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清水ミチコ 「何か事象があったときにネタにするのは私のサガ(笑)」、ネタ作りの中心にあるものと全国ツアー『清水ミチコ万博 ~ひとりPARADE~ 』の構想

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清水ミチコ

清水ミチコが、2024年11月より全国ツアー『清水ミチコ万博 ~ひとりPARADE~』をスタートした。2025年4月まで続くロングツアーのハイライトとなるのが、1月2日(木)に行われる恒例の日本武道館ライブだ。今回は、まさにツアー終了と交差するように開幕する『大阪万博』がテーマとなっており、ゲストに大阪を拠点に活動するブルースマン、木村充揮(憂歌団)の出演も決定している。Creepy Nutsの大ヒット曲「Bling-Bang-Bang-Born」を瀬戸内寂聴を降臨させて解説するという清水らしさ全開な新ネタの公開も予告されており、珠玉の物真似ネタはもちろん、音楽ファンにとっても見逃せないライブになりそうだ。ツアー、武道館ライブに向けて、合同取材でインタビューを行なった。

――11月から全国ツアー『清水ミチコ万博 ~ひとりPARADE~』が始まりますが、今は準備段階ですか?
(※編集部注:取材は10月に実施)

そうですね。もともと記憶力がよくないので、セリフを覚えるのがすごく苦痛で、今、覚えなきゃいけないっていう一番つらい時期です(笑)。武道館ライブの構成も自分で考えているんですけど、7月8月にネタを書いたとしても、11月頃に何か起こったりしたら、それを時事ネタに書き変えたりとかはしますね。もちろん、ユーミンさんとかみなさんが喜ぶネタはマストで置いておきます。

――この10年間、毎年武道館ライブを観に来るお客さんもいらっしゃると思うのですが、何回観ても飽きさせないサービス精神ってどこから来ているのでしょうか。

自分の声で本当の自分を出してるってわけじゃなくて、いろんな人になっていろんな人の気持ちを出してるっていうところで、飽きられないのかも知れないですね。そんなに人の声って変わらないし、気持ちがあれば何か変わったように錯覚するんじゃないですかね。

――本当にそっくり本人のようになりますよね。例えば森山良子さんをやろうとか、矢野顕子さんをやろうっていう人選はどうやって考えているんですか。

やっぱり、「この人素敵だな、自分にないものがあるな」とか、好きになって「この人になってみたい」って思うところから始まります。物真似したりなんていうのは後からついてくるもので、「自分にないものが欲しい」とか、そういう気持ちが大きいです。だから例えば浅田美代子さんとか、あえて音を外して表現してもご本人はそんなに怒ってないのは、私が根底ではすごく好きだっていうのが感じられてるからかな、なんて勝手に思ったりします。ユーミンさんからは、「山田邦子からは愛を感じるけど、清水ミチコは何か違う」というお言葉をいただきましたけど(笑)。でもご本人にお会いしたときに、「そうおっしゃいましたよね」って言ったら、「でもあれは清水さん、嬉しかったでしょ」って言われて、図星だと思いました。本当に嬉しかったです。

――恒例の武道館ライブは今回で11回目ですが、今の段階でどんな内容を考えているのか教えてもらえますか。

来年は『大阪関西万博』があるので、『清水ミチコ万博 ~ひとりPARADE~/日本武道館』というタイトルで、関西を中心に活動している木村充揮さんをゲストにお招きして一緒に歌ったりします。それから、万博っていうことで世界各国の楽曲をネタにしたものを披露するつもりです。

――“ひとりPARADE”というサブタイトルにはどんな意味を込めているんですか。

『清水ミチコ万博』だけでも良かったんですけど、もう一言何か欲しいっていうときに、“ひとりPARADE”がいいなと思ったんです。いろんな人がパレードしてるみたいなのに私1人しかいないので、かわいそうでいいんじゃないかなと思って“ひとりPARADE”にしました。あと“パクリ”の“パク”と万博をかけていて(笑)、いろんな方の物真似をしようと思っています。麻生太郎さんが今の政治家に対して文句を言いながらブルースを歌うとか、Creepy Nutsさんの「Bling-Bang-Bang-Born」を瀬戸内寂聴さんが解説しながら歌うとか。あとは、生活音ですね。例えばスマホの着信音、コンビニの入店音など、身近で聞こえてる生活音を1曲にしたりしようと思っています。あとは、万博にちなんだ方をということで、シン岡本太郎さんをゲストに迎えた『徹子の部屋』っていうのを考えてます。

――面白そうですね(笑)。「作曲法シリーズ」も本当にみなさん楽しみにされていると思うんですが、例えばCreepy Nutsと瀬戸内寂聴さんを掛け合わせるとか、そういう掛け算はどんな発想から生まれるのでしょうか。

Creepy Nutsのあの歌(「Bling-Bang-Bang-Born」)を私が本当に熱唱しても全然誰も笑わないんですけど、私が瀬戸内寂聴さんになって解説するっていう余計な親切をすると迷惑だし、面白みが出ると思うんですね。そういう遊び方を考えます。それは作曲法とはまた違うんですけどね。

■本人にとってはいい迷惑だと思いますけど(笑)。何か事象があったときにネタにしてみせるっていうのは、私のサガ(笑)。

――清水さんのステージって、20代の頃から大人の笑いっていう気がします。

そうですか? そういえば、20代の頃に私が顔を出したら、「急に空気が不謹慎になった」って言われたことがありました(笑)。そんなに不謹慎なことをしたことはないんですけど、何かムードがそうなんでしょうね。

――不謹慎ではあるものの、物真似する人への愛はあるわけですよね。

そうですね。からかったりもするけど、麻生太郎さんとかもキャラクターが好きなんですよ。特に声が好きなんです。麻生さんとか、田中真紀子さん、田中角栄さんもそうですけど、ああいう政治家っぽい声というか、しゃがれたブルースっぽい声の人が好きですね。麻生さんのブルースも、元々私が好きな声っていうのもあるんですけど、本当にトーキングブルースみたいなことをやったら面白いんじゃないかなと。まあ、本人にとってはいい迷惑だと思いますけど(笑)。でも、何か事象があったときにネタにしてみせるっていうのは、私のサガでして(笑)。政治とか世界のニュースにも興味を持つようにしてますね。ただ、あんまり正義感に燃えても誰も笑わないし、ちょっと皮肉ってるぐらいの方がいいかなと思いますけど。

――ブルースっぽいしゃがれ声が好きということですが、武道館でゲスト出演する木村充揮さんは、まさにそういう歌声の最たるミュージシャンですよね。木村さんの歌を武道館のステージで聴くことができるっていうのも、音楽ファンからしてみたらすごいことです。

良いこと言ってくださる! 本当、そうなんですよ。

――木村さんとはどんなコラボをお考えですか?

今のところはまだ1回もリハーサルはしてないんですけど、憂歌団とか木村さんの曲をリクエストして私と一緒に歌ってもらおうと思っています。木村さんは、私が一方的にファンで物真似してたんですけど、それを知ってか知らずか、今年の8月に声をかけてくださって、一緒にライブに出たことがきっかけです。

――なるほど、それがYouTubeで公開している京都磔磔でのライブなんですね。清水さんがファンで物真似されている方の中には、今はもうステージに立ってらっしゃらない方もいますよね。例えば清水さんは忌野清志郎さんもお好きだと思うんですけども。

そうですね、大好きです。

――清志郎さんって、先ほどおっしゃっていた「不謹慎」って言われるようなことを歌う代表格というか、シニカルな曲も多く歌ってきた方じゃないですか? 清水さんが政治家の物真似をする姿勢とか、そういうところは清志郎さんから受けた影響もあるのかなと思ったんですけど、いかがですか。

清志郎さんは日本のこと、政治のことを「本気で考えていた」と思います。私はそうじゃなくて、もう少し冷やかしの感じで物真似したり皮肉ったりとか、高市さんの眉毛をとにかく表現してみたいとか(笑)、その程度なんですよ。でも、清志郎さんは爆笑問題の2人を呼び出して、「お前たちの政治論はここが間違ってる」って食事に誘ってわざわざ注意するほど、個人的な時間をそこに使ったぐらいに真剣なものは裏にあったので、そこはやっぱりちょっと私なんかとはレベルが違うかなと思います。

――武道館というと、国内外のいろんなミュージシャンがステージに立ってきました。武道館自体への思い入れというか、ご自身がステージに立つまでの間にいろんな方のライブもご覧になっていましたか。

もちろんです。それこそ清志郎さんのライブも、RCサクセションのときと『完全復活祭』のときも観に行きました。だけど、私の場合はミュージシャンが目指すような武道館じゃなくて、アクシデントがあってたまたま転がってきた武道館ライブなので(笑)。
(※2013年に武道館ライブをキャンセルしたアーティストの穴埋め的にライブを開催したことから毎年恒例化した)

■昔、自分ではすごくいいと思ってた「オペラ銭形平次」っていうネタがあったんですけど。お客さんも苦行、私も苦行(笑)。本当に大反省しました。

――いやいや、来年で11回目ですから、いまや立派な武道館アーティストだと思います(笑)。長年やっている中で、昨今はコンプライアンスということをよく言われますが、表現する上での変化もあるのではないですか。

ここ数年、キツいことを言うと、みんな笑わなくなりましたね。コンプライアンスの前に、お客さんが正しくなったっていうか。

――「これで笑うのは不謹慎かもしれない」ってセーブしているような?

そうですね、そこはすごく実感してますね。昔のネタとか見ると、自分でもゾッとしますから(笑)。

――清水さんの2024年のマイブームだったり、ご自身の中で好きだったもの、印象的なことがあったら教えてください。

人のライブとかを観に行くってやっぱりすごく大事なことだなと思いました。やる気がある人を生で見るとこっちまでやる気をもらえて、人ってすぐに感化されるもんだから、「日頃から自分を上機嫌にしておいた方がいいな」とか、そういうことは勉強になりましたね。

――どんなイベントを観に行かれたんですか?

憂歌団の木村さんのライブもそうだし、矢野顕子さんと奥田民生さんの共演ライブとか、刺激を受けました。変わったところでは、東京国立博物館でやっていた『恐竜大夜行』です。博物館の前の公園を使って、大音量の音楽の中で20頭ぐらいの恐竜たちが闊歩するんですけど、それこそすごく怖いんですよ。やっぱり人間ってちょっと怖がりたいんだなって思いました。

――そういうテイストがいつか出てくる可能性もある?

そうですね。自分でも岸田今日子さんの物真似で声にエコーをかけてみたらすごく怖いんですよ(笑)。

――(笑)。そういうところからいろんなエッセンスを取り入れているんですね。芸としてのアウトプットで、どのパターンが良いかっていう判断はスタッフのみなさんと決めていく感じですか?

そうです。昔、自分ではすごくいいと思ってた「オペラ銭形平次」っていうネタがあって、20分ぐらいのネタなんですけど私は本当に根を詰めて作ったので誰も止められなかったんですよ。「私はこれを絶対やる!」と言ってやったんですけども、一声目で「これは外すな」ってわかって、お客さんも苦行、私も苦行(笑)。そこから本当に大反省しました。

――ある意味それがターニングポイントになって、他の方の意見を事前に聞くようになった?

そうなりました。時々今もフラッシュバックしますから。トラウマになったお客さんに謝りたい(笑)。

――ツアーが11月23日(土)東京エレクトロンホール宮城から始まって、年明けの武道館ライブを経て4月26日(土)沖縄・那覇文化芸術劇場なはーとまで続きます。長いツアーですが、演目は日によって変わっていくんですか?

日によってというか、「これは意外と受けなかった」っていうのは外しますね。またトラウマになったらいけないので(笑)。あとは、やっぱり政治とか世の中の歴史がどんどん変わってくるので。これがなくなって、これが新しくできたとか、そういうことはあると思います。よかったらみなさん、是非観に来てください。お待ちしてます。

取材・文=岡本貴之

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