古着好き、集まれ! 日本最大規模の古着イベント『フルギフェス』体験レポート
フルギフェスに行ってきました!
半期に一度、東京で開催されている『フルギフェス』をご存知だろうか。国内最大級の規模を誇る古着の販売イベントであり、古着LOVERたちが集うフェスティバルである。この記事では、2024年6月23日(日)に東京ビッグサイトにて開催された『フルギフェス』“2024年・夏”のイベントレポートをお届けする。
東京ビッグサイトの展示場ふたつをぶち抜いた大空間に、所狭しと並ぶ古着たち……。一体どんな感じだろう。古着にあまり馴染みのない筆者は、取材前は漠然と「ホコリっぽそう」なんて思っていた。なのでまず、そのイメージが的外れだったことを声を大にしてお伝えしたい。空気は爽やかです!
古着と興奮のるつぼへ
入場券としてリストバンドを渡されたら、いざ、古着の世界にダイブだ。全国から集結したショップは総数250以上。しかしなんと、会場マップが無い。ブース番号も無い。まさに、右も左も分からない(目当ての店舗のある人は、事前にSNSなどで大体の場所をチェックしているのだと思う)。これは新鮮な感覚だった。確かに、各店の古着は逃げも隠れもせず、来場者に対してひらかれている。有名店を狙い撃ちするのもいいけれど、もっとシンプルに、自分が気になるところ・かっこいいと思ったところで買い物をすればいいのかもしれない。考えれば考えるほど、それって古着愛好者っぽいクールさな気がする。
大小さまざまな店舗が参戦
大手古着店の「デザートスノー(DESERTSNOW)」「古着屋ジャム(JAM)」「ウィゴー(WEGO)」などは、広い敷地にハンガーラックを並べて、膨大な古着を種類・色ごとに整然と陳列している。レジや試着室も用意され、店舗でのショッピングに近い環境だ。快適に買い物を楽しみつつ、フェス価格で購入できるのが嬉しい。ちなみに、会場内に配送会社が常駐しているので、たくさん購入しても持ちきれなくなる心配はご無用である。
一方、小規模な店舗の場合、車の横にハンガーラックを突き出し、ポップアップテントの試着室を添えた(無いこともある)軽快なスタイルの店構えである。小店舗の密集エリアはちょっとしたオートキャンプ場のようになっていて面白い。余談だが、1万人が行き交う会場の試着テントの中でズボンを下ろすのはなかなか刺激的な体験だった。
宝探しの時間です
マップが無いだけに、回遊していると自ずと看板やのぼりの文字に目がいく。そんな迷える子羊の心を見透かすかのように誘う、「店内全品半額」の巨大文字。実にいい言葉である。店内全品半額。古着って高いものと安いものの差が激しい印象を抱いていたが、会場ではどちらかというと後者の、“お得感”を全面に押し出したブースが多いように感じた。さすがフェスティバル!
また、店舗によってスタンスが異なるところとは思うが、取材中には店主さんと来場者とで価格交渉をしているシーンもちらほら見かけた。これも、オフラインイベントだからこその醍醐味なのではないだろうか。
こちらは「古着つめ放題」。古着界隈ではよく「dig(掘る)」という言葉を聞くが、文字通りに“掘り出し物”を探す、アトラクション感の強いコーナーだ。どちらがいいものを見つけられるか、同行者と一緒にチャレンジするのも楽しそうである。
別ブースにて、ジーンズのdig現場にも潜入してみた。シート上に積まれたジーンズがすごい勢いで掘り起こされ、ひらひら飜る姿は壮観のひとことに尽きる。
写真の「0円古着 個数制限なし!」の文字には、驚いて思わず足を止めてしまった。売り子のお姉さんに尋ねたところ、並んだ商品の中にランダムで「0円」の値札のものが混ざっているのだという。個数制限なし、というからには結構な数が混ざっているのだろう。「見つけてみてくださいね!」と言われてしばらくラックを入念にチェックしてみたが、すでに狩られてしまった後のようだった……無念。このお店「minfui」では『フルギフェス』での恒例企画として“0円古着”をやっているそうで、毎回多くの人で賑わうのだという。来場者としては非常にワクワクするし、店舗としては出会いのきっかけにつながる賢い企画だなぁとしみじみ思った。
digり疲れてきた頃、会場中ほどで「MONSTER」の無料配布ブースに遭遇。新作エナジードリンクの「モンスター パピヨン」をもらって、ニッコリである。一気飲みしたら、我ながら目に光が戻ったような気がした。
センターエリアには格好良さが詰まっている
さて。『フルギフェス』は古着の販売イベントなので、当然ながら会場はハンガーラックで埋め尽くされている。けれどそんな中、ホールのど真ん中には、異彩を放つめちゃめちゃおしゃれな一角を発見。
ここは店舗というより展示のエリアで、来場記念のフォトスポットにもなっている。毎回センターエリアでは会場全体のイメージづくりのため、バイクなど、他とはちょっと違ったものが置かれているのだそうだ。お話を聞いてみたところ、今回はアメリカンヴィンテージのランバーエプロン(材木店や工務店のワークエプロン)や、1910〜1920年代のヴィンテージパラソルを展示しているとのこと。床に並べられたランバーエプロンはフェス価格で購入することも可能だ。
写真ではちょっと見づらいが、パラソルの後ろに配置されたトレーラーがめちゃめちゃカッコいい。この一角があることで、古着っていいな、ヴィンテージものって格好いいな、との思いが新たになるのであった。そして絨毯が安い……!
洋服だけじゃございません
そう、『フルギフェス』に集う“古着”は洋服だけではない。もちろん靴だって、バッグだって、ベルトやスカーフなどの小物だって豊富に揃っている。
さらに、ファッションアイテムにとどまらず、ヴィンテージ雑貨やインテリアも。
変わりダネでは、ヴィンテージ雑誌の切り抜きや、海外映画のロビーカード(映画館のワンシーンを切り取った宣伝用のカード)を扱ったお店も発見。なるほど、空間を装うファッション、という意味ではこれも古着かもしれない。切り抜き3枚1000円を夢中になってdigっていたら、気づけば20分近く経過していてヒエッとなった。ちなみにこちらの「Woodmarquee」はオンライン販売のみのショップとのこと。こうして実店舗を持たないショップと出会い、実際に品物と触れ合えるのはフェスならではの楽しみだ。
中には、懐かしのカセットウォークマン、ラジカセ、iMac(スケルトン!)などを並べたお店「スタビリティターン」も。もはや古着というより古道具のような気もする……けれど、そんなことはもうどうでもよくなるほど、それらは『フルギフェス』の会場に驚くほどしっくりと馴染んでいた。
ファーストオーナーの手を離れた古き佳きモノ、物語を背負った過去のアイテム。私たちはそれらをまるっと“古着”と呼んで、愛好するのかもしれない。種々雑多なアイテムを見て歩きながら、なんとなく古着世界の魅力の本質に近づいたような気がした。
フードでお祭り感2倍増し
フェス系イベントといえば、1日遊びきるためのお食事事情も要チェックだ。外で食べてから再入場したり、持参した何かを食べるのもアリだろう(食べる場所はないが)。でもここは敢えて、お祭り感を満喫するために会場内のフードトラックを利用してみることにした。焼きそばやチュロスと迷ったが、会場の雰囲気とバッチリ合ったトレーラーに惹かれて、こちらのホットドッグをセレクト。やはり雰囲気は大事。
ところが誤算、時刻は14時過ぎだったのでもう平気だろうと確認せず購入したものの、休憩エリアの空席が見つけられず。冷めてしまっては勿体無い! というわけで結果、壁際に座り込んでストリートスタイルでいただきました。教訓、お行儀よく食べたい場合は席を押さえてから購入しましょう。
行き交う人たちを床からの目線で眺めながらかぶりつくホットドッグは乙なもの。周りを見渡すと、同様に壁際でおにぎりを食べている男子学生さんらしきグループを見つけた。「休んだから、これで20時まで頑張ろう」「ドーパミン出てるから全然平気」と元気よく話す姿を見て、祭りっていいなぁ、とほっこりする。
会場には比較的若い来場者が多く、友人同士やカップル、ファミリーで楽しんでいる人が多いような印象を受けた。『フルギフェス』の公式SNSでは来場者のファッションスナップが見られるが、さすが、おしゃれな格好の人が多かったのも間違いないと思う。
人は着るものだから
『フルギフェス』は1日のみ、9時〜20時の開催だ。「誰もが1日中遊べるフリーマーケット」の謳い文句通り、会場を泳ぎ回っているだけで、時間はあっという間に過ぎていく。筆者は昼から夕方にかけて滞在したので体験できていないが、フリーマーケットイベントならばおそらく、朝イチ&ラスいちの時間帯はまた違った魅力があるのではないかと想像する。
『フルギフェス』には溢れんばかりの選択肢があり、しかもその多くがかなりのお手頃価格なのが嬉しい。筆者のようにあまり古着の馴染みがない人でも気軽に飛び込めるイベントと言えるだろうし、普段から古着大好き! な人ならよりディープに宝探しを楽しめるだろう。洋服はやはり、どんな人にとっても自分ごとになりうるのだ。それってすごい。
次回の『フルギフェス』は12月15日に開催が予定されているそうなので、ぜひチェックを。イープラスで前売りチケットを購入しておけば、当日の会場入りがグッとスムーズになるのでおすすめだ。
文・写真=小杉美香