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「点」の情報と現在進行形の「線」。本土と沖縄の報道と認識のギャップ 『太陽の運命』佐古忠彦監督が出演

SASARU

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※この記事では5月29日(木)放送の内容をお届けします。
※公開される映画館名や作品情報は上記日程の放送時点のものになりますのでご留意ください。

【提供】キャプテン・ポップコーン/矢武企画

映画『太陽(ティダ)の運命』佐古忠彦監督インタビュー

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

今回は5月30日(金)からシアターキノで公開される映画『太陽(ティダ)の運命』より、佐古忠彦監督が登場!放送では泣く泣くカットされた内容を含め、SASARU movieではディレクターズカット版でお届けします。

佐古監督は、1964年に神奈川県で生まれ、1988年TBSに入社。同局アナウンサーを経て、TBS報道局総合編集センター編集部プロデューサーです。ドキュメンタリー映画監督として2017年に『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』を公開。最新作の『太陽(ティダ)の運命』は4作目になります。

『太陽(ティダ)の運命』のあらすじ

第4代知事の大田昌秀(任期1990~98年)と第7代知事の翁長雄志(任期2014~18年)の2人は共に県民から幅広い支持を得て、県政を運営した沖縄県知事です。
本作は政治的立場が正反対であり、互いに対立しながらも国と激しく対峙し、信念を貫いた2人を通して、沖縄現代史に迫るドキュメンタリー映画です。
この作品のタイトルですが、太陽と書いて“ティダ”と読ませていますが、遥か昔の沖縄で主長、つまりリーダーのことを表した言葉になります。

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

矢武:沖縄県には8人の歴代知事がいる中で、大田元知事と翁長元知事に着目した理由は何ですか?

佐古:8年前に瀬長亀次郎さんを描いた映画を作りましたが、その後の現代史、とくに祖国復帰以降の沖縄を描きたいと考えていました。中でもこの30年の辺野古問題は、日本と沖縄の関係を象徴するものです。その起点にいたのが大田知事であり、辺野古を巡って苦悩しながら職務中に亡くなった翁長知事も欠かせない存在です。もともと対立していた2人が、次第に言葉や立場を近づけていく過程には、日本が沖縄とどう向き合ってきたかを読み解くヒントがあると思いました。

矢武:この映画は、ニュースなどで見る「点」の情報を、長い年月をかけて繋ぎ合わせてひとつの「線」にしている様な印象を受けました。そしてこのテーマが、今なお現在進行形で続いている内容ということについて、佐古監督にはどのように見えていますか?

佐古:映画制作にあたり、30年分のニュース映像を見直しました。報道は基本的に短い尺の中で伝えるため、「点」の情報に留まりがちです。辺野古の問題も、原点や経緯が忘れられていると感じます。しかし、こうした点を時間軸で繋げると「線」として見えてくるものがあります。その視点で振り返ることで、本土と沖縄の報道のギャップも浮かび上がってきました。

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

佐古:普天間基地からのヘリ墜落事故(2004年)は沖縄では大きく報道されましたが、本土では読売ジャイアンツのオーナー辞任や五輪開会式が1面を飾り、ほとんど扱われませんでした。この報道の温度差は、本土と沖縄の間に確かに存在します。沖縄にとっては、占領下から続く不安な暮らしの「線」の中の一部であり、単なる「点」ではありません。今回の映画もそうした視点を重視しており、今も続く問題を描いた“現在進行形の映画”だと思います。

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

矢武:映画の中で描かれていた出来事には衝撃的なものが多く、私の年齢的にも翁長知事の時代からしか記憶にありません。ニュースで目にしてきたのも、そのあたりの情報が中心だったので、大田元知事のことも存じ上げませんでした。ただ、映画を通して見てみると、昔から今まで大人たちがずっと同じような問題に向き合ってきたのだと感じました。

佐古:政治家もまた人間であり、民意と責任のはざまで揺れ、苦悩の末に決断しても、その約束が守られないという現実があります。映画では「多事争論」の言葉も引用し、今の国と沖縄の関係を示唆しました。沖縄は人口1%にすぎないのに、基地の大半を背負わされ続けています。本来なら安保の恩恵も負担も全国で共有すべきなのに、「NIMBY(Not In My Backyard)」の考えが根強く、沖縄への過重な負担が戦後ずっと続いている。民主主義とは何か、この国のあり方が問われ続けているのだと思います。
こうした民主主義の構造やこの国のあり方を問う沖縄からの問いかけが続いているのだと思います。

矢武:沖縄の人たちは、基地負担をすべてゼロにしたいと言っているわけではなく、ただ過度な負担の是正や公平な扱いを求めているのではないでしょうか?

佐古:沖縄は基地に全面反対しているのではなく、「これ以上の過重な負担は避けたい」と訴えているだけです。翁長知事も「望んで基地を受け入れたことはない」と繰り返していました。しかし本土では「ただ反対しているだけ」と誤解されがちで、共通理解のないまま批判が先行し、冷静な議論が難しくなっています。

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

矢武:沖縄県民とは別に、極端な意見を持つ外部の人たちの声が目立っていたと感じました。

佐古:確かに、極端な声や冷笑的な発言が注目されやすく、SNSでは座り込みを揶揄する投稿が拡散されました。そうした冷笑主義に深刻さを感じます。もはや「温度差」や「溝」という言葉で語ってきましたが、もはやそれでは表現しきれないほどの認識のズレが広がっているように感じています。

矢武:座り込みの現場には機動隊が派遣されますが、実際に対応しているのは沖縄県警、つまり地元の方々ですよね。地元同士で対立するような構図になっているのは、とてもつらく、かわいそうだなと、以前からニュースを見るたびに感じていました。

佐古:まさにその通りで、現場では警察官と座り込みをしている人たちの間に、人間的な会話が交わされることもあると聞きます。そうしたやりとりには少しほっとする思いもありますが、やはり警察は任務として動かざるを得ない状況があります。
一方で、座り込み参加者の中には「ここに来なくなったら、認めたことになる」と話す方もいて、その言葉には、強い意志と深い思いを感じました。

(C)2025 映画「太陽の運命」製作委員会

矢武:沖縄県のミニシアター桜坂劇場で先行上映されてましたが、県民の皆さんの反応はどうでしたか?

佐古:映画の上映が続く中で、多くの方が「沖縄の心を代弁してくれてありがとう」という声を多くいただきました。涙を流しながら観ている方もいて、太田さんや尾長さんと共に生きてきた世代の方々の悔しさや悲しさと深く結びついているのだと感じます。

矢武:最後にリスナーの皆様へメッセージをお願いします。

佐古:今回の映画は、2人の沖縄県知事を軸に、国と沖縄の関係の本質を描きました。立場の異なる2人がなぜ重なっていったのか――そこには、保守・革新といった枠を超えた沖縄の姿があります。本土の価値観で沖縄を捉えると見誤ることも多く、その人間ドラマを通して沖縄の現実を感じてほしいと思います。
また、沖縄戦では沖縄県民に次いで北海道出身者の犠牲も多く、決して他人事ではありません。戦後80年が経った今も続く歴史を、ぜひ劇場で見届けてください。

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