ゴルフに代わる交流の場に サウナがビジネスと相性抜群のワケ 静岡でも広がる輪
■サウナ×ビジネス 「ポテンシャルを生かせていない」
時間を共有するプライベートな空間が人と人とのつながりを生み、ビジネスチャンスとなる。一般社団法人「静岡サウナ協議会(We SAUNA Shizuoka)」が固定概念にとらわれない、サウナの魅力発信に力を入れている。ビジネスの組み合わせもその1つで、サウナは喫煙所やゴルフに代わる交流の場となる可能性を秘めている。
若者を中心にブームとなっているサウナは、ひと昔前のイメージが変わりつつある。ただ、静岡サウナ協議会は「サウナのポテンシャルを生かし切れていない」と感じている。
今年2月に設立した静岡サウナ協議会はサウナ単体ではなく、観光や自然、食やアートなど他の分野と掛け合わせて新たな価値を生み出そうとしている。その中の1つに、ビジネスがある。協議会の発起人、神田主税理事は「サウナは商談の場と違って、肩書きに関係なく話をしやすいので交流が深まります。ゴルフや喫煙所に代わるビジネス交流の場になると考えています」と語る。
かつては公衆浴場の一部にあるのが一般的だったサウナは近年、プライベート空間を重視する形に変わっている。静岡県内にも、少人数で利用するサウナが増えている。会社経営者が気分転換やデジタルデトックスを目的に利用するケースも多い。
■イメージ覆すプライベートサウナ ビジネスにスピード感
プライベートサウナは、熱さに耐えて気合を入れて水風呂に入る“修行”のような入り方とは一線を画す。景色や会話を楽しみながら、ゆっくりと時を過ごす。一緒にサウナに入ると、初対面の人でも自然と距離が縮まる。このサウナの力が新たなコミュニティをつくり出し、ビジネスの創出にもつながると静岡サウナ協議会は考えている。
協議会のメンバーは実際に、サウナの力を実感している。神田理事は、県東部でところてんを販売する店主とサウナをきっかけに出会った。一緒にサウナに入っている時に店主からところてんの新規開拓について相談を受け、静岡県発のサウナ飯にするアイデアを出したという。さっぱり食べられて、ミネラル豊富なところてんはサウナとの相性が良い。静岡産の柑橘を加えて協議会の公式サウナ飯に決まった。
神田理事は自身が直接事業に関わらなくても、一緒にサウナに入った人同士がつながるところも目の当たりにしてきた。サウナとビジネスの組み合わせに「人と人とのつながりが、次々と生まれていきます。ビジネスの話もスピード感を持って進むケースが多いです」と可能性を感じている。
二村昌輝事務局長も「常連になっているプライベートサウナに行くと、必ず1人はつながりができます。雑談からビジネスに発展したケースもあります」と話す。最近は自身が勤務している会社が健康経営に力を入れていることから、繰り返し訪れているプライベートサウナのオーナーにサウナの入り方や効果など、健康に関する講座を開いてもらったという。
「商談の席は商材やサービスありきの話になるので、相手の懐に入るには何度も商談を重ねる必要があります。一方、サウナは気軽に相談や提案ができます。ビジネスパーソンにとって人との交流は財産です。今はデジタルの時代ですが、オフラインの機会も貴重だと感じています」
■静岡サウナ協議会 サウナでコミュニティづくり
静岡サウナ協議会はサウナを通じたビジネス創出をサポートするため、5月から協議会の会員募集を始めた。静岡県内に本社や拠点を置く法人と、県内にサウナ施設を持つ法人や個人事業主が対象で、会員同士の架け橋となるプラットフォームの役割を担う。
すでに県内10か所以上のサウナ施設が会員になっている。法人で会員になると、それらのサウナをお得に利用できたり、サウナ事業者との商品開発や事業展開でサポートを受けたりできる。
会員になったサウナ施設にもメリットがある。サウナは平日と土日で利用状況に差がある。平日の日中にビジネスパーソンが利用することで、サウナ施設の稼働率は上がる。平日に取引先とゴルフをする文化はサウナでも応用可能。天気に左右されない点はゴルフよりもアドバンテージがある。
神田理事も二村事務局長も自らの経験から「サウナ好きは前向きな人が多く、サウナをきっかけに色んなアイデアが生まれる」と感じている。活力に満ちた人との交流は、ビジネスでも私生活でもプラスに働く。「サウナ×ビジネス」の現状は、まだまだ潜在能力を生かし切れているとは言えない。
一見サウナと関係のない業種でも、サウナでの出会いが思わぬ事業に発展する可能性もある。人と人をつなげて、新たなコミュニティをつくり出す力があるサウナ。その先には、ビジネスチャンスが眠っている。
(間 淳/Jun Aida)