【野外フェス「FUJI & SUN’25」2 日目】 フェスで野外活動の体験講座。田中陽希さんにトレッキングポールの基礎を習う
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は、5月31日~6月1日に富士市の富士山こどもの国で行われた野外フェス「FUJI & SUN’25」の2日目を題材に。
同フェスは「MUSIC」「ACTIVITY」「CAMP」を3本柱としている。このうち「ACTIVITY」では、冒険家の支援やマネージメント、イベント企画などを手がける一般社団法人人力チャレンジ応援部(神奈川県大和市)が、野外活動に関わるさまざまな講座やトークイベントを企画している。
今年も「火起こしチャレンジ」「天下一ごはん炊きサミット」「熊肉料理の作り方と試食会」「山地図ナビゲーション 講習」など、実践を伴ったユニークな講座がそろっていた。
2日目午後の「陽希的登山テクニック」は、人力チャレンジ応援部のプロアドベンチャーレーサー田中
陽希さんが山歩きなどに使うトレッキングポールの使い方を、実践を交えて教えた。「使い慣れると便利だが、使い方を間違えると危ない道具にもなる」という。
約20人の参加者にそれぞれ1組ずつ、トレッキングポールを渡し、起伏に富んだ「富士山こどもの国」の中でも特にアップダウンが激しい「爆裂火口」の周辺で、歩き方のこつを伝授した。
トレッキングポールはアルミ製、カーボン製が主流で愛好家からトレイルランニングのランナーまで幅広いユーザーがいる。道具として用いる上での大前提は「ちょっとだけ体重を預けるもの」であることだ。全体重をかけると、道具に負荷がかかりすぎ、事故の原因になる場合もある。
伸縮可能なポールは、登りと下りで長さを変える。「登りは短く、下りは長く」が基本だ。ポールは持ち手部分のループに下から手を通して握る。
登りを歩く際は3~4メートル先を見るといいという。足とトレッキングポールが同時に着地するイメージが重要だ。下る際は、特に急斜面では2本のポールを前方に同時に突く「ダブルポール」を使えば楽になる。なだらかな斜面でも先にポールを突いて歩くと、足の筋肉を使いすぎずいわゆる「膝が笑う」状態を回避できるという。
参加者はキツい斜度の「爆裂火口」で登り下りを練習した。一般的な音楽フェスでは決して見ない風景である。田中さんは富士山吉田口登山道の9合目から頂上にかけての登山道を例に、「トレッキングポールが役に立つ道と、立たない道がある」と話した。ゴツゴツした急斜面の岩場では、ポールはまとめて片手に持ち、態勢を低くする形で自分の手と両足の3点重心を心がけた方がいいという。
田中さんは「(トレッキングポールを)当たり前のように使えるようになると、疲れにくくなる。ただ、無理に使うと自分を追い込む道具になる」と警鐘を鳴らした。
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