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2025年の税制改正により何が変わった?個人・企業のポイントを解説

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税制改正イメージ

2025年の税制改正は、物価上昇や少子高齢化などによる税負担の増大という現状の問題を解決するための改革です。政府は、所得税の基礎控除や給与所得控除の引き上げ、相続税・贈与税の制度の見直し、法人税の軽減措置再検討など、多角的な施策を実施します。

個人では、節税対策を通じて可処分所得を増加させ、老後資産形成を支援し、企業は投資促進や賃上げ支援とともに、財務体質の強化に向けた戦略の再構築が必要です。そのため、最新情報を的確に理解し、専門家の助言を受けながら迅速に対応策を講じることが、今後の経済成長と持続可能な社会実現の鍵となります。

本記事では、それぞれのポイントを解説するため、最後まで確認してください。

2025年の税制改正とは?何が変わったのか

2025年の税制改正は、個人・企業ともに税負担の見直しが図られる改革です。

個人向けでは、いわゆる「103万円の壁」への対応策として、基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われます。また、老後に向けた資産形成を促すため、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の拠出限度額が見直される点も重要なポイントです。

企業向けは、中小企業向けの軽減措置が延長される一方で、高所得企業に対しての税率引き上げが進められるなど、企業の規模や所得水準による税負担の変化が盛り込まれています。

また、防衛力強化にかかる財源確保や、グローバル・ミニマム課税など新設される施策もあり、日本国内にとどまらず、国際的な課題への対応も同時に進められる見通しです。
 

2025年の税制改正の全体像と背景

今回の税制改正の大きな特徴は、賃上げと投資によって経済が成長することを見込んでいます。例えば、物価上昇局面での税負担の調整や就業調整(いわゆる「103万円の壁」)への対策として、基礎控除・給与所得控除の引き上げや、新たな控除(特定親族特別控除)の創設が盛り込まれました。

また、老後の資産形成を促すため、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の拠出限度額等を拡充することも計画されています。なお、企業では、中小企業経営強化税制が拡充されることで、投資意欲の高い中小企業を支援するとともに、地域経済の好循環を生み出すことも狙いの1つです。

一方、防衛力強化にかかる財源確保のために「防衛特別法人税(仮称)」として法人税に対する付加税の導入が予定されています。他にも、経済環境のデジタル化に対応するため電子帳簿保存制度の見直しやリース会計基準の改正などもあり、改正に対して柔軟に対応することが必要です。
 

個人・企業が影響を受ける主要な変更点

個人や企業が、今回の税制改正において影響を受ける点はどういった内容かを、それぞれの変更点を中心に見ていきましょう。
  

個人が影響を受ける主な変更点

ここでは、個人に対する課税の主な変更点を見ていきます。

基礎控除・給与所得控除の引き上げ
基礎控除額は、合計所得金額2,350万円以下の個人に対して48万円→58万円、給与所得控除の最低保障額は55万円→65万円に引き上げられます。物価上昇局面による、個人の実質的な税負担を緩和することを狙っています。

若年層扶養への新たな控除(特定親族特別控除)の創設
大学年代(19歳以上23歳未満)の子ども等について、所得金額に応じた段階的な控除を受けられる制度が新設される予定です。

確定拠出年金(DC・iDeCo)の拠出限度額等の引き上げ
老後に向けた資産形成を後押しするため、企業型DCやiDeCoの拠出限度額が拡大される予定です。

いずれにせよ、これまでの物価上昇による負担を軽減させるための施策が取られています。また、今後の老後不安を解消するために、さらなる資産形成の推進が求められているでしょう。
  

企業が影響を受ける主な変更点

先ほどの個人に対し、ここでは企業の変更点を確認していきましょう。

中小企業者等の法人税軽減税率の特例延長
企業の資金繰りを軽減させるため、所得800万円以下に適用される15%の特例税率が2年間延長されます。しかし、所得金額が10億円を超える場合は15%から17%に引き上げられます。また、グループ通算制度を適用している法人は対象外です。

中小企業経営強化税制の拡充
「売上高100億円を目指す中小企業」を支援するため、投資を行った際の特別償却や税額控除の制度が強化されます。

防衛特別法人税(仮称)の創設
防衛力強化のため、財源を確保する策としては、法人税額に4%の付加税が上乗せされる制度が導入されます。なお、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される見通しです。

その他、リース会計基準の変更や電子帳簿保存制度の見直しなど、会計処理・税務手続きに関わる改正も含まれています。税務上は従来どおりの処理となる場合でも、会計上は新基準に移行して別表調整が必要になる場合があるため、自社の経理状態をしっかりと把握しておきましょう。

個人に影響がある税制改正ポイント

2025年度の税制改正では、個人の節税対策に大きな変化が見込まれます。

所得税では、基礎控除と給与所得控除がそれぞれ10万円引き上げられることで、従来の「103万円の壁」が「123万円」に拡大されるため、低〜中所得層の負担軽減が期待されるでしょう。

また、生前贈与の取り扱いや相続税制度の見直しにより、資産移転のタイミングが重要になります。さらに、住宅ローン控除やふるさと納税の制度改正も見込まれるため、今後の家計管理の見直しも必要です。
 

① 所得税の変更点:税率・控除の見直し

所得税では、2025年分以降、基礎控除と給与所得控除の最低保障額がそれぞれ48万円から58万円、55万円から65万円に引き上げられます。従来の「103万円の壁」が「123万円の壁」へと引き上げられる点が重要なポイントです。

そのため、低〜中所得層の税負担が軽減され、年末調整や確定申告でより多くの控除を受けられるようになるでしょう。また、特定親族特別控除が導入されるため、大学生など一定の所得以下の扶養親族がいる場合に追加の控除が受けられるなど、学生アルバイトの就業調整の負担を緩和する効果も期待されています。

改正によって、物価上昇や就業環境の変化に応じた「家計の負担を軽減」することが目的であり、各家庭や個人事業主は、最新の税制情報をもとに専門家のアドバイスを活用するなど、最適な節税対策をすることが大切です。
 

② 相続税・贈与税の改正:生前贈与の扱いはどうなる?

2025年の相続税・贈与税改正では、生前贈与についていくつか見直されます。

まず、直系尊属からの結婚・子育て資金一括贈与に対して、非課税措置の適用期限が2年延長され、令和9年3月31日までとなる予定です。また、農地や事業用資産の納税猶予制度では、営農ができなくなる事由が発生した場合、貸付等の要件が拡充されます。

他にも、非上場株式等の納税猶予特例は、役員へ就任する際の要件が撤廃され、贈与直前に役員就任していれば適用されるなども改正の対象です。相続登記に関しては、登録免許税の免税措置が2年延長され、相続税の物納制度における計算基準も見直されます。

この改正によって、計画的な相続対策と資産運用が今まで以上に重要となるため、場合によっては税理士やファイナンシャルプランナーへ相談しながら、最適なプランを策定しましょう。
 

③ 住宅ローン控除・ふるさと納税の変更点

2025年以降も、住宅ローン控除は継続されますが、適用要件が今まで以上に細分化される点に注意しておきましょう。新築住宅では、省エネ基準に適合している住宅以上が住宅ローンの控除対象となる他、子育て・若者夫婦世帯向けの優遇措置や床面積の緩和措置も延長されます。

また、従来より高い借入限度額が設定されることで、控除額も増加するため、住宅取得後の経済的負担が軽減される見通しです。ふるさと納税に関しても見直しが進んでおり、2025年10月以降からポイント付与の廃止や返礼品基準の厳格化が検討されています。自治体間の「返礼品競争」に一定の制限がかかるため、地域振興における本来の目的が強化されるでしょう。

また、返礼品は地域の地場産品でなければならず、寄付金の一部で調達される場合、その費用は寄付額の3割以下に抑えられるなど、基準が明確化されます。住宅ローン控除やふるさと納税は、家計において重要度が高まっている施策です。そのため、改正後の適用条件を理解するとともに、計画的な活用が求められるでしょう。

企業に影響がある税制改正ポイント

企業に影響のあるポイントとしては、主に中小企業向けの法人税軽減措置の見直しと、投資促進を目的とした優遇措置の変更などです。所得金額800万円以下に適用される税率の引き上げや、一部企業の軽減措置適用除外、特定設備投資に対する優遇拡充などが挙げられます。

一方、インボイス制度については、2025年時点で大きな改正は予定されてはいませんが、2026年10月以降に段階的に仕入税額控除の控除割合が引き下げられていく見通しです。すぐに対応が求められるわけではありませんが、将来的な影響を見据えて、経理システムの見直しや取引条件の検討を進めるなど、対策が必要となるでしょう。
 

① 法人税の優遇措置・減税策の変更

法人税の税制改正では、中小企業向けの法人税について企業規模や所得の水準に応じて軽減措置が見直されます。まず、中小法人について、所得金額が800万円以下に適用される税率は15%から17%に引き上げられる点です。

また、所得金額が10億円超の中小法人や、グループ通算制度を適用する法人は軽減措置の対象外となります。これまで中小企業が得られていた税負担軽減に対する恩恵が、一部の企業では見直されることで、財務基盤の強化やグループ再編の必要性が迫られる可能性に注意しておきましょう。
 

② 中小企業向けの税制優遇措置の見直し

2025年度の税制改正では、中小企業の投資を促進するための税制優遇措置が見直されます。中小企業経営強化税制では、特定設備投資の優遇措置が拡充され「100億円企業」を目指す中小企業向けに、新たな優遇制度が導入される予定です。

そのため、投資利益率が7%以上を計画している企業は、設備投資に対する税制優遇を受けられる可能性があります。なお、対象となる設備は、機械装置(160万円以上)、工具・器具備品(30万円以上)、建物・附属設備(1,000万円以上)であり、積極的な設備投資を行う企業にとっては有利な制度です。

一方で、グループ通算制度を適用する法人は、従来の中小企業向け優遇を受けられなくなるため、事業の拡大やグループを再編することで税負担が増すケースも考えられます。企業は、どの優遇措置の対象となるかを判断し、その上で投資計画や賃上げなどの見直しを進める必要があるでしょう。特に、適用条件の正確な把握に努めるためにも、税理士や財務専門家との連携が今まで以上に大切です。
 

③ インボイス制度の適用範囲と対応策

2023年10月に導入されたインボイス制度は、2025年時点では大幅な変更は予定されていません。ただし、免税事業者との取引に関わる仕入税額控除の経過措置が段階的に見直されるため、今後は対応が求められるでしょう。

2026年10月には控除割合が80%から50%へ、2029年10月には完全に控除が不可となるなど、取引コストが増加する可能性があるため、仕入先や取引条件の見直しを迫られる可能性があります。

一方で、インボイス制度自体の影響を懸念する声も強まっており、埼玉県議会では制度自体の廃止を求める意見書が可決されるなど、反発の動きも強まっているのも確かです。とはいえ、現時点において、政府がインボイス制度の廃止や抜本的な見直しを行う可能性は低いと考えられ、現行の制度に対応する準備をしておくことが望ましいでしょう。

消費税・社会保険料の変更点

2025年度の税制改正では、消費税自体の税率変更は当面行われず、現行の税率が維持される予定です。しかし、免税制度では購入時免税から出国時返金方式へ移行するなど、運用面の見直しが進められるでしょう。

また、社会保険の引き上げも今回の改正としては大きな点で、企業と従業員ともに負担が増える可能性があります。今後の動向によっては、いくつかの見直しが迫られるため、それぞれの項目を見ていくことで対応できるようにしておきましょう。
 

消費税率や軽減税率の見直しはあるのか?

税制改正において、消費税率や軽減税率そのものに大幅な変更はなく、現行の10%と8%が当面は維持される見通しです。ただし、外食とテイクアウトの適用区分が複雑で、制度の分かりにくさについて指摘され始めているため、将来的に見直される可能性があります。

一方、外国人旅行者向けの消費税免税制度に対して、大幅な改正がある点に注意が必要です。具体的には、従来の購入時免税方式から、出国後に税金が払い戻される「リファンド方式」の導入が見込まれます。制度が変更されることにより、不正な免税取引が抑制されるとともに、外国人観光客の利便性向上も期待されるでしょう。

また、免税対象品の範囲や消耗品の購入上限額の変更も予定され、インバウンド事業を行う小売店は、制度変更によるレジシステムの改修などが求められる可能性があります。特に、免税販売を行う事業者は、新制度への移行スケジュールを確認するとともに、システムや業務フローの見直しなどが必要です。
 

社会保険料の引き上げと家計・企業負担の増加

社会保険料の引き上げは、今回の税制改正において大きな注目点となっています。

自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険は、年間保険料の上限額が3万円引き上げられるため、高所得層の負担が増える見込みです。また、パート・アルバイトについて社会保険の適用範囲が拡大することで、一定の収入を超えると社会保険料が発生する仕組みになるため、手取り額が減少する可能性もあります。

さらに、2025年4月から雇用保険料率が0.5%に引き上げられる予定であり、企業と従業員の双方に負担がかかるでしょう。企業にとっては、人件費の増加や雇用形態の見直しが避けられず、給与設計の調整などが出てくるかもしれません。

税制改正による影響と対策

2025年の税制改正は、個人と企業双方に大きな影響を与えます。個人は、基礎控除や給与所得控除の引き上げ、住宅ローン控除や生命保険料控除の拡充により、節税策が強化され、家計の負担軽減が期待されます。

一方、企業は法人税の軽減措置見直しや、社会保険料の引き上げに伴うコスト増を踏まえ、経営戦略や投資計画の再検討が求められるでしょう。
 

個人が取るべき節税対策

個人の所得税は、基礎控除と給与所得控除の最低保障額の引き上げによって「103万円の壁」が「123万円の壁」に変更となります。そのため、パートやアルバイトの働き方の柔軟性が向上し、より多くの収入を得られるでしょう。

一方で、収入増加に伴い社会保険の適用範囲も広がるため、手取り額を考慮しながら働き方を調整することが重要です。今後は、個人も節税を行う必要があるため、延長される住宅ローン控除の活用や、ふるさと納税を活用することで少しでも、節税を意識した取り組みが望まれます。

さらに、生前贈与や結婚・子育て資金の非課税措置の延長により、資産の有効活用や相続対策の幅が広がる見込みです。他にも、確定拠出年金(DC)の一時金受取時の税制が見直されるため、退職金の受け取り時期を適切に調整することで、節約につながる可能性があります。

改正点を踏まえ、自身の所得や家族構成に応じた節税対策を検討することで、将来の資産形成と税負担の最適化が図れるでしょう。
 

企業が準備しておくべき税務戦略

企業が納める法人税では、特定の業種や規模に応じた税率調整が進み、研究開発費や設備投資に対する控除制度の見直しが実施されます。そのため、各企業は改正内容を踏まえた最適な投資計画の策定が求められるでしょう。

なお、環境税が強化されることによって、企業のエネルギー消費に対する課税が増える可能性があります。今後は、再生可能エネルギーの活用や省エネ設備の導入を進めることで、環境対応型の税制優遇措置が受けられる場合は、戦略的な対応が必要です。

さらに、社会保険料の引き上げも企業の人件費に影響を与えるため、役員報酬や給与設計を見直し、事前確定届出給与などの節税策を活用しておきましょう。

これらの改正に対応するためには、最新の税制情報を正確に把握し、専門家と連携しながら、社内体制の整備を進めることが不可欠です。単なるコスト増として受け止めるのではなく、これを機に業務効率化や事業改革を進め、競争力の強化につなげる姿勢が求められます。

まとめ

2025年の税制改正は、個人および企業の財務計画に大きな影響を及ぼすとともに、各層が抱える課題に応じた最適な対応策を講じる必要性が浮き彫りになりました。

個人では、所得税控除の引き上げにより、非課税枠が拡大され、働き方の柔軟性が向上するとともに、老後の資金を確保する選択肢が増えています。

一方、企業においては、法人税の軽減措置の見直しや設備投資促進策、防衛特別法人税の導入など、税務管理の複雑化が進む中で、経営戦略の再構築が必要です。

いずれの場合も、最新の税制改正情報を正確に把握し、税理士や専門家との連携を強化することが、将来的な税負担軽減と競争力の維持につながります。早期の準備と計画的な対応が、経済的な安定と成長のポイントとなるでしょう。

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