「すぐに救急車を呼ぶ」目安とは? 赤ちゃんが「嘔吐」したときの対処法 小児科専門医が解説
赤ちゃんの「嘔吐」について小児科医・岡本光宏先生取材。体調不良時の対応やチェックすべきポイントや受診の目安など。 「0~1歳児の赤ちゃんのホームケア」シリーズ(全11回の6回目)。
「赤ちゃんの嘔吐」対応ポイントとケア方法を小児科医が解説赤ちゃんの体調不良のときにチェックしておくポイントや家庭での対応、受診の目安などを「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生にお聞きしました。6回目は、嘔吐したときについてです。
兵庫県三田市にある「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。新生児から思春期の心の疾患まで、幅広く診察している。
ちょっとした刺激で吐くことも
赤ちゃんは胃の形がまっすぐで、胃の入り口の筋肉が弱いことから、ちょっとした刺激でミルクや母乳を吐くことも少なくありません。ミルクや母乳を飲みすぎて吐くこともありますが、ほかにも嘔吐の原因はいくつか考えられます。
・細菌やウイルスによる胃腸炎
・腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)
・肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)
・食物アレルギー(※まれ)
「0~1歳の赤ちゃんが嘔吐したときは、脱水症にとくに注意が必要のため、こまめな水分補給が必要です。また、吐いた=食物アレルギー』の自己判断はNG。食物アレルギーを心配する場合は、必ず専門医を受診するようにしましょう」(岡本先生)
受診する目安
赤ちゃんが嘔吐したときに小児科を受診するかどうかの目安を段階別に紹介します。
〈様子見でOK!〉
・授乳のたびに嘔吐するが、機嫌はいい
〈小児科を受診〉
・嘔吐に加え、せき、鼻水、発熱などの症状もある
・おなかをひどく痛がる
〈時間外でも急いで受診を〉
・元気がない、ぐったりしている
・おしっこが出ない
・授乳のたびに噴水のように吐き、ぐったりしている
・ぼんやりしている、けいれんを起こした
イラスト/オヨネ
〈すぐに救急車を呼ぼう〉
・頭を打った後に嘔吐した
・血液や緑色のもの(胆汁)を吐く
〈受診の準備〉
・吐いた回数や吐いたものの色やにおい、形状をメモしておく
・どんなときに吐くかもチェックしておく
「頻回(胃腸炎ではなく、体質の場合)に嘔吐をする場合、病院で体重の推移をチェックするので、母子手帳を忘れないようにしましょう」(岡本先生)
嘔吐時のホームケア方法
赤ちゃんの嘔吐時に、家庭でできるケアの方法を紹介します。
【1】体を横向きにして寝かせる(嘔吐しているとき)
吐いたものをのどにつまらせないように、嘔吐が治るまでは体を横向きにして寝かせましょう
イラスト/オヨネ
【2】着替えさせる
吐いたもののにおいでさらに吐くこともあるので、吐き気が落ち着いたら着替えをさせましょう
【3】無理に食べさせない(※ただし、食欲がないとき)
こまめに水分補給をしましょう。食欲が戻ったら、消化がよく刺激が少ないものを食べさせます
【4】飲みたがるものをこまめに少しずつ与える
脱水症を予防するために、こまめに水分を与えます。1分に一口間隔が目安です。離乳食前は母乳・ミルクでOK。卒乳後は嘔吐によって電解質も失われるため、乳幼児用イオン飲料や経口補水液も与えてもよいでしょう
【5】短時間の入浴(※ただし、吐き気がなく、機嫌がよければ)
体を清潔にしておくと十分な休息につながるので、脱水がひどくなければ入浴しても大丈夫です
注意したいポイント
次は、注意したい3つのポイントです。
・水分は、吐き気がおさまってから、30分後を目安に与える
・自己判断でミルクの濃度を変えない
・離乳食に戻さない
「胃腸炎ウイルスは、家族間の感染リスクを避けるために吐物に対する感染対策をしっかりすることが大切です。吐いたものを片付けたり、嘔吐した後のケアをしたりしたときは、石鹼で手をしっかり洗いましょう」(岡本先生)
────◆────◆───
受診の目安や自宅でのケアのポイントを知っておくと、赤ちゃんが吐いたり、食欲がなかったりしたときに落ち着いて対処できるかもしれません。
また、これらの情報と同様に、普段から赤ちゃんのお世話をしているママパパの直感も大切です。「〈様子見でOK!〉の症状に当てはまるけど、なんとなく気がかり」と感じたら、かかりつけ医を受診してくださいね。
赤ちゃんのホームケア、次回7回目は、赤ちゃんが「食欲がないとき」のホームケアと対応についてです。
取材・文/畑菜穂子