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劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』脚本・櫻井武晴インタビュー①

Febri

TOPICS2025.05.19 │ 12:00

劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』脚本・櫻井武晴インタビュー①


『名探偵コナン』の劇場版最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』が現在絶賛公開中だ。メインキャラクターとなる長野県警の大和敢助(やまとかんすけ)と上原由衣(うえはらゆい)は第13作『漆黒の追跡者(チェイサー)』以来15作ぶり、諸伏高明(もろふしたかあき)は今回が劇場版初登場と、根強い人気を誇る長野県警にスポットが当たっているのが特徴だ。今回は脚本を担当する櫻井武晴を迎え、企画の発端からキャラクターの見せ方などの脚本術、本作の見どころや今後の野望まで、幅広い角度で話を聞き、全3回でお届けする。第1回は、キーマンである長野県警3人の魅力について。

取材・文/岡本大介

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック) 』インタビュー_TOPICS櫻井武晴脚本家

長野県警はコナンの地方警察でいちばん優秀だと思っています

――櫻井さんは10年以上、隔年で劇場版の脚本を担当しています。今回も前作の『黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』の脚本作業を終えてから、まもなく本作に取りかかった感じですか?
櫻井 そうですね。『黒鉄の魚影』が公開される頃には、本作の打ち合わせがボチボチ始まっていました。

――コナンの映画脚本は、原作が連載中ということもあり、誰の秘密がどこまで明らかになっているか、ネタバレには毎回相当神経を使うと思いますが、今回はいかがでしたか?
櫻井 おっしゃる通り、僕にとってコナンの脚本作業は最高レベルの難易度と言ってもいいくらいなんですけど、『黒鉄の魚影』では黒ずくめの組織、その前の『緋色の弾丸』では赤井ファミリー、『ゼロの執行人』では公安と、それぞれかなりセンシティブな組織やキャラクターを描いてきましたので、それらに比べれば、むしろ今回はかなりのびのびと書かせてもらった印象です。

――たしかに今回の「長野県警」はそこまで繊細な組織ではないですね。
櫻井 少し前なら大和敢助は「黒ずくめの組織」のラムではないかという疑惑もありましたけど、その嫌疑も無事に晴れましたから。

――ちなみに今回「長野県警」を取り扱ったのは青山剛昌先生の発案ですか?
櫻井 そうです。最初にオファーをいただいたときから「今回は長野県警」というのは決まっていました。その後、青山先生から「長野県警を扱うなら大和敢助が隻眼になったエピソードをやろう」と言われまして。その原因が雪崩だということはすでに原作で描かれていたので、それで自然と舞台が雪山に決まりました。

――櫻井さんは「長野県警」についてはどんなイメージを持っていますか?
櫻井 以前インタビューでも言ったことがあると思いますけど、もともと長野県警の話は書きたいと思っていたんです。コナンにはいろいろな地方警察が登場しますけど、個人的に長野県警がいちばん優秀な気がするんですよね。逆に言えば、ヘッポコがいない(笑)。僕は大人の警察ドラマが大好きなので、長野県警であればしっかりとした警察ドラマが描けるんじゃないかというのはつねづね感じていたんです。

敢助、由衣、高明、3人のギャップを最大限に活かした脚本

――櫻井さんが思う「大人な警察ドラマ」とは何ですか?
櫻井 登場人物が感情をストレートに出して動き回るのではなくて、自分の本心はどうあれど、ひとまず今はこう動かなきゃいけないなど、「事情」による制限があるタイプのドラマですね。一筋縄ではいかないところが「大人っぽいな」と思います。

――なるほど。長野県警の敢助、高明、由衣については、どんなことを意識しましたか?
櫻井 今回の見せ方は、敢助と高明の幼なじみ感がベースというよりも、敢助と由衣の関係性を主軸として、そこにプラスαで高明を描いているイメージですね。原作の「危険な二人連れ」というエピソードで敢助と由衣のふたりが登場するんですが、そこでは冒頭から由衣がすごい推理を見せているなど、敢助と由衣もなかなかの推理力の持ち主なので、このふたりだけでも十分に歯ごたえのあるドラマになるんです。そのうえで敢助はコワモテでぶっきらぼうだったり、由衣も華奢な外見とは裏腹にすごい行動力を持っているなど、どちらも魅力的なキャラクターだなと思います。

冷静かつ情熱的な仕事ができるふたりなんですけど、いざ恋愛面になると敢助は鈍感だし、由衣は子供っぽくて可愛らしくなるのもギャップがあっていいですよね。それでいえば、高明もギャップがある人で、高い推理力に加えて三国志のキャラのような小難しいこともしゃべるじゃないですか。そういう知的で冷静なイメージがある一方、友人のピンチには自分の危険を顧(かえり)みずに飛び込んでいくアツさもあって、そのギャップは今回も見せたいなと思って書いたつもりです。そう考えると、3人ともにギャップを最大限に活かした「ギャップ書き」ですね。

諸伏高明が最後に会いたい人

――ちなみに高明については、幻で弟の諸伏景光(もろふしひろみつ)と再会するシーンがありました。これはどのような経緯で作ったのでしょうか?
櫻井 高明が窮地に立たされる展開を作った際、もし自分の命の火が消えるとなれば、彼は最後に誰と会いたいんだろうと考えたら、弟だろうと思ったんです。青山先生に「出してもいいですか?」と聞いたら「いいよ」と。まず僕がふたりのやり取りを書いたんですが、青山先生がそれをまったく別の会話に新たに書き起こしてくださいました。しかも、そのシーンの詳細なイラストまで添えていただいて。

――それは贅沢ですね。他にも青山先生がキャラのセリフを書いているシーンはあるんですか?
櫻井 高明と景光のシーンのようにゼロからというのはそこまで多くはないと思いますが、修正はたくさんあります。青山先生はプロットの段階から打ち合わせに参加されていますし、もちろん脚本のチェックもされるので、セリフの隅々まで関わっているんです。僕自身は脚本が完成したあとはノータッチになりますけど、そのあとのアフレコでも修正が入ったりしますから。いずれにしろ、キャラクター性やセリフについては青山先生にしっかりとコントロールしていただいているので、そこはファンの皆さんも安心できるポイントだと思います。

中編(②)へ続く作品情報

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大ヒット上映中!

©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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