“ネット詐欺のベストアルバム”に遭遇!「○○プレゼント」詐欺体験レポート
最近再び目にするようになった「○○プレゼントします」という広告。明らかに怪しいとわかっていても調べるのが筆者のお仕事。今回もあえて応募してみました。
これまで数多くの詐欺広告に出会ってきたので、展開はある程度予想できていたのですが……今回たどりついた先は「ネット詐欺のベストアルバム」といわんばかりの仕掛けになっていました。
■ ネットで出会った「プレゼントします」広告
ネットを巡回中に今回偶然みつけたのは、「ボタンタップでお受け取り」「おめでとうございます ボタンタップでお受け取りください」と書かれた広告です。プレゼントボックスの画像も掲載され、一瞬目を引きます。
とはいえ、広告主などの名前は一切なし。勘の良い方なら、警戒するポイントです。
見つけた瞬間、筆者のセンサーも「ピピーン」と反応しました。これは詐欺広告に違いない。何が待ち受けているのか、タップしてすすんでみます。
■ 応募するとどうなる?
開いて現れたのは、「おめでとうございます!」「大当たり!」の文字。は?何も応募してないんですが?
ページをスクロールしてみると上から下まで「おめでとうございます!」「大当たり」「当選」「全員配布キャンペーン!」の言葉がならびます。何かを受け取らせる気まんまんです。
とりあえず進んでみることにします。画面のあちこちには「LINE友達追加」や「LINEメッセージを受け取ってね」「LINE追加した人限定」といった内容が書かれています。どうやら何としてでもLINEに移動させたいもよう。
画面をタップすると現れたのは、「全員プレゼント!」というLINEアカウント。公式バッジをつけていますが、色がグレーなので「非認証(LINEの認証をうけていない)」アカウントです。そして気になるのが、友だち数の「991」。結構な人数がフォローしています。だ、大丈夫か。
次に友達追加をして現れたのが、またまた当選画面的なバナーです。「生活応援キャンペーン」「777万円分生活応援キャンペーン」と書かれています。
777万円分何かが受け取れるそうですが、金額はどうでもいいのでとりあえずその先に進んでいきます。
バナーから飛んだ先は「このページを開いてから2分以内にワンギリするだけ!!」と書かれた謎ページ。ワンギリって、怖すぎんか。
いくら詐欺潜入に慣れているとはいえ、電話をかけるのは流石に勇気がいります。躊躇するうち、すでに2分が経過していましたが、こちらの番号を非表示にしてかけてみます。
すると……
電話「カクニンガカンリョウシマシタ ゴトウロクアリガトウゴザイマス」
というアナウンスが流れ、電話が切れる。は?
一体何の確認がされたのか、よくわかりませんが、とりあえず応募は終わったようです。
この電話の目的は、恐らく「電話番号の入手」。入手した番号は不正にどこかへ流出していき、「カモリスト」に追加されるに違いありません。
ちなみに、もし通知表示でかけてしまい「カモリスト」入りをしてしまった場合には、後日か数分後に「お金の受け取りのために~」などと言って電話がかかってきます。
こっちの考える隙を与えないために、次々と質問をしてきますが(半ギレしながら圧もかけてきます)、相手のペースにのまれないことが大事。即電話を切って着信拒否でOK。
しばらくは知らない番号からの電話やSMSが増えることも予想されます。その場合も全無視で大丈夫。電話番号を知られた場合には「無視」が一番。それでももし、不安な場合には、消費者ホットライン(188)か警察の相談窓口(#9110)に相談してみてください。
■ 他のボタンは何?
さて気になるのは、先ほど友達追加したアカウントに、リッチメニューもあったこと。
「大人気副業」「ギフト受取」「現金抽選会」「占い」「AI副業」「SNS副業」の、これらを押すと何が起きるのか?こっちも調べてみました。
まずは「大人気副業」というボタン。
こちらは、同じような「当選しました」の画面が立ち上がるだけで、ひたすらサイトを回遊させる昔ながらの手法。おそらく、電話番号を入手する機会をアップしたいのでしょう。
続いて「ギフト受け取り」のボタン。こちらは「PARADISE」という名のアプリを使った副業的な内容。ダウンロードすれば「毎日33,000円」と書かれていますが、この先にあるのは絶対地獄。
先の地獄をみるべく「副業」の画面にある「受け取り」ボタンをタップすると、現れたのは「PARADISEのLINE友達登録」。いったい何人友達登録をさせるのか。
さらに、友達登録をしてその先に進むと、今度は「アンケート」と称し、また「友達登録」をさせたがります。
とりあえず、「アンケート調査員 竹原」というアカウントを友達登録して、先に進む。ここまでくると本来の目的を忘れてしまいそうです。
登録をすると、今度は弁護士だの訴訟だのといった話が持ちかけられました。おやおや。
どうやら、詐欺団体からお金を回収し、被害に遭った方に分配するという。そして自分もその金を受け取れる権利があり、その金額が10億円。
なるほど、ようやく「お金がもらえる」という話に戻ってきた気がする。
そして、また「友達追加」。今度は「松永」という自称弁護士のアカウントです。先ほどの訴訟関係の話でもするのだろうか。
しかしながら、またまた振り込み手続きのために「佐藤」というアカウントを友達追加せよという流れに。ため息をつきつつ佐藤を友達追加します。
するとやっと本題。お金の振込先となる「銀行口座」を教えてくれという流れに。当然教えるわけにもいかないので、適当に返事をする。
ここで気づいたのは、ここまで全部「自動応答」ということで、人間は一切関与しておらず、LINE公式の機能で対応している点。どうやらLINE公式の機能を悪用し、自動化することで人件費を削減しているようです。この頃多いパターンですね。
なお、上記以外の「リッチメニュー」のボタンですが、押してみたところ……
<現金抽選>
抽選LINEアカウント追加→応募はこちら→LINEアカウント追加……の永久ループ。
<占い>
個人情報を色々聞いてきて危険なのでスルー。
<AI副業>
LINEアカウント追加→登録はこちら→LINEアカウント追加……永久ループ
<SNS副業>
LINEアカウント追加→登録はこちら→LINEアカウント追加……永久ループ
ということで、「電話をかけさせる」「個人情報を取得する」「LINEで友だち追加させる」など、これまで経験してきた、あらゆる詐欺手法が、まるで「ベストアルバム」のように詰め込まれた、ある意味、ネット詐欺を1つで体験できる“お得”な詐欺パックとなっていました。
もちろん、こんなものは絶対に興味本位でクリックしてはいけません。
なぜなら、こうなるからです。
■ 想定外の結果に
ひととおり、友達追加を終え、1日スマホを放置してみたところ……LINEの通知がエグいことに。
そうです、友達追加はするだけでなく、色々と情報を発信してくるのです。
「友達追加」した数×一方的なメンションが行われ、LINE通知が地獄になっていました。
そもそも筆者はLINEの通知をためておくのが好きではないので、たとえ通知「1」でも処理して消す。それが数時間で通知190近くというのは、LINEをインストールしてから初めてのことなのです。
さすがに、友達追加を次々している時点で「これはまずい」と気付く方は多いかと思いますが、その先にはとんでもない光景が広がる「プレゼント詐欺」。
どちらかといえば、個人情報云々よりも、この光景のほうが直感的に、そして精神的にくるかもしれません。
(たまちゃん)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By たまちゃん | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025052601.html