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​【静岡市歴史博物館の企画展「しずおか別荘ものがたり」】 井上馨、西園寺公望を糸口に、清水・興津の別荘文化を語る

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市歴史博物館で開かれている企画展「しずおか別荘ものがたり」を題材に。

明治維新の立役者の1人として新政府で要職を歴任した井上馨(1835~1915年)、公家出身で明治末期から大正時代にかけて桂太郎と交互に首相を務めた西園寺公望(1849~1940年)。歴史の教科書にも名を残す二人は、現在の静岡市清水区についのすみかを得たという共通点がある。

企画展は1849年に発表された歌川広重の浮世絵「隷書東海道 興津」で幕を開ける。大きく帆を開いた船の奥に富士山、その手前に興津の宿と清見寺。このエリアの風光明媚が江戸時代から評価されていたことを証しする作品が導入として、別荘地、リゾート地だったころのにぎわいを浮かび上がらせる。

横砂にあった井上の「長者荘」、興津の清見潟に面した西園寺の「坐漁荘」はその象徴的な建築物。復元家屋が興津と愛知県犬山市に残る坐漁荘は、今回展でもミニチュアや写真などで往時の姿を具体的に伝える。一方、長者荘については大勢の人が集まったガーデンパーティーらしき場面の写真の掲出にとどまる。戦災で焼失したため史料が少なかったのだろうか。

井上に関してはむしろ、銅像のエピソードが強く印象づけられる構成だ。一時は危篤状態だったという井上の快気を祝って1910年に米糠山(長者山)に建立された。鋳造師岡崎雪聲(せっせい)の手によるもので、左手にステッキ、右手に山高帽でコート姿の井上が描かれている。高さ5メートル。家族で撮影した写真にこの銅像が写り込んでいるが、かなり「デカい」という印象だ。

この銅像も戦時中に供出され、現存しない。清水における井上の痕跡の多くは太平洋戦争が消し去ってしまった。史料継承を難しくするのも戦争の悲劇の一側面だろう。

(は)

<DATA>
■静岡市歴史博物館「しずおか別荘ものがたり」
住所:静岡市葵区追手町4-16 
開館:午前9時~午後6時(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):一般750円、静岡市居住の70歳以上・大学生・高校生520円、小中学生180円、 静岡市居住の小中学生・未就学児無料
会期:3月9日(日)まで

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