞きました。
夫婦石(みょうといし) 千尋さん(26歳) 九州大学大学院 システム生命科学府 一貫制博士課程4年
「地域の保全活動と関わったイベントにしたい。保全活動の基盤は地域の方だと思っているので、地域での活動の重要さを共有できるイベントになればいいと思い、企画しました。」
研究者だけでなく、地域で保全活動を行う人や地元住民と交流することが大きな目的のひとつだと言います。
三段峡を案内するのは、生態調査や保護活動を行っている三段峡・太田川流域研究会のメンバー 本宮宏美さんです。
歩いていると河原のそばに咲く花を見つけました。
河川に多く自生する「キシツツジ」です。
絶滅が危惧される植物で、本来は5月頃に花を咲かせます。
この日、一番見頃を迎えていたのは、見た目のかわいいツツジの仲間「ホツツジ」です。
ツツジ科では珍しい秋に咲く花なのだそう。
参加者たちは、普段見ることのない植物に興味津々のようです。
夜になっても夏の学校は続きます。
参加者は三段峡の川の中へ。夜になると、動き出す生き物を探します。
探していたのは「オオサンショウウオ」。
河川の改修など環境の変化によって数が減り、国の特別天然記念物に指定されています。
マイクロチップで個体を識別し、生育状況を記録します。
地域でオオサンショウウオを守っていくためです。
オオサンショウウオの調査をサポートしてくれたのは、三段峡・太田川流域研究会の本宮炎さん。
夏の学校では、フィールドで実際に調査するという自分たちの活動を知ってもらうだけでなく、三段峡に残っている本来の自然環境を若者たちにも知ってもらいたかったのだそう。
さらに、地域で自然を守るために大切にしていることを教えてもらいました。
「人と自然は関係ないように見えても背景を知っていけば自分に身近なものや必要なものだったりもする。環境を守っていくためには、周りの人たちに大切にしたいという気持ちをどう伝えていくかが大事」と本宮さんは言います。
最後にワークショップを行い、地域で保全活動する人や地元の人たちと今ある課題や改善方法について話し合いをしました。
参加した研究者の皆さんは、保全する立場の大変さや、地域の中で活動する人たちとどのように活動をできるかなど、これから保全活動をどのように進めていくかを考える貴重な機会となったようです。
撮影に同行することはできませんでしたが、深入山でも調査体験が行われました。
深入山の草地は、火入れによって維持されていることを知ることができました。
また、オミナエシやツリガネニンジンなどの草原植物が見られ、かつて秋の七草として親しまれていた植物の中には、深入山のような半自然草原が保たれている場所でないと見られなくなっている種もあることを知ることができたそうです。
環境を保全していくためには、生き物に興味がない方にも楽しんで共感してもらうことで仲間を増やしたり、保全したい種だけに注目するのではなく、保全活動を行う人や環境全体にフォーカスすることも活動を広げていく方法だという気付きもあったのだそう。
新たなつながりが生まれた若者たちの夏の学校。
より多くの人が自然に向き合い、行動にうつすことで、豊かな自然が育まれていくのではないでしょうか。
広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2024年9月18日放送)