地震、そして豪雨 二度の災害を経て輪島はいま・・・
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放送9000回を記念して制作することになった、輪島塗のお箸。このお箸を作るきっかけになったのが、今年一月の「現場にアタック」。能登半島地震からの復興にむけて取り組む、輪島塗の専門店の方に取材をしたことでした。
前を向いて進もうとしていた時の水害で ポキっと心を折られたような・・・
そのときから、「輪島の応援としてできることはないでしょうか?」と、9000回の記念グッズの制作を相談をしてきましたが、そんな中で起こった、九月の豪雨。被害状況が分からないところもあったので、少し落ち着くのを待って、お電話でお話を伺いました。田谷漆器店・代表取締役の田谷昴大さんのお話です。
田谷漆器店代表取締役 田谷昴大さん
「ポキッと心を折られたような感じです。
地震のあと、田谷漆器店だけで商品を作れないということと、お客様からいただいた注文を輪島全体で作りたいなという思いで進んできたので、いろんな職人さんや他の漆器店さんに作ってもらうということをやってきたんですが、やはり(豪雨の)被害があって、みんな前向きに進もうとしていたときの水害だったので、心が折れているというか、暗くなった感じです。
仮設の工房というのが、九月の半ばくらいに引き渡しになったんですが、その直後に大雨でその工房の入り口も泥だらけという状況なので、使っていないです。やっぱり地震の被害もすごくひどいんですが、なんていうんですかね、土砂とか流木が街のいたるところにあったりとか、家の中に入ってきたりというのが被害としてひどくて、見た目としてやられちゃうような感じです。」
元日の地震で、田谷漆器店は事務所や工場が全壊して、新しく作っていたギャラリーも火事で焼け落ちてしまいました。三月から製造を再開したのですが、工房がないので、職人さんの自宅でそれぞれ輪島塗の商品を作っています。
仮設の工房もやっと引き渡されたとたんに土砂で使えなくなってしまったし、十月末には工房代わりに大きなトレーラーハウスが導入される予定でしたが、こっちは道路の修復が遅れていて、入ってこられない状況だということでした。
本当は、直接伺ってお話を聞きたかったのですが、復旧作業が続く中、ご都合も合わず今回はお電話で、となりました。もう2024年も終わろうとしているのに、まだまだ「復興」にはほど遠い状況です。
参加店舗が減っても 踏ん張って「出張朝市」を続けています!
さらに、もう一人、地震の後に「現場にアタック」で取材したのが「出張輪島朝市」。火災で輪島の朝市の市場が燃えてしまったけれども、日本各地で出張輪島朝市を開いて、朝市に関わる人たちを盛り上げ、収入を生み出そうという取り組みです。
三月に取材した、出張輪島朝市の発起人で、魚の干物などを製造・販売している、南谷良枝商店・南谷良枝さんのお話です。
南谷良枝商店 南谷良枝さん
「週末になるとどこかで出張輪島朝市をやっているという感じです。いろんなところからお声をかけていただくことが多くなりまして、愛知県や東京、大阪、先日は仙台にまでおじゃまして。
やっぱり今回の豪雨はとてもショックでした。普通に生きてたらこういう感情っていうのはなかったんやなとは思います。仙台に行ったときは参加者がもともと少なくて、8店舗だったんですけど、行けなくなって、4店舗で行ってきました。
でも、穴を空けるわけにはいかない。動ける人が動いて、成功例じゃないですけど、繁盛したよっていうことを聞けば、仲間に入ってくれるんじゃないかなと思って。
私の商店の思いは、やっぱり買って応援食べて応援。でも、地元の農家さんは現場に来てもらって、ボランティアで活動していただくっていうのが一番のご支援になるのかなと思います。」
三月に南谷さんを取材したときは、輪島出張朝市を初めて開催する直前でした。
南谷さんの商店の加工場は地震で被災し、今も解体待ちの状態。その解体待ちの加工場の中の使える場所で作業をしていたのですが、その加工場の横の地面が豪雨で崩れてしまいました。
南谷さん自身もそのような状況で、出張朝市の出店数も減ってしまっている。でも、「場所をつくってくれる相手方との約束だから」と穴をあけないよう踏ん張っています。
おふたりの話からも、輪島にボランティアの方が入っていますが、まだまだ人手が足りていないのが見えてきました。
地震に負けず、水害に負けず。その強さを輪島塗から感じ取ってもらえたら・・・
こうした中、先ほど紹介した田谷漆器店さんは、今回の9000回に合わせてなんとかお箸を制作していただきました。再び田谷さんのお話です。
田谷漆器店代表取締役 田谷昴大さん
「僕らのなかでも非常に定番である『乾漆』というタイプのお箸なんですね。『乾漆』って『乾かす漆』って書くんですけれども、ざらっとしています。このざらざら感がすべらないのと、丈夫で非常に使いやすくて。本当に輪島塗のお箸っていったら、お箸のなかでは最高峰に高いと思うんですけど、僕自身も自分がずっと使ってきたのはこの乾漆というタイプなので、非常に使いやすくて丈夫だと思ってます。
みんな口を揃えて言うのは、『仕事をしていると気がまぎれる』と。水害の前から輪島ってほとんどダメージを受けて、見るのもつらいような状況だったんですけれども。たくさんの方から仕事をいただいているので、仕事に没頭しているときは普通の輪島塗職人に戻ると。
なんていうんでしょう、能登半島ってさらにいうと地震にも負けずに、水害にも負けずに、ものづくりをしている能登の方の頑固さというか、その強さもあったりして。まったく科学的根拠はないんですけど、僕はやっぱり人のつくる『思い』っていうのが、絶対、器にあらわれると思うので、感じ取ってもらえたらなと思います。」
大変な中でも、『仕事がある』ということが、金銭的にも精神的にも生活の支えになっているんです。そのほか、ボランティアはもちろん、輪島のものを買う、出張朝市に行くなど、私たちができる支援をこれからも考えていかなければなりませんね。
(田谷漆器店さん制作の9000回記念グッズのお箸。左が黒で、右が朱です。軽くて、握った感じも手になじんで使いやすそうでした!)
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)