知られざる生涯と活動に迫る「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」が6月21日~8月17日、『渋谷区立松濤美術館』で開催
渋谷駅前のモニュメント『忠犬ハチ公像』初代の作者・安藤照(あんどうてる/1892-1945)の没後80年を記念した展覧会「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」が2025年6月21日(土)~8月17日(日)、東京都の『渋谷区立松濤美術館』で開催される。安藤の彫刻家としての活動を初めて網羅的に紹介する。TOP画像=安藤照《忠犬ハチ公》制作年不詳 『鹿児島市立美術館』蔵。
彫刻家としての活動と生涯に肉薄
安藤照は大正6年(1917)に東京美術学校に入学し、在学中に帝国美術院展覧会で彫刻家としてデビュー。翌年に帝展特選、大正15年(1926)には帝国美術院賞を受賞するなど、はやくから頭角をあらわした。昭和4年(1929)には中堅彫刻家の作品研究の場として結成した団体「塊人社(かいじんしゃ)」のリーダーとして活躍し、昭和9年(1934)には《忠犬ハチ公像》、昭和12年(1937)には《西郷隆盛像》(鹿見島県鹿児島市)と、現在も語り継がれるモニュメントを制作。しかし昭和20年(1945)5月、渋谷区代々木の自宅兼アトリエが空襲にさらされ、安藤もその犠牲となった。
広報担当者は、「渋谷駅前のモニュメント《忠犬ハチ公像》(初代)の作者である安藤照の東京では初めての回顧展です。活動を網羅的に紹介するために、戦火を逃れた作品30点のほか、関連作家の作品も展示します。『ただ黙々と仕事して居ります』と語った安藤は、戦争に向かう不安定な時代の中でも素朴で静かな彫刻を作り続けました。激しくうつろう社会を生きる私たちとって、黙然たる彫刻たちは、自分らしく生きる手掛かりになるかもしれません」と見どころを語る。
5章に分けて彫刻活動の軌跡を辿る
本展では全5章に分けて、安藤照の彫刻家としての軌跡が紹介される。第1章では初期作品に加え、彼のライバルであった同世代の彫刻家たちの作品が展示。第2章では動物好きであった安藤が多く制作した動物彫刻に注目し、結成した彫刻団体「塊人社」のメンバーの動物彫刻とともに展示される。第3章では出身地鹿児島ゆかりの作品や渋谷を代表するモニュメント『忠犬ハチ公像』に肉薄。第4章では彫刻活動グループ「塊人社」結成の経緯と活動が紹介される。第5章では昭和6年(1931)の満州事変から昭和16年(1941)の太平洋戦争開戦、そして昭和20年(1945)の安藤の死まで、戦禍が迫りくる中、黙々と作品を作り続けた彫刻家の姿を追う。
関連イベントも開催
記念講演会「戦争期の彫刻」
7月27日(日)14時~から講師に『愛知県美術館』館長・平瀬礼太氏を迎え、記念講演会「戦争期の彫刻」が『渋谷区立松濤美術館』地下2階ホールで開催。定員70名(事前申し込み制、応募者多数の場合抽選)、料金は無料(要入館料)。申し込みは公式HPイベントフォームまたは往復ハガキにて。7月7日(月)必着。
展覧会担当学芸員によるピンポイントトーク
7月11日(金)「安藤照ってどんな人?」、7月20日(日)「激動! 昭和時代の彫刻界」、7月26日(土)「安藤照と『塊人社』」をテーマに、各日10時30分~担当学芸員によるピンポイントトークが『渋谷区立松濤美術館』地下2階ホールで開催。展覧会内容を掘り下げたテーマについて語られる。各回定員60名(先着順)、料金は無料(要入館料)、事前申し込み不要。
開催概要
「黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―」
開催期間:2025年6月21日(土)~8月17日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし7月21日・8月11日は開館)・7月22日(火)・8月12日(火)
会場:渋谷区立松濤美術館(東京都渋谷区松濤2-14-14)
アクセス:JR・地下鉄・私鉄渋谷駅から徒歩15分、京王電鉄井の頭線神泉駅から徒歩5分
入場料:一般1000円(800円)、大学生800円(640円)、高校生・60歳以上500円(400円)、中学生・小学生100円(80円)
※( )内は団体10名以上及び渋谷区民。金曜は渋谷区民無料。
※土・日・祝および夏休み期間は小・中学生無料。
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)無料。
【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館☏ 03-3465-9421
公式HP https://shoto-museum.jp/exhibitions/208ando/
取材・文=前田真紀 画像提供=渋谷区立松濤美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。