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国立のカフェ『ord coffee shop』。明るさを意識した自家焙煎コーヒーとスイーツで気分転換

さんたつ

国分寺 ord coffee shop

『ord coffee shop(オルドコーヒーショップ)』は、国立駅から徒歩8分のところにあるコーヒーとスイーツのお店。オープンは2018年だが、2023年にリニューアルして焙煎機を導入。焙煎度合いの異なる自家焙煎のコーヒーを扱い、スイーツもコーヒーの繊細さを邪魔しないように作っている。

ord coffee shop(オルドコーヒーショップ)

夫がコーヒーを担当し、妻がスイーツを担当。リニューアルで自家焙煎に

「もしかしてカフェなのかな」と思わせる控えめな外観。

『ord coffee shop』は、国立駅北東を走るバス通りの緩やかな坂道を上りきった交差点の角にある。入り口のガラスに店名が書いてある程度で、看板らしい看板はない。店の目印になっているのは黒い2本の煙突だ。この煙突は店内の焙煎機につながっている。

店を営むのは石川直樹(なおき)さんと里枝(りえ)さん夫妻だ。お菓子を担当する里枝さんは、パティシエとして洋菓子店で勤務したことやフランスで勉強したこともあるが、「コーヒーや音楽のある空間に溶け込むようなお菓子を作りたい」と、経験を積むためカフェで働くようになった。

コーヒーを担当する直樹さんはデザインの仕事を経て、コーヒーに携わるようになった。異業種に転じた理由は「仕事の合間に訪れたカフェで、まだ珍しかったスペシャルティコーヒーのいろいろな味わいに魅了されました」とのこと。

そんな2人は職場で出会い、2018年に独立を果たした。それから5年目の2023年に2カ月ほどかけてリニューアル。リニューアルのいちばんの目的は、焙煎機の導入だった。

一度に5kgまで焙煎できる焙煎機はポーランドのCoffed社のもの。

「自分で豆を焼いて素材作りをして、それをお客さんに飲んでもらいたいという気持ちが強くなりました」と直樹さんは焙煎機を導入した理由を話す。

豆のバリエーションを楽しんでもらうため、常時6種類以上の豆を用意。しかも焙煎度合いも浅煎りから深煎りまでと幅広い。「深煎りは、香りと甘さがしっかり出るように、逆にロースト感はあまり感じないようにしています。浅煎りは酸味のイメージがありますが、それよりも生き生きとした明るい印象の中に、少し甘さを感じるような豆にしたいと考えています」。

目指しているのは飲み疲れしないコーヒーだそうだ。

自家焙煎に変更してから、コーヒー豆の販売や卸にも力を入れている。

コーヒーの抽出方法は3種類。まろやかな味になるドリッパーを選んで行うドリップ、ラテなどにも使うエスプレッソ、そして珍しいのがフレンチプレスだ。フレンチプレスは“本日のコーヒー”の抽出方法に選んでいる。「フレンチプレスはオイル分を感じられて、豆の特徴がわかりやすい抽出方法だと思います」と直樹さん。

コーヒーの繊細さを尊重した自家製スイーツで試したいペアリング

グルテンフリーのチーズケーキ520円。

里枝さんが担当するスイーツは、季節によってラインアップが変わるが、「バスク風のチーズケーキとキャロットケーキが定番になっています」とのこと。スイーツはどれもコーヒーに合わせることを意識したレシピにしている。

「チーズケーキはレモンを入れるレシピが多いですが、『ord coffee shop』ではあえてレモンを使っていません。キャロットケーキはスパイスが控えめです。コーヒーの繊細な香りや味わいを消さないように考えています。その代わり、お菓子によって砂糖の種類を使い分けて、味に奥行きを出すようにしています」

夫の直樹さんは、定番2種類のうちでは、どちらかというとチーズケーキ派とのこと。

直樹さんが2種類のスイーツに、それぞれ合うコーヒーを提案してくれた。チーズケーキに合わせたのは中浅煎りのコロンビア。本日のコーヒーとしてフレンチプレスで淹れてくれた。キャロットケーキには、深めに焙煎したインドネシアをドリップで。

ペアリングの理由を聞くと「コロンビアは明るい印象で、ブラウンシュガーに似た甘さがあるので、きび砂糖を使うチーズケーキと相性がいいと思います。インドネシアは複雑さのある味わいで、キャロットケーキのスパイシー感と合うと思います」との答えが返ってきた。

ドリップで淹れたインドネシア(左)は550円。フレンチプレスでいれた本日のコーヒーはコロンビア(右)で480円。

フレンチプレスで淹れたコロンビアは、コーヒーの甘みがきちんと感じられ、落ち着いた旨味がある。チーズケーキは小麦粉を使っていないグルテンフリー。トロッと滑らかな食感で、素直な味が口の中に広がった。チーズケーキを食べてからコロンビアをもう一度口にすると、直樹さんのいう”明るさのあるコーヒー”の意味がわかったような気がしてくる。

シナモンがふわっと香るキャロットケーキは520円。

キャロットケーキに使うスパイスはシナモンのみ。クルミ入りで、ふんわりもっちりとした食感をより楽しめるよう、あえて分厚く大きめのカットで提供している。国産チーズを使用したクリームチーズフロストも濃厚ながらも口溶けがいい。

インドネシアは色が濃いだけでなく、抽出したコーヒーの表面にツヤがある。まろやかな味で、微かにとろみがあるのがおもしろい。どっしりした雰囲気もキャロットケーキが持つシナモンの香りともっちりした食感と相性がいい。

リニューアルと、コロナ禍で変化した店名の意味

カウンター付近は、窓が大きくて気持ちのいい空間。

店名は、英語の「ordinary=普通」から。日常的に使われる店でありたいとつけた。2023年のリニューアルでは「コロナのパンデミックが起きた後で、日常ってなんだろうって」と、店名の変更も考えていた。そんなとき、音楽用語で“ord.”は特殊な奏法のあとに通常の演奏方法に戻るという意味があると知った。

そこでリニューアル後は、「コーヒーとスイーツで、フラットな通常の自分に戻れるような店」として利用してもらいたいと考えた。店名は変えないまま、その意味が広がることになったのだ。

リニューアル時に温かみのある空間にしようと壁の色を変更。家具の一部はDIYした。

ストレスや疲れが溜まると、毎日飲むコーヒーの味さえ感じにくいときもある。そんなとき『ord coffee shop』を訪れてみてはどうだろう。コーヒーの味わいが多様であること、スイーツとのペアリングのおもしろさを発見するのは気分転換にぴったりだ。

ord coffee shop(オルドコーヒーショップ)
住所:東京都国分寺市日吉町2-15-25 冨安ビル1F/営業時間:13:00〜19:00/定休日:火・水/アクセス:JR中央線国分寺駅から徒歩8分

取材・撮影・文=野崎さおり

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