田中有紀『Treasure Chest』インタビュー――初めてのワンマンライブを経てリリースする宝物の1stシングル
──昨年6月にソロデビューが発表されてから、もうすぐ1年が経ちます。
「発表前からレコーディングはスタートしていて、10月にデビューアルバム『Crier』をリリースし、今年の1月には初めてのワンマンライブ(『YUKI TANAKA 1st Live:Crier』)を開催させていただいて…。あっという間の1年だったなと感じています」
──その中で、どんな手応えを感じていますか?
「みなさんから、お手紙やSNSで言葉を届けていただく機会が増えたんです。嬉しいのと同時に、レコーディングのときに込めた想いやライブでのパフォーマンスが、確実に誰かのもとに届いて、響いてるんだと感じることができました。海外の方からの反応もあって、“音楽は国境を越える”ということも実感しています」
──5月21日に、1stシングル『Treasure Chest』がリリースされました。シングルには、TVアニメ『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』の第1部、第2部、第3部ED主題歌である「Treasure Chest」、「MIRROR」、「Tapestry」が収録されています。
「「Treasure Chest」は第1部の曲なので、始まりを感じられる曲調もそうですし、歌詞も<今から夜明けを 迎えにゆこう>というフレーズから始まって、すごくワクワクするような、未来への希望が詰まった曲だなと、初めて聴いたときに感じました。そのイメージを大事にしたいと思いながら、AメロBメロでサビに向けて助走をつけていくイメージを歌うときには意識しました。歌詞に<宝物は 今 そばで笑うキミだ>というフレーズがあるんですが、その“キミ”と夜明けを迎えに行きたい、明日に向かって走って行きたいんだよという気持ちを、温かく表現したいと思って歌いました。<今から夜明けを迎えにゆこう>で始まって、サビの最後が<夜明け空 朝陽の中>で締めくくられる歌詞が、なんかキュンとくるというか…」
──“キュンとくる”を、もう少し紐解いていただくとすると?
「夜明け前のちょっと薄暗い時間に目覚めて、大切な“キミ”と一緒に走り出したところから、サビの最後では降り注ぐ朝陽を迎えられたっていう…その情景を思い浮かべて、そのストーリーにキュンとしました。聴いていただく方にも、その情景を感じていただけたら嬉しいです」
──田中さんは、歌詞からイメージを膨らませることが多いですか?
「歌詞のここを伝えたいというポイントをピックアップして、そこから歌うときの感情を作っていくことは多いです」
──第2部ED主題歌の「MIRROR」は、「Treasure Chest」とは雰囲気がガラッと変わって…。
「そうなんです。SNSで反響を追ってみたら、“第1部のED主題歌と雰囲気が違う!”という感想があって、しめしめって思っていました(笑)。「MIRROR」は、<鏡に映る私は誰よりも美しい>という始まりの歌詞のインパクトが強いんです。私も初めて聴いたときは、凛々しく自分の強さを宣言していく曲なのかなと思ったんですけど、聴き進めていくと印象が変わってきました。例えば、<疲れた体を癒すように私 宿り木を求めてた>という歌詞からは漏れ出た弱さが感じられますし、全体を通して揺れ動く心が繊細な歌詞で表現されています。考えてみたら、鏡の前の自分って基本的には自分しか見ないものだから、ありのままでいいって自分に言い聞かせることができる場所でもあるんですよね。私自身、ちょっと不安になったときは鏡に映った自分に“大丈夫だよ”って声をかけたりします。“葛藤や不安を抱えてたってそれでいいじゃん、私自身はすごく素敵だよね”って認めて、“前に進んでいこうよ”って言ってくれている曲のような気がしました。楽曲から受け取ったそういう想いを、歌声に乗せられるよう意識して歌いました」
──田中さん自身も、鏡の前で自分を鼓舞することがあるというのが興味深いです。
「イベントの直前に、誰もいないのを確認して鏡に映った自分に声をかけたりします。“ちょっと緊張してんじゃん”とか(笑)。そうすると、冷静になれる気がするんです。鏡で自分の顔を見て“意外と顔色がいいよ”とか、“本当に緊張してんじゃん!”とか(笑)、友だちを励ましているのに近いかもしれません。実際、鏡の前の自分に声をかけると大丈夫だと思えたりするので、みなさんにもオススメできる自分の落ち着かせ方です!」
──シングルの3曲目には、第3部ED主題歌の「Tapestry」が収録されています。
「「Tapestry」は、第1部、第2部に続きアニメとリンクする楽曲なので、それまでの出会いと別れを経て、成長した登場人物たちの今があるということを意識して歌いました。いろんなことを乗り越えてひと皮もふた皮もむけるには、いろんな葛藤があったと思うんです。“ああいうことをして良かったのかな、別れて良かったのかな”とか。でも、それは自分たちで選んだことではあるから、最終的には落とし込んで前を向いていると思うんです。だから、その気持ちを踏まえて、“選んできた道が正しいんだよ”って言ってあげられるような歌が歌えたらいいなと思って、レコーディングをしました」
──初回限定盤には、『YUKI TANAKA 1st Live: Crier』の模様を収録したライブ音源CDがパッケージされます。
「ソロアーティストとしてデビューして、ワンマンライブをすることは小さい頃からの夢でした。その夢が叶うことはもちろんすごく楽しみだったんですけど、いざ直前になるとすごく緊張してしまって…。あんなにも楽しみにしていて、こんなにも望んでいたことなのに、近くなると人ってここまで足がすくむんだって。一周まわってなんだかちょっと面白くなるくらいに(笑)。でも、本番のステージでは一緒にライブを作ってくださるバンドメンバーさんもいますし、たくさんのスタッフさんも見守ってくださっている。何より、お客さんの声を聞くと、あっという間に緊張を忘れて、“ライブっていいな!”って、実感しました。“もっともっと私の歌で、私の音楽で、みなさんにお返ししていきたい“という気持ちにもなって。エネルギーを交換し合ったり、ぶつけ合ったりしてもっと大きなエネルギーがあふれる空間にできるって、ライブの醍醐味だと思います。初めてのワンマンライブ、すごく楽しかったです。そのときの熱量が、ライブCDからも伝わってくれたらいいなと思います。1つの大きなものをみなさんと作り上げられたことは自信にもなりましたし、ファンの方と新たな絆も生まれたのではないかと思います」
──今後の活動については、どんなことを思い描いていますか?
「ソロアーティストとしては、47都道府県でイベントを開催したいです! いろんなイベントがありますけど、どうしても都内や大都市圏に集中してしまうので、遠くに住んでいるファンの方にも会いにいける機会を少しでも増やしていきたいです。声優としては、もうすぐデビューして8年になります。いろんな方たちが支えてくださったり、見守ってくださってここまで来れたと思っているので、すごく感謝しています。これからも感謝の気持ちを忘れず、より深く広く、そして濃く頑張っていろんな役に挑戦していきたいです。機会があれば舞台にも挑戦してみたいと思っています!」
──最後に、『Treasure Chest』という1st Singleのタイトルに紐付けた質問をさせてください。“Treasure Chest”=“宝箱”ですが、田中さんにとっての宝物は?
「ファンの方たちからいただく言葉やお手紙は、本当に宝物です。お手紙はその内容はもちろんですけど、便箋やシールも嬉しいんです。私が“宇宙が好き”とか“お寿司が好き”って言っているので、宇宙柄の便箋を使ってくださったり、お寿司のシールで封筒を閉じてくださったり、本当にありがたい大事な宝物です。あとは、「Treasure Chest」に<宝物は 今 そばで笑うキミだ>という歌詞がありますけど、私自身もいろんな“キミ”=“人”とのつながりを大切にしていきたいですし、宝物だと思っています」
──“心の中の宝物”=“心の中で大切にしているもの”はありますか?
「“自分を信じる気持ち”です。緊張しいですし、ものすごく不安になったり焦ることもあります。でも、最終的に自分は夢を実現できると信じること。絶対に譲れない夢は、誰に何を言われてもあきらめない。そういう気持ちは自分の宝物だと思いますし、大切にしています」
(おわり)
取材・文/大久保和則
RELEASE INFORMATION
2025年5月21日(水)発売
LACM-34691~2/3,740円(税込)
特典:『YUKI TANAKA 1st Live: Crier』ライブCD&ブロマイド3枚
田中有紀『Treasure Chest』
2025年5月21日(水)発売
LACM-24691/1,760円(税込)
田中有紀『Treasure Chest』