生産現場の裏側 ① 〜山梨県が生産量全国一位を誇るぶどう編〜
全国各地の生産現場にお邪魔して、お手伝いをしながら暮らすように旅をしています。その中で、実際現場に行ってみて初めて知ったこと、驚いたことが多々あります。「知って食べると、よりおいしい」。生産現場の裏側を体験することで、食べ物へのありがたみ、生産者さんへの感謝の気持ちが溢れてきます。みなさんにも、その現場の一コマをご紹介します。まずは筆者の拠点・山梨県で生産量全国一位を誇る「ぶどう」の裏側です!
ぶどうがぶどうの形になるまで
スーパーなどでも普通にぶどうは房で売られていますが、あの房の形は自然のものではなく、ひと房ずつ農家さんが手入れをすることであの形になっています。その作業を「摘粒(てきりゅう)」「粒抜き」などと呼びます(ここに至るまでもたくさんの工程がありますが、割愛します)。
粒を抜く前のぶどうは、こんな形をしています。
ゴツゴツです。一粒が500円玉くらいのサイズまで張ってくるので、このまま大きくなったら粒同士が押し合って果皮が割れてしまったり、粒数が多すぎて糖度が上がらなかったりします。
中に入り込みそうな上向き・下向きの粒を優先的に落とし、粒を抜いていくと、こんな感じになります。全体の粒数は35粒程度を目安にして、上の方を多めに、下の方を少なめに残すことで、あの見慣れた形に成長します。
成長期はぶどうの粒がどんどん大きくなっていくので、粒抜きが遅れるとはさみを入れる隙間がないくらいパンパンになってしまいます。農家さんは収穫期が一番忙しいイメージがあるかもしれませんが、むしろ6月のこの摘粒の時期の方が、雨が降ってもカッパを着て作業するほど時間に追われています。
シーズンが終わるまでに、いったい何房の粒を抜くことになるのか……。実際に体験するまでは、こんなに果てしない手入れが行われているなんて思ってもいませんでした。
ちなみに摘粒は、好き嫌いが分かれる作業でもあります。筆者はパズルゲームのようでとても好きで、摘粒シーズンの終わりは寂しくなるほど。しかし、それを農家さんに言うと変人に思われることが多いです(笑)。
「ちょっと高いな」と思うものでも、その裏側の努力を思えば納得です。いつもでなくてもたまには、当たり前に食べているものの生産背景に、思いをはせてみてください。