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自閉症息子が2歳半の時に離婚、波乱の子育て。わが子に「どんな人生を歩んでほしいか」母の思いは…

LITALICO発達ナビ

自閉症息子が2歳半の時に離婚、波乱の子育て。わが子に「どんな人生を歩んでほしいか」母の思いは…

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

年少になる直前に離婚、2人だけの生活がスタート!!

コチ丸が保育園の年少になる直前、コチ丸パパと私は離婚をしました。離婚後、私は実家の隣町で保育園近くのマンションを借りて、コチ丸との2人暮らしを始めました。仕事は以前と変わらず、名古屋にある育児関係の会社で働いていたので、毎日1時間半かけて電車通勤をすることになりました。そのため、コチ丸は朝7時半頃には保育園に登園し、帰りは19時頃。まさに保育園のヌシのように「一日中園にいる男」でした(笑)。

当時、私は正社員だったもののお給料はそれほど高いわけではなく、家賃や光熱費などは毎月ギリギリ。「来月電気止めますよー」、「家賃引き落とせませんでしたよ」という紙をポストに入れられたことも何回かありました。そんな生活だったので、この頃の私は心に余裕がなく、常に気が立っていました。

波乱の2人暮らし。保育園児にして家出騒動勃発!

あらゆる面で余裕のない生活に追い討ちをかけるように、マイペースでこだわりの強いコチ丸との暮らしは、怒鳴り合いの大喧嘩の連続でした。当時の私は、「なぜこんなにも育児がうまくいかないのか」と理由も分からず苦悩していました。ちょっとしたことで言い合いになったり、怒ってコチ丸が床をドンドン足踏みしたり……。当時はマンション住まいだったので、隣の方から壁をドンドンと鳴らして騒音への無言の苦情をうけることもありました。わが家の騒音に耐え切れなくなって、隣の方が乗り込んでこられるかもしれないと、常にハラハラしていました。

ある日、いつものように大喧嘩をしたあと、疲れ果てた私が部屋でテレビをぼんやり見ていると、隣の部屋にいるはずなのに妙に静かなコチ丸。気になってそっと部屋を覗き込むと、自分の大事なおもちゃや本、三輪車などを玄関から廊下を通り部屋まで全て一列に並べているところでした。

「何やってるの?」と恐る恐る尋ねると、「ママなんか嫌いだ!これから家出する!」

当然、並べた荷物たちがコチ丸について動くわけもなく(笑)、全て持ちきれもせず、コチ丸の人生初の家出計画は失敗に終わりました。

どんな人生を歩んで欲しいか?保育園の頃から考えていた私

この時期からコチ丸のじっとしない様子は顕著に表れるようになっていました。病院や買い物なども、家に1人では置いていけないので連れていくしかないのですが、3分と同じところでは待てません。2人きりの外出では、いかにコチ丸の気を長く引けるかが常に課題でした。

そんななかでも私はコチ丸には早くから大人と付き合う環境を意識して与えてきました。「手が掛かる子」という私だけの偏った見方で育てるのは良くないという気持ちが強かったからです。

シングルで育てているがゆえに私の考え方の押し付けが強く出てしまわないよう、コチ丸にはいろんな大人の考えに触れて、「環境」に育ててもらいたいと思っていました。

今もコチ丸が地元に帰ってくると髪を切りに行く美容院がありますが、そこへ通い始めたのもこの頃からです。初めてお店に行った時、座っているのが嫌で店内で大暴れ(焦)して、保育園児にして店長に出禁を食らいそうになったコチ丸……。今となっては店長と男同士の大事な話(主に下ネタ)をする仲です(大感謝)。

歯医者さんもこの時期から定期的に通っていましたがやはり最初は大暴れ。首にエプロンが掛かるのがイヤなど敏感なところが多いコチ丸でしたが、担当の歯科助手さんが根気よく付き合ってくれました。コチ丸が歯医者でエプロンを掛けられるようになったのは中学に入ってからでした(笑)。

私たち親子の周りには、コチ丸を子ども扱いせず、同じ目線で話してくれる方が多く、幼いうちからいろんな世界観や選択肢をコチ丸は親以外から与えてもらって育ったと思います。

子どもを1人で育てていくことへのプレッシャーのなかで過ごした2年間

コチ丸との2人暮らしは、ほかにもいろんなことがありました。大雨の中、膝まで水に浸かりながらコチ丸をおんぶして保育園から帰ったり、私が割れた皿で手を深く切ってしまい、コチ丸を病院の待合室で待たせたまま緊急縫合手術を受けたり(怖)。この時期が一番大変だったなと、今振り返っても思います。

もちろんコチ丸のマイペースさや、個性に翻弄されていたことも事実ですが、それよりも「私が子どもを自分の力で育てなければいけない」というプレッシャーが常に続いていました。

しかし本当にあの頃はよく頑張ったな、私。と褒めてあげたいです、とりあえず(笑)。

そして何より、「よくこんな母に1人でめげずについてきてくれたな、コチ丸」と、もっともっとコチ丸も褒めてあげたいです。ありがとう。

執筆/あき

(監修:鈴木先生より)
母子家庭であることだけでも大変なのに、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のコチ丸さんを頑張って育てている私こと、お母さまはよく考えて行動していると思います。お母さまの努力は決して無駄にはなりません。最終的にコチ丸さんが自立できればいいのです。北海道での寮生活がさらにコチ丸さんの社会性を磨いていることでしょう。「かわいい子には旅させよ」の精神で、早めの親離れはお母さまにとっては寂しいかもしれませんが、コチ丸さんご本人の自立性を磨くにはいい機会だと思います。数年後には必ずやお母さまに恩返ししてくれることでしょう。会えなければ手紙でもいいので寮で頑張っているコチ丸さんを褒めてあげてくださいね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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