【「本郷」第175号】 「文化財」としてのシズオカの酒。ウイスキー蒸留所がテーマ
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は2025年1月1日に発行(表4表記)された吉川弘文館のPR誌「本郷」第175号を題材に。
奇数月発行の同誌には、昨年9月発行の第173号から筆者が寄稿している。「文化財取材日記」というお題が与えられたので、静岡県内の「食の文化財」とも言うべき「酒造り」を提案した。編集部側から快諾を得て、今回が3回目の執筆である。
過去2回はクラフトビールの醸造所を取り上げた。第1回は名実ともに日本のクラフトビールブランドの代表格である「ベアードブルーイング」(伊豆市)。ブライアン・ベアード代表の「アメリカン・ドリーム」ならぬ「シズオカ・ドリーム」の実現の過程を記した。
第2回は県内最古の醸造所に敬意を表そうと「御殿場高原ビール」(現GKB、御殿場市)をテーマとした。1994年の規制緩和の後、国内には「地ビール」と名が付く醸造所が雨後のたけのこのごとく現れたが、現在は操業していない所も少なくない。御殿場高原ビールは「ビール冬の時代」を品質の高さと戦略の確かさでサバイブしてきた。
今号は初めてビールを離れた。「静岡市のウイスキー」である。文中にも書いたが、域内に複数のウイスキー蒸留所が存在する自治体は全国に七つしかない。静岡市の強みはなんと言っても南アルプス、大井川水系、安倍川水系の水だろう。
山懐の2カ所の蒸留所は、まだウイスキー製造を始めて間もないが、日本国内のみならず世界を見据えている。「シズオカ」が世界中のウイスキー愛好家が認めるブランドになる日を楽しみにしている。
(は)