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「大奥」の深い闇を掘り下げた第二章。再び、陰謀や愛憎が絡みあうーー『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』時田フキ役・日笠陽子さん×大友ボタン役・戸松遥さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

3月14日(金)より『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』が全国公開!

天子の寵愛を受けるフキと、御年寄として規律と均衡を重んじるボタンが対立する大奥で、今度は人が燃えて消し炭になる事件が発生。薬売りは大奥に渦巻く闇と陰謀を突き止め、モノノ怪を鎮めることができるのか!?

第二章の公開を記念して、第一章から引き続きの登場となる時田フキ役・日笠陽子さんと大友ボタン役・戸松遥さんの対談をお届け! 作中ではライバル関係でありながら、声優デビューが近い盟友でもあるお二人に本作の魅力や注目ポイントを語っていただきました。

【写真】『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』日笠陽子×戸松遥インタビュー

強烈な色彩感覚と薬売りの存在感。『モノノ怪』という作品が与えたインパクト

ーー『モノノ怪』のTVシリーズをご覧になったことはありますか?

時田フキ役・日笠陽子さん(以下、日笠):当時、作品の存在は知っていて、「不思議なビジュアルだな」という印象を持っていましたが、アニメ本編には触れていなくて。だからこそ固定概念を持たずに収録に臨めたので、逆に観ていなくてよかったかもしれないと思いました。劇場版の第三章まで公開されたあと、改めてアニメの『怪~ayakashi~(2006年放送)』から見返してみたいです。

大友ボタン役・戸松遥さん(以下、戸松):ノイタミナ(フジテレビの木曜深夜のアニメ枠)のイメージがすごく強くて。これまでノイタミナでは沢山のアニメが放送されていますし、私自身も出演させていただきましたが、ノイタミナと言われるとすぐに『モノノ怪』のビジュアルが思い浮かぶんですよね。

日笠:それだけ印象的なんだよね。

戸松:ビジュアルの色彩も強烈ですし、薬売りの印象も強くて。先ほど2007年に放送されていたと聞いて驚きました。それくらい記憶に残るほど『モノノ怪』のインパクトは大きかったんだなと。

ーーお二人は『劇場版モノノ怪 唐傘』にも参加されていますが、最初から全三章になることは知っていたのでしょうか。

戸松:事前にいただいた資料の中に書かれていたので、第三章まで描かれること、ボタンのお当番回が第二章になることは把握していました。

日笠:ただ、第一章の時はこんなに喋るキャラだとは思わなかったよね?

戸松:そうだね。ここまで大活躍するとは……。

ーー戸松さんは、同じくノイタミナ作品である『C』でも、中村総監督とご一緒されていますね。

戸松:『C』は全くテイストが違っていたので、『モノノ怪』のイメージを感じずに演じていましたが、中村監督のお人柄の印象は強く残っていて。今回久しぶりにご一緒させていただいて、「中村監督ってこういう面白い方だったなあ」と思い出しました。

監督ご自身、話し口調が柔和で質問しやすい人柄なので現場も穏やかなんです。作品は重厚な世界観なのに、ピリピリすることなく、いい空気感で収録できましたし、それは監督の人柄のおかげだと思います。

ーー日笠さんから見た中村総監督の印象もお聞かせいただけますか。

日笠:アフレコするにあたって、事前に監督自らキャラクターの説明や作品で描きたいテーマなどをびっしり書いた資料をいただきました。そこで「すごく真面目な方だな。口下手だからこそ、文章では“冗舌(じょうぜつ)”なのかな?」と思ったんです。でも、実際にアフレコでお会いしたら、「いや〜、大変っすね〜」と明るい感じだったので、「えっ!? ポップ?」って(笑)。「本当に文章のままの人なんだ」と驚きました。きっとご自身の中では話したいこと、思っていることがあるけど、「その取捨選択は役者に任せますよ」という風に現場で生まれるものをすごく大事にされている方なんでしょうね。知識をどれだけ持っていても、「生きる」ってそういうことじゃないと理解されている方なんだなと。

歴史は巡り、時代は繰り返す

ーー今作の台本を読まれた感想をお聞かせください。

戸松:『劇場版モノノ怪 唐傘』とはテーマが違っていて、「大奥」の深層というか深い闇の部分を掘り下げたお話だなと。色々なところで陰謀が渦巻いているし、人間の生々しさや汚さもドロドロとしていて。そのうえで愛憎も絡みあっているので、観てくださる方はきっと気持ちを揺さぶられるはずです。

「大奥」は男子禁制の女性の園なので、女性同士の戦いが表でも裏でも繰り広げられる世界なんだろうなと。ただ、『モノノ怪』では腹黒いおじさんたちに振り回されている部分もあって。例えばボタンは老中の大友の娘ということで、サラブレッドな家系に生まれているのにも関わらず、政略的に利用されているんです。

日笠:真っ白なキャンバスに描き始めたものが、今回は真っ黒の消し炭に塗り替えられる感じで、思わずこの世の「諸行無常」を感じました。様々な色を重ねて、素晴らしい絵に仕上げようとするのと同じなのかもしれません。誰もが良かれと思って作った規律や行動から徐々に綻びや不和が生じていく。まるで絵を描いているうちに、色がぐちゃぐちゃに混ざってしまうみたいに。

それは規律を作った時代と現状がマッチしていないからで、大奥は最終的になくなってしまう訳ですし、不滅のものはないんだなと考えさせられた「第二章」でした。そんな中でも、大奥が存在し続ける限り、よりよい大奥にしようと追い求めていったのがボタンで。フキとしては次世代を担う自分の子供だったり、次の人たちにどう伝えて、何を残していけるのかも考えさせられました。まさに歴史は巡り、時代は繰り返す、ということが各章で描かれていくのかなと。次の第三章まで含めて、大きな渦みたいなものが表現されている気がします。

『劇場版モノノ怪 唐傘』では「水」が描かれて、今回は「火」という対照的なテーマになっているのも不思議ですね。きっとそういう時代背景や監督の想い、考えが散りばめられていると思いますし、今はただ作品の完成が楽しみです。

ーー「第二章」でそれぞれの役を演じるにあたって、意識したことを教えてください。

戸松:前回のボタンはそれほど出番があったわけではなく、アサ(CV.黒沢ともよ)とカメ(CV.悠木 碧)から見たボタンを演じていたので、イメージとしては「マジ大奥」みたいな(笑)。「これは敵わない。上の人ってすごい!」という存在でありたいと思っていました。

第二章からはフキとボタンがメインになっていくので、この二人以外にも天子に選ばれたい女性がたくさんいる中、みんながどんな感情を抱いて、どうアプローチをしていくのかが少しずつ描かれています。特に前半、フキとボタンは対照的に描かれていることが多いんです。

ボタンは自分の家系を含めて、長く続く大奥をみんなで協力して存続させ続けたいという想いが強くて。結果を残すのは自分ではなくてもいいという考え方なので、他の子たちのような「私を選んでください!」という我は一切なく、「自分が選ばれればそれはそれでいい」という感じ。

まさにビジネス的な考え方で、大奥の上司的な立ち位置ですが、一方のフキは結構人間臭くて、感情豊かです。フキに想いの丈をぶつけられても、ボタンは「気が済みましたでしょうか?」と返す。そのくらい私情を挟まず、機械的に対応していたので、強い責任感を常に忘れないように演じていました。後半ではボタンの人間的な部分も徐々に見えてくるので、そういう変化もみなさんに伝わったらいいなと思います。

日笠:フキなりの「これが正義」と信じて貫いていたものが、外側からは「悪」に見えることがあって。私は彼女を演じているけど、収録後に映像を観ていると「フキよ。それはダメじゃない?」とか、「自分だけが頑張っているって思ってない?」と自分の子供を叱るような感覚がありました。

演じている時は、色々な対比や対立を感じながらも、自分が真っすぐフキを演じていると自然と対比されていくように描かれているので、あえて意識しなかったんです。

また、フキとボタンの関係性に注目しがちですが、実は二人共、根幹にはお父さんという存在があります。そして、フキが子供を宿した時、そこにも新たな親子が生まれる。大奥を作った老中がいて、囲われた女性たちがいて。本当に様々な対比関係があるなと。そういう渦巻いたものに飲まれないように精一杯生きている女性がフキです。彼女が全力で生きる姿を感じていただけたらと思います。

『モノノ怪』の現場は「乗せては捨て、捨てたら乗せる」

ーー神谷浩史さんが演じる薬売りの印象やお芝居の感想をお聞かせください。

戸松:役柄的にそれほど掛け合いは多くなかったのですが、ボタンは大奥の規律を重視しているので、薬売りには「外部から来た得体の知れない変な人」という気持ちで向き合っていた気がします。演じるにあたっても嫌悪感があったり、あまり良い印象はない感じで、基本的にツンツンした対応をしていました。

日笠:私の薬売りのイメージは煙や雲みたいな、あるようでないような、ないようであるような。ただ、確実に触れることはできない存在だなと。フキはあまり薬売りと絡んでいないからこそ、その感覚が強いのかもしれません。本当につかめない存在でしたが、神谷さんが演じてくださることで、薬売りの輪郭をクッキリさせて、「ここにいる」という足跡をちゃんと残してくれていると感じました。いち視聴者として観てみると、クッキリしている分、薬売りの役割も明確になっているのかなと。

ーー収録の雰囲気やお二人で掛け合いをされた感想をお聞かせください。

日笠:私たちはデビューも近くて共演も多いし、付き合いも長いので信頼関係ができているんです。何となく「こうくるかな?」と想像もできますけど、それを軽く超えてくるのが戸松遥なので……。

戸松:(凛々しい声で)ありがとう!

日笠:この二人の掛け合いでもあるけど、中村総監督や鈴木(清崇)監督、音響監督の長崎(行男)さんともある意味で掛け合っている感覚がありました。私たちが提示したお芝居を踏まえたうえで、「こうしてほしい」とか「こうしたほうがいいかな」とその場で考えているらしくて。フィーリングを結構大切にしている方たちだなという印象があります。

戸松:初めての現場だと、「どんなお芝居を出してくるのかな?」という緊張感があったりしますが、内容の割には現場の空気感はそれほどピリついてはいなくて。そのおかげで、程よい緊張感を本番まで持っていくことができたと思います。

休憩時間は『モノノ怪』の現場とは思えないほどにゆるい感じで(笑)。日笠ともずっと一緒だったので空き時間に喋っていました。そのメリハリがありがたかったです。

ーー最後に、公開を楽しみにしている方たちへのメッセージをお願いします。

戸松:ひと言で表現するのが難しいくらい、掘り下げ続けることができる作品です。特に第二章は、単なる女性たちのバチバチした争いという枠では収まらない深さがあって。解決しなくてはならない現況の原因や理由が垣間見えるお話なので、ボタン側の視点で観るのか、フキ側の視点で観るのか、または別のキャラクター視点で観るのかで、受け取り方が大きく変わってくると思います。観終わった後、ぜひお友達やご家族で語り合ってみてください。そして、ボタンのように正解を追究していくつもりで、来たるべき第三章を待っていてほしいです。

日笠:私自身もどのキャラクターになって、どうしたいのかを考えさせられました。大奥は中にも外にも様々な人がいて、観てくださる方も男女、親子など色々な立場があると思います。皆さんが感じて、受け取ったものは正解でもあるし、監督や私たちキャストが思っているものとは違うものかもしれません。「もしかしたら違う考え方があるかもしれない」と疑問を持つことで、更に視野が広がって楽しめるんじゃないかなと。

私たち役者はひとつの物事に色々なものを乗せてしまいがちですが、『モノノ怪』では一回積んだものを捨てている気がします。演技プランを積み上げた後に本番で捨てていく過程があって、乗せては捨て、捨てたら乗せる。そんな部分も頭に置いて観ると、第二章の深層にたどり着けるかもしれません。皆さんそれぞれの感性で向き合ってみてください。

[インタビュー/永井和幸 撮影/MoA]

日笠陽子さん

[衣装クレジット/CASANE]

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